国際信頼性物理シンポジウムがオンライン開催に変更

2020年3月29日~4月2日の期間で米国テキサス州ダラスで開催されることになっていた半導体デバイスの信頼性技術に関する最高峰の国際会議の1つに位置付けられている「IEEE International Reliability Physics Symposium(IRPS 2020:国際信頼性物理シンポジウム)」が主催者決定として、すべてのプログラムがオンラインでの発表に切り替わるなど、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が半導体の生産ではなく、その周辺の展示会や国際会議に出てきた。

IRPSの組織委員会は 「IRPSコミュニティにとって、オンライン会議に切り替える決定を下さねばならなかったことは非常に残念だが、新型コロナウイルスが世界の多くの人々の健康問題に影響を与えていることを踏まえれば、オンライン会議に切り替えざるを得なかったことを理解していただきたい」とのコメントを発表している。オンライン会議の詳細は3月16日週に発表するとしている。

同会議は本来、基調講演のほか、招待講演17件、一般講演92件、ポスタ―展示96件、チュートリアル(教育的講義)24件が予定されていたが、これらはすべてオンラインでの発表に切り替えられるという。ただし、ライブでの配信はせず、IRPS 2020の有料登録者向けに一定期間オンデマンドでプレゼンテーションにアクセスできるようにし、一般には公開しないとしている。

なお、IRPS 2020では、以下のような基調講演が行われる。

  • コンピューティングの未来:データ変換の時代における信頼性と復元性 (Intel)
  • パワー半導体の信頼性–現状と課題に関する業界の展望 (Infineon Technologies)
  • 半導体産業の進化を促進する信頼性 (Mentor Graphics)
  • IoTのエンドノードデバイスに対する長寿命製品の設計方法 (Silicon Labs)

半導体関連の国際会議や展示会が次々と中止/延期に

世界規模の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月11日に世界保健機関(WHO)がパンデミック状態に至ったと表明したが、今後開催される予定の半導体関連の複数の国際会議がIRPS同様、中止や延期とするか、もしくはオンライン会議に切り替えるかの判断に迫られている。

パンデミックの表明以前より、国際半導体製造装置材料協会(SEMI)が主催する3月18日~20日に中国上海で開催予定だったSEMICON Chinaが、6月27日~29日への延期決定を明らかにしている(フラットパネディスプレイの展示会「FPD China」も6月に延期)。しかし、もし6月までに新型コロナウイルスの感染拡大の動きが終息しなければ中止か再延期となると見られている。5月にマレーシアで開催予定であった「SEMICON Southeast Asia」も8月に延期となった。

また、同じくSEMI主催で2月初旬に韓国ソウルで開催予定だったSEMICON Koreaは開催中止を決定。一時は延期を検討していたというが、正式に今年度開催を見送ることを決めたという。そのため次回開催は2021年2月になるとしている。SEMIによると、今後、世界各地各地で開催予定のSEMICON展示会やさまざまな会議は、その都度、国際的な情勢を総合的に判断し、開催・延期・中止の決定を行っていくとしている。

このほか、米Consumer Technology Associationも2020年6月に中国上海で開催する予定であった「CES Asia(CESのアジア版)」を延期することを決めている。

日本の3月開催の半導体関連学会も多くが中止に

3月は日本のさまざま学会にとって、全国大会(学術講演会)のシーズンだが、日本政府・厚生労働省のイベント自粛要請に応じて、国際会議だけではなく日本の国内の半導体関連の学会・学術講演会もことごとく中止となっている。例えば応用物理学会(3月12-15日、東京・上智大学)、電気学会(3月11-13日、東京電気大学)、電子通信情報学会(3月17-20日、広島大学)、電気化学会(3月17-19日、名古屋工業大学)などはいずれも開催中止が決まっている。

ISSCCはオンライン活用で一部の講演キャンセルを回避

2020年2月に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたIEEE主催の半導体回路に関する国際学会「ISSCC 2020」は、202件の講演のうち、米国政府の指示で入国を禁止されている中国からの講演者を中心に33件の登録登壇者が来場できなかった。

しかし、そのうち16件が代理人(共著者や米国現地法人社員)による講演、13件がSkypeによるオンラインライブ講演にきりかえられたため、講演キャンセルは避けられたという。IEEEは、応用物理学会と共催し、2020年6月にハワイで半導体デバイス/回路技術に関する国際学会「VLSI Symposium 2020」を開催予定であるが、3月12日時点では期日変更などの発表はない。

米国での国際会議開催は非常事態宣言発令で困難に

3月12日時点で米国政府は中国やEUなど複数の国からの入国を禁止あるいは厳しく規制している。シリコンバレーにあるハイテク企業の多くが社員の直接的な出社を制限してテレワークに切り替えたり、海外出張のみならず国内出張も規制するなどの動きを見せている。

さらに、多数の乗客が新型コロナウイルスに感染したクルーズ船「グランド・プリンセス号」が入港しているオークランド港はシリコンバレーに近いことも同地域の緊張感を高めることにつながっているようだ。

3月12日時点で、米国ではおよそ40州で新型コロナウイルスの感染者が発生するなど、感染が全土に広がってきていることを受け、16の州政府と首都ワシントンが、新型コロナウイルス感染対策のための「非常事態宣言」を発令しており、感染が米国全土に広がってきている。

こうした状況もあり、入国規制の対象となっている国の人にはオンラインで参加してもらい、米国内の人だけ集めて会議を開くことも困難な状態になりつつある。