SAS Institute Japanは2月5日、2020年度のビジネス戦略発表会を開催した。代表取締役社長 堀田徹哉氏は、初めに2019年度のビジネスの総括を紹介した。

  • SAS Institute Japan 代表取締役社長 堀田徹哉氏

2019年度は増収、過去最高売り上げを達成

SASはグローバルで創業以来、増収増益を達成しているが、2019年度も増収および過去最高の売上を達成した。堀田氏は、そのビジネスの好調さを支えた要因として、「デジタルトランスフォーメーション(DX)ソリューション、イノベーションの進展」「クラウドビジネスの成長」「サービスビジネスの躍進」を挙げた。

DXについては、同社が元々強い金融、製薬、流通業において特に進展が見られたという。例えば、金融では、メガバンクや大手証券会社において、アンチマネーロンダリング(AML)ソリューションの導入が加速したほか、流通・小売業では、需要予測や最適化を実現するソリューションの導入が進んだ。

  • 金融、製薬、流通業のデジタルトランスフォーメーションの進展

また、クラウドビジネスに関しては、デジタルマーケティング・プラットフォーム「SAS Customer Intelligence 360」、臨床試験データのセキュアな公開を可能とするサービス「SAS Clinical Trial Data Transparency(CTDT)」、マネージド・サービスの成長が目覚ましかったという。

堀田氏は「実のところ、クラウドサービスは以前から提供していたが、ここにきて、大きな成長を果たした。SAS Customer Intelligence 360は数年前に提供を開始したが、データの安全性に厳格な業界に受け入れられている。SAS Cloudのマネージド・サービスは昨年に開始した」と説明した。

SAS Customer Intelligence 360はオンプレミスとクラウドサービスのハイブリッド環境で利用できるが、堀田氏は「一般的に、マーケティングソリューションはクラウド型が多い。そのため、SAS Customer Intelligence 360はピュアクラウドではない点を評価されている。顧客データなど機密性の高いデータはクラウドサービスには保存できないからだ」と語った。

さらに、コンサルティング・サービスについては、ソフトウェアとコンサルティングを融合して提供する機会が増え、デジタルトランスフォーメーションに関わる人材ビジネスサービスが成長したことで、大きく躍進したという。

人材育成サービスにおいては、これまでは同社のソリューションの使い方を目的としたサービスが中心だったが、昨年から、データサイエンティストを育成するためのプログラムの提供を開始した。

製品、サービス、人材育成を三位一体として顧客のDX成功を支援

堀田氏は、2020年度については、「デジタルトランスフォーメーションの実現に向けて、必要不可欠な要素はテクノロジー、プロセス、人。現在、企業はこれら3つの要素について、課題を抱えている。われわれは、企業が抱える課題を解決するため、さまざまなソリューションとサービスを提供していく」と語った。

2020年度の戦略としては、ソリューション、コンサルティング・サービス、人材育成を三位一体として、「SAS Japan ONE TEAM」で、顧客のデジタルトランスフォーメーションの成功を支援していく。「デジタルトランスフォーメーションを実現するためのソリューション、コンサルティング・サービス、人材育成のための教育を単独で提供する企業はたくさんあるが、3つをバランスよく提供できることはわれわれの優位性と言える」(堀田氏)

  • SASの2020年度の事業戦略

2020年度の事業戦略の柱の1つは「プラットフォームビジネス強化によるDXの推進支援」となる。AIプラットフォーム「SAS Viya」をDXの基盤に据え、コンサルティング・サービスを融合させた形で提供することを目指す。加えて、2019年度も好調だったインダストリーカットでのソリューションを展開していく。

  • プラットフォームビジネス強化によるDXの推進支援

クラウドビジネスも2020年度の事業の大きな柱となる。2020年度は、2019年度に成長したクラウドサービスに加え、同社のアナリティクスやデータサイエンスの力をサービスとして提供することにも注力する。企業がDXによる創出価値によって投資をまかなえるよう、SaaS型のライセンス体系も展開する。

  • クラウドビジネスの成長に向けた施策

さらなる事業の柱としては「カスタマーリレーションの強化」に取り組む。これまで繰り返し紹介してきたように、製品とサービスをワンストップで提供する体制を整備し、顧客のDXを支援する。また、中堅中小企業に対しては、クラウドサービスを訴求する。

  • カスタマーリレーションの強化のための施策