韓国政府は同国第3の都市である大邱広域市にて新興宗教団体の関係者を中心に新型コロナウイルスの感染拡大が発生していることを受け、2月23日に感染症に関する警戒レベルを4段階のうちもっとも高い「深刻」に引き上げたが、こうした取り組み以前から、韓国を代表する半導体メーカーの1社であるSK Hynixが同国利川市にある本社事業所の800名の社員に自宅待機を命じていたことをロイターなど複数の海外メディアが報じている

これは、入社したばかりで本社事業所内の研修センターにて研修を受けていた社員1名が大邱在住の新型コロナウイルスに感染していた患者と濃厚接触をしていたことがわかったためで、同社は同じく研修センターで研修を受けていた280名の新入社員全員ならびに、これらの研修生に接触したことのある社員の合計800名に自宅待機を2月19日に命令したというもの。また、もう1名の研修生には肺炎の症状があるが、1回目の検査では陰性だったともしている。

これらの研修生は2回目の検査で陰性と判定されれば自宅待機は解かれるという(韓国の学制の新年度は、日本より1か月早い3月に始まり2月に終わるため、卒業したばかりの新入社員たちが座学教育を受けていた)。

SK Hynixでは、感染患者と接触した新入社員と少しでも動線が重なった従業員全員を自宅待機の対象としているとのことで、社内に当該新入社員以外に新型コロナウイルスの感染者は出ていないものの、仮に感染者が出た場合を仮定して高い水準の予防策を講じていると説明している。

また、利川工場の従業員は約1万8000名ほどで、800名が自宅待機となっても工場の稼働や生産への影響はないとしている。また、同社関係者によれば、「新入社員は、まだ座学の段階であり、半導体メモリの製造ラインには入っていなかったために、製造ラインを止めずに済んでいる」ともしている。

なお、大邱近郊の亀尾(グミ)には4つの「国家産業団地」があり、MagnaChip Semiconductor、LG Display、SK Siltronはじめ半導体/ディスプレイおよび関連メーカーが密集している。東レ先端材料やAGCファインテクノなどの日本企業も進出しているが、これらの団地に拠点を構える多くの企業に、韓国政府や大邱市は勧告や要請として、大邱在住の社員に2月24日から自宅待機(出勤禁止)を指示している。すでに亀尾市内でも新型コロナウイルス感染者が発生しているためで、各企業は工場の稼働に支障が起きないよう対策に追われており、従業員や近親者に感染者が出た複数の企業では工場全体の消毒を行うなどの対策を施しているという。