SEMICON China 2020が2020年6月27日~29日にかけて中国の上海でリアルな展示会として開催された。外国人招待講演者が多数を占める併催のIEEE/SEMI主催の「中国国際半導体技術大会2020(CSTIC 2020)」はバーチャルで行われたが、いくつかのSEMI主催の講演会はリアル、バーチャル、あるいは両者併用で行われた。

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  • SEMICON Chinaの入場登録窓口の様子は大混乱だが、会場内に入ると、入場者数を制限しており混雑はなかったという (提供:SEMI China)

インテリジェントな半導体設計による新時代が到来

SEMICON Chinaの併催イベントとして開催された「IC Design Summit Forum」では、「インテリジェントな設計の新時代」をテーマに米国企業の中国法人代表者を中心に議論が行われた。

AMDのグローバルバイスプレジデント兼中国R&DセンターのゼネラルマネージャーであるAllen Lee(李新荣)氏は、HPC(高性能コンピューティング)の重要性について話した。同氏は「市場には、携帯電話、センサ、PCなど、毎日数え切れないほどのデータを生成するデバイスが多数存在する。これらから生み出されるビッグデータは、分析であれ、人工知能(AI)の学習や推論であれ、高速で分析や処理を行う必要がある。GPUの開発速度の観点から見ると、過去10〜15年間で2.25年ごとにパフォーマンスが2倍になり、プロセッサの観点から見ると、2.5年ごとにパフォーマンスが2倍になってきた。これらすべては、業界とパフォーマンスの成長をサポートするムーアの法則に由来している。過去10〜15年間、ムーアの法則は途切れることなく維持されており、今後もトランジスタ密度を増加させて高速なコンピューティングをサポートしていくだろう」と述べた。

中Pingtou Semiconductorの副社長であるMeng Jianyi(孟建熠)氏は、「AIoT時代の勝者は?」と題して講演し、「近年、AIoTという言葉が流行ってきている。AIoT、つまりAI + IoTは、AI技術とIoT技術を組み合わせて新しい融合分野を形成することを意味し、AI技術の開発により、従来のIoTデバイスはインテリジェント化される傾向があり、"すべてのインターネット"が"すべてのインテリジェント"に進化している。企業の観点からは、AIoTがテクノロジーの開発やアプリケーション主導など、多くの企業に多くの機会をもたらしている」と指摘。AIoTを開発する企業にとって、これまでは大魚が小魚を食べてきたが、これからは速く泳げる魚が食にありつけるようになり、顧客が機敏に必要とする製品を開発できる企業の価値が高くなると結論付けた。

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    IC Design Summit Forumで講演するPingtou Semiconductorの副社長Meng Jianyi氏 (提供:SEMI China)

米Mentorのグローバルバイスプレジデント兼中国カントリゼネラルマネージャーであるLing Lin(凌琳)氏は、「人工知能の時代におけるEDA」と題した講演を行い、「AIは世界の設備投資を誘引し、半導体産業の急速な発展を促進している。AIには依然として"血管"に相当する5Gが必要である。5Gはアプリケーションレベルでもっとも重要なパイプラインであり、経済全体の成長を促進する。そのアプリケーションは非常に明るく、インテリジェントな交通や医療の実現に向け、多くの分野で様々なアプリが設計されている」と述べた。Lin氏は、最後に、「2017年に独SimensがMentorを買収したことは非常に良い組み合わせであり、EDA業界にとって新時代を拓くだろう」と述べた。

米Cadenceの中国の産業顧客セールスディレクターであるWang Xiaoyu(汪晓煜)氏は「インテリジェント・システムを加速する」と題し、「今日の産業は非常に小型で高速なものを追求しており、特に自動車のエレクトロニクス化は、半導体産業に大きな機会を与えた。さらに、グリッドコンピューティングと5Gの開発も将来の主な開発トレンドとなっている。EDAのアルゴリズムはAIよりも複雑である。EDAソフトウェアツールにはソフトウェアとハードウェアの連携が必要である。Cadenceは、チップからシステムまで、包括的なインテリジェントな設計を実現したいと考えており、チップ、パッケージングなどを組み合わせ、AIテクノロジーをソリューション全体に適用して、拡張システム全体の多次元シミュレーションおよび分析機能を将来実現する予定である」と述べた。

米McKinsey & Companyでアジア太平洋地域の半導体産業研究を担当する朱天海氏は、「IC設計の新時代」と題し、「各世代のテクノロジーノードの開発に伴い、チップ設計のコストが増加している。中国は、設計、製造、パッケージング、テストのすべての側面をカバーするエンドツーエンドの機能を確立する必要がある」と述べた。また、「半導体は、すべての産業でR&Dと販売の割合が最も高い技術分野で、2番目のバイオ医薬品産業とは異なり、半導体企業が価格を下げずに競争力を維持するためには新製品の開発を継続していく必要がある。製造コストを除くと、設計会社にとって最大のコストは研究開発費である。大量生産開始時期はコスト削減において非常に重要な役割を果たす」とも述べた。

AIoTの活用で半導体製造をインテリジェント化

SEMICON Chinaでは、半導体設計とともに、半導体製造の講演セッションもあり、半導体製造の分野でも、5G、AI、IoT、デジタルツイン、ブロックチェーン、機械学習などの高度な技術の需要が急速に高まっていることが明確となり、IT業界、装置および材料サプライヤとユーザーである半導体デバイスメーカーは協力して製造の新しいソリューションを開発する必要があることが指摘された。

現在、インテリジェントな製造の実現は中国がその目指す方向として示しているが、「インテリジェントな製造の開発を加速することは、中国の製造業を高品質なものへと引き上げるために重要なものとなり、国際競争に新たな価値を生み出すためには避けられない要件である」とパネリストたちも合意を示しており、少なくとも中国では製造業でのインテリジェント化が加速していく気配を見せている。