オーストリアamsは12月3日、日本オフィスで記者説明会を行い、同社の新しいイメージングセンサのラインアップを公開した(Photo01)。

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    Photo01:説明を行ったTom Walschap氏(Product Manager, CMOS Image Sensors)。国際画像機器展2019のために来日されたそうで、それに併せて今回の記者説明会が開かれた

同社は12月4日からパシフィコ横浜で開催される国際画像機器展2019においてブースにて今回の新製品のデモを行う予定で、今回の記者説明会はこのデモの事前お披露目という形になる。

さて、amsにおいてイメージングセンサーは非常に大きな比重を占めている(Photo02)。

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    Photo02:同社のイメージセンサの注力範囲。車載が入ってない、と言われそうだがその話は後述

「グローバルの数字を手元に持ち合わせていない」(Walschap氏)ということで比率は不明だが、こと国内で言えば4割がイメージング関連製品からの売り上げだそうだ(この話は後述)。そのイメージセンサ群、大別すると3つの製品群からなる(Photo03)。

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    Photo03:今回はこの3つの製品群すべてで新製品が発表された

まずはいわゆる2Dイメージセンサ向けの新製品となる14Mピクセルの「CSG-14K」(Photo04)。発表そのものは2018年11月であり、2019年前半中にサンプル出荷開始という予定だった製品である。

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    Photo04:同社はCMV300~CMV50000(後ろの数字がピクセル数で、CMV50000が50Mピクセルになる)というラインアップを現在展開中。CSG-14Kは、ほぼCMV12000(12Mピクセル)の後継といった位置づけになる

産業用ということもあり、ほぼスクエアな構成で、最大で140fpsという速度が実現可能とされる。amsの従来品「CMV12000」と比較すると受光部のサイズは小さくなっている(CMV12000が5.5μm×5.5μm、CSG-14Kは3.2μm×3.2μm)が、それでいてダイナミックレンジを引き上げるなどの工夫が凝らされている。

こちらの評価キットも用意されており(Photo06)、会場でデモも行われた(Photo07,08)。

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    Photo05:この全部が新機能という訳ではなく、OB Pixelや複数のROIなどはCMVシリーズでも搭載されていた機能である

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    Photo06:CameraLinkではなくUSB3 Visionというあたりは昨今の製品らしい気がする

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    Photo07:評価キット。Arria 10でコントローラを構築しているためか、さすがに放熱が間に合わないようで小型のアクティブファンが2つも搭載されているのはいたしかたない所

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    Photo08:取り込んだ映像をPCで表示。明らかにPC側の処理性能が間に合ってなかったのは、とりあえずノートPCで処理しているためだろう。さすがに4Kの100fps超えはかなりの処理性能が必要である

2つ目がラインセンサ。今回は4ラインセンサの「4LS-10K/15K」が新たに発表された(Photo09)。同社は従来「Dragster」という、2K~16K解像度に対応したラインセンサを提供してきたが、4LSシリーズはこれの後継となるもので、4列のスキャンラインを搭載し、同時読み出しが可能となっている。

これを利用して、RGB+モノクロの読み出し、あるいは4:1の読み出しを可能としている。ちなみにRGBでの読み出しは、対象物が移動する事を利用して、後で読み出しデータの重ね合わせをすることでカラー映像が構築できる、という話であった。

最後がマイクロセンサ。現在「NanEye2D」という、最小1mm×1mm各のセンサを出荷中であるが、こちらも2018年11月12日に「NanEyeM」および「NanEyeXS」の2製品が発表されている

これに加え、「NanEyeC」が今回新たに追加された(Photo10)。

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    Photo10:NanEyeXSは確かに小さいのだが、業界的にはさらに小さいOmniVisionのOV6948という競合製品がある。これについては、amsの製品は内部にADCを搭載しているので、小さくするのに限度があることと、そうは言っても現状の0.7mm角でも顧客のニーズには応えられている、との返事であった。まぁ0.73mm角と0.575mm角(パッケージサイズだと0.65mm角)では大差ないのは事実である

NanEyeXSは主に医療用で、使い捨て(感染防止用)のカテーテルなどに利用できるとしている(Photo11)。

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    Photo11:さすがに解像度は200×200ピクセルと少ないが、最大55fpsはかなり優秀(OV6948は200×200ピクセルで30fpsでしかない)である

一方NanEyeM/NanEyeCは産業/民生向けで、若干サイズが大きくはなるが、その分解像度も上がっている。加えてNanEyeM/NanEyeCは、新しいマルチエレメントレンズを搭載しており、周辺部の歪みも少なく、また解像感も改善されているという話であった(Photo13)。

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    Photo12:NanEyeMは産業用途向け、NanEyeCが民生向けで、そのためNanEyeCは出力がSingle Endedのみとなっており、その分廉価である

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    Photo13:これは同じセンサに、シングルエレメントレンズとマルチエレメントレンズを搭載して比較したもの。標準品のNanEyeM/NanEyeCはすべてマルチエレメントレンズを搭載しているとの事

会場ではこのNanEyeMのデモも行われた(Photo14)。

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    Photo14:親指と人差し指で挟んでいるのがNanEyeMのモジュールで、ノートに置いた名刺を映し出している。左の青い箱が評価用のI/Fモジュール

最後にamsジャパンの岩本桂一氏(Photo15)から、簡単に日本の状況の報告もあった。2019年は、特に同社の顧客である製造装置メーカーなどの最終顧客である中国の需要が低迷しており、現在も自動車などではまだ低迷から脱していないが、その一方で中国でも半導体などに関しては復調の兆しが出ており、その関係から2020年には確実に成長できるとしている。

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    Photo15:amsジャパン カントリーマネージャーの岩本桂一氏

また冒頭にも書いたが、日本においてはイメージセンサの売り上げが全体の4割ほどを占めており、さらに新たなビジネスとして先のカテーテルなどを含む医療分野に加え、マシンビジョンの高解像度/高速化、ロボットの衝突防止、さまざまな認証(一例をあげると、例えば貨幣の偽造検出に、単にメカニカルだけでなく画像認識を加えるなどという例もあるそうだ)、8K以上(16Kとかの案件もあるらしい)の放送分野などが挙げられている。またams全体もそうであるが、日本では車載ビジネスが大きな比重を占めており、今後もここに注力していくほか、新たにTED(東京エレクトロンデバイス)と代理店契約を結んだ事も明らかにした。

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    Photo16:衝突防止というのは、要は産業用ロボットが作業員などとぶつからないように、TOFセンサあるいは小型カメラをあちこちに配置して、これで衝突検知を行うというものだそうだ

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    Photo17:BIOは脈拍などの生体センサ、BOLEDはBehind OLEDで、例えば有機EL(OLED)ディスプレイの奥に近接センサを設置するなどの例が同社で実用化されている