スーパーキャパシタの効率を向上させる

バックアップの設計を見直してみましょう。前述のように、問題はスーパーキャパシタのエネルギーをより多く利用することと、最大電圧の制限を克服することです。図4の回路は、先ほどの欠点の両方を克服しています。

  • スーパーキャパシタ

    図4. スーパーキャパシタの電圧はシステムの電源電圧(VSYS)と無関係

図4に示した回路では、未使用のスーパーキャパシタのエネルギーは、ブースト機能を使って取り出されます。ブースト機能は、一定のシステム電源電圧(VSYS)を維持しながら、スーパーキャパシタ(CSC)からシステム電流(ISC_SYS)を生成します。この構成によって、スーパーキャパシタの電圧はシステム電圧とは無関係になり、必要なシステム電圧(VSYS)より大幅に低いブーストコンバータの最小許容入力電圧によって決まります。このより低い電圧によって、より多くの電荷を使用することができます。

チャージャによって、VSCとバッテリ電圧(VBAT)が無関係の構成が完全なものになります。チャージャ機能の実装は、スーパーキャパシタの入力下限電圧の要件を満たし、初期の充電を提供します。このデバイスには、監視回路IC(抵抗およびFETを含む)、低ドロップアウトリニアレギュレータ(逆方向電流保護内蔵のLDO)、バックコンバータ(逆方向電流保護内蔵)、またはスーパーキャパシタバックアップICが使用可能です。

図5は、図4の回路のタイミング図の例を示しています。図5の変数は、ISC_SYS = 500mA、VSC_INI = 2.7V、VSC_FIN = 1.5V、tBKUP = 3.8msです。CSCの値は、約2.3mFです。

  • スーパーキャパシタ

    図5. タイミング図の最初では、バックコンバータがスーパーキャパシタを充電します。最後の近くでは、ブーストコンバータがスーパーキャパシタを使ってシステム電圧(VSYS)およびシステム電流(ISC\_SYS)を提供します

図5で、装着されたバッテリはシステム電圧(VSYS)を4.5Vのレベルに駆動し、スーパーキャパシタの充電期間に移行します。VSYSが4.5Vに等しい間、チャージャはスーパーキャパシタが2.7Vの完全な電圧に達するまで電流を供給します。電圧(VSC)が規定の公称電圧である2.7Vに達すると、スーパーキャパシタの充電動作はアイドル期間に移行し、電流(ISC)は0Aになります。

VSYS電圧が低下して設定済みの3.15Vのレベルを下回るとバッテリ取り外しの発生が検出され、回路はシステムバックアップ期間(tBKUP)に移行します。バックアップ期間の間、ブーストDC-DCコンバータがオンになり、VSCからVSYSノードに3Vを提供するとともに、システムに必要な500mAの電流(ISYS)を生成します。

システムバックアップ期間の間、VSYSは3Vのままですが、スーパーキャパシタの電圧(VSC)は約0.316V/msで低下し、バックアップ時間(tBKUP)は次式に等しくなります。

  • スーパーキャパシタの計算式

ここでEff = ブーストコンバータの効率です。

理論上(Eff = 1)、パワーダウンリカバリ動作の実行およびスーパーキャパシタの電圧が2.7Vから1.5Vに進行する間に、3.8msが経過します。3つの1.5V AAアルカリチタンバッテリ(合計容量5.52Ah)の場合、この3.8msのリカバリ時間には約1.15m%のバッテリ電流が必要です。これは優れた低コストの方式です。

この時間値は、スーパーキャパシタのESR損失および実際のブースト効率によって、より3msに近くなります。この構成では、システムは使用可能なスーパーキャパシタのエネルギーの70%を使用し、30%のみが残ります。

スーパーキャパシタの電圧が1.5Vに到達すると、ブーストコンバータはオフになり、システムが0Vに低下するのを許容します。このタイプの安定化によって、プロセッサがデータ保存動作を実行するのに十分な長さにわたってシステム電圧が安定化されます。