この10年の間に、スマートフォン(スマホ)やタブレット、2-in-1ノートPCなどといったモバイルシステムは目覚ましい進化を遂げてきました。さらなる機能の拡張としての物理的な拡張、例えば2画面、または折り畳むことができるモバイルシステムが登場しています。

これらの新しいシステムの拡張によってユーザは新しい利便性を体験することができます。ですが、このようなシステムを開発するためには今までとは異なるさまざまな工夫が必要とされます。

すでに大画面のスマホ、タブレットやノートPCでは1つのシステムボードではなく、メイン基板・サブ基板、その他センサー基板など複数の基板をコネクタとケーブルを経由して接続することでシステムを構成しています。メイン基板上のプロセッサとサブ基板・センサー基板上の周辺デバイスとの間で送受信されるデータ及び制御信号にはI2C、UART、I2S、GPIO等が存在します。さらに折り畳み可能なスマホやタブレット、2-in-1 PCなど、構造的に基板間の信号本数の削減を求められるシステムの開発が増えてきています。

電源、GND…必要な信号線は全部で何本?

複数の基板の間を行き来する物理信号線には、なくすことができない信号が2つあります。電源とGNDです。

それ以外にはどのような信号が基板間でやり取りされるでしょうか?

  1. 各種センサーデバイス - I2C、UART
  2. マイクやスピーカ - I2S
  3. その他 - GPIO (汎用入出力)

I2Cは通信のために物理的に2本の信号線が必要になります、UARTは2本、または4本の信号線、そしてI2Sは3本の信号線、GPIOは1本から必要に応じてその本数が必要になります。

以上の信号を足し合わせただけでも、合計10本の信号線が必要となってしまいます。

これらの信号線を引き続き、必要とされるだけ使い続けなければいけないのでしょうか?

FPGAで信号線を極限まで削減!

モバイルシステムに活用可能な基板間のデータ転送のための信号本数を極限まで削減する新しい方法があります。

小型パッケージサイズかつ低消費電力のLattice SemiconductorのFPGA「iCE40 UltraPlus」に用意されたシングルワイヤ・アグリゲーション・リファレンスデザインは、2つのiCE40 UltraPlusの間を1本の信号で接続し、複数のI2C、UART、GPIO、I2SをTDM(Time Domain Multiplexing:時分割多重)方式で多重し、データの送受信を行うソリューションです。

リファレンスデザインの主な機能

  • 多重する信号のプロトコル、本数はカスタマイズ可能
  • 合計最大7チャンネルまでの多重をサポート
  • バンド幅を最大限活用することができる、変更可能なパケット長
  • I2C、GPIOデータの送受信に有用な、データ受信側回路にパリティエラー検出回路を搭載、エラー検出時の再送信機能
  • I2Cファーストモード - 400Kbpsとファーストモードプラス - 1Mbpsをサポート
  • I2Sを2チャンネルまでサポート
  • 7.5Mbpsまたはそれ以上のデータ転送レートをサポート

iCE40 UltraPlus FPGAの概要

  • 超小型パッケージ 2.15mm×2.55mm WLCSP
  • 最大5,280LUTs
  • 最大DSPブロックx8(16x16乗算器、32-bitアキュムレータ・ブロック)
  • シングルポートRAM(256Kbit)x4ブロック 合計1Mbit
  • 内蔵NVCMによるインスタント・オン
  • 120KbitのブロックRAM
  • 静的消費電流 約75μA
  • 動的消費電流 約1-10mA
  • Lattice

    2つのiCE40 UltraPlus FPGAをシングルワイヤで接続した際のブロック図

上記のブロック図はI2C、I2S、GPIOを多重して1本の信号線を介して送受信を行い、元に戻すための基本構成を示しています。

FPGA#1はマスターデバイス、FPGA#2はスレーブデバイスとして動作します。本リファレンスデザインはマスター・スレーブ両方のデザインから成り立ちます。

  • Lattice

    回路規模の具体例

リファレンスデザインと評価ボードの入手先は?

シングルワイヤ・アグリゲーション・リファレンスデザインとドキュメントはLatticeのWebサイトから無償でダウンロードしていただけます

また、「iCE40 UltraPlus Breakout Board」および「iCE40 UltraPlus MDP」という2種類の評価ボードでシングルワイヤ・アグリゲーション・リファレンスデザインの動作を確認いただけます

  • Lattice

    シングルワイヤ・アグリゲーション・リファレンスデザインの動作を確認できるLatticeのFPGA評価ボード

まとめ

モバイルシステム開発にはこれからも技術革新が必要とされています。しかしデバイス間のデータ通信手段が劇的に変化することはなく、これからも複数の信号を基板間通信に使う必要があります。

その様な場合、本リファレンスデザインにより基板間の信号本数を削減することが可能であり、iCE40 UltraPlusを用いた採用事例が増えています。

参考

Single Wire Aggregation
iCE40 UltraPlus Breakout Board
iCE40 UltraPlus MDP

著者プロフィール

田島一郎
ラティス・セミコンダクター
コーポレート マーケティング マネージャ