フルHDから4K、そして8Kへ、テレビを中心とする業務用AV/ブロードキャスト分野での高解像度化は留まるところをみせない。しかし、その一方で、編集作業の負担が増加したり、リアルタイムでのさまざまな付加価値の付与といったコンテンツのリッチ化に向けたサービスの向上が求められるようになってきた。そうした編集作業などの分野に人工知能(AI)によるアクセラレーションを取り入れることで、作業負荷の軽減や自動化を図ろうという動きが加速している。
そうした取り組みを影で支えるのがXilinxが提供するFPGAであったり、AIアクセラレータカード「Alveo」、そして次世代製品ACAP(Adaptive Compute Acceleration Platform)こと「Versal」である。
美しい映像配信の実現を支える半導体
業務用AV/ブロードキャスト分野、特に日本市場は現在、次世代の没入感のある(イマーシブな)映像を実現するべく、さまざまな取り組みが進められているという。「業務用AV分野のトレンドは、Better、Faster and More Pixel。つまり、より高画質かつ高精細な映像を体験できるソリューション、それを実現する高性能なカメラセンサ、高解像度なディスプレイを開発することで、よりよく物事を捉えられるようにすることが求められている。例えば、解像度はその最たる例で、HDからフルHDへ、4Kから8Kへと置き換わろうとしており、すでにプロ用モニターとしては8K対応のものもでており、2020年には対応放送も始まろうとしている」とXilinxで業務用AVおよびブロードキャストビジネスセグメント ディレクターを務めるラメシュ アイヤー氏は説明するが、そうした進化に併せて、付帯的に従来の60fpsではなく120fps対応にしたほうがよいのではないかといった議論や、「白はより白く、黒はより黒くなることが求められている」とのことで、HDRへの対応も議論され、そうすることで、より画質が向上していくことが期待されているとする。
また、ディスプレイの色空間の拡張も求められているとするが、こうした取り組みはすべてコンテンツをよりリッチに見せるための取り組みであるといえる。こうしたリッチなコンテンツが実現されれば、そうした高解像度、高精細な大容量の映像をストアする場所も必要になれば、それを要求に応じて伝送する技術、その際に圧縮する技術なども必要となり、必然的にネットワークや通信ポートの高速化なども求められるようになってくるほか、柔軟な接続の実現のための仮想化への対応も必要になってくる。
「こうした動きは、放送業界に大きな変化をもたらそうとしている。従来は、特定の大型ライブイベントのみに使う機材を調達するのにかなりの投資を行ってきらが、今後は必要なニーズに応じて、必要な機能が提供されることが求められており、そうした対応を業界全体で行っていく必要がでてきた」(同)とする。例えばライブでTV配信を行う場合、「レイテンシを限りなくゼロに近づけることが求められている。Xilinxが提供する各種技術は、スタジオでの映像制作から、最終的な配信先まで、すべてのレイヤで活用されている。従来、映像編集はワークステーションやx86サーバが担ってきたが、4K/8Kと高解像度になるにつれて、非圧縮の状態での処理が追いつかなくなってきており、そうしたところのアクセラレータとして活用されるようになってきている」という。
また、ルーティングやスイッチングについても非圧縮データの転送には100Gイーサでの伝送が必要になるほか、テレビ以外への配信を踏まえたOTT(Over-The-Top)やエンコード/トランスコードでの性能も求められるようになっており、その重要度も増しつつあり、そこでのアクセラレーションにも自社ソリューションの活用が進んでいるとする。
このほか、リアルタイム性は必要ないデジタルシネマ領域では、編集やカラーグレーディング、サウンドミキシングなどの領域で、GPUやCPUからFPGAへと置き換わりつつあるとするほか、各国への配信の際のフォーマット変換などにもFPGAによるアクセラレーションが活用されるようになってきたという。