Maxim Integratedは11月6日(米国時間)、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)を用いる産業機器に、従来以上のインテリジェンス(知性)を提供することで、Industry 4.0の推進を支援するリファレンスデザイン「Go-IO」を発表した。

Go-IOは、同社が2014年に発表した「Micro PLCプラットフォーム」、ならびに2016年に発表した小型PLCプラットフォーム「Pocket IO」に続くPLCプラットフォームの第3世代目となるもの。同社のインダストリアル&ヘルスケア製品事業部マネージングディレクターのジェフ・デ・アンジェリス氏は「Industry 4.0の最後のピースを賄うものとなる」とGo-IOについて説明する。

  • ジェフ・デ・アンジェリス氏

    Maxim Integratedのインダストリアル&ヘルスケア製品事業部マネージングディレクターであるジェフ・デ・アンジェリス氏。左手に持っているモジュールが「Go-IO」。右手は第2世代の「Pocket IO」

Go-IOは、これまでの経験をもとに、3つの基本要素を重視して開発されたという。その3つの要素とは「小型化」、「さまざまなIOへの適応」、そして「クラウド」への対応だ。

  • Maximの産業用IoTプラットフォームの変遷

    Maximの産業用IoTプラットフォームの変遷

産業分野、いわゆるIIoT(Industrial IoT)の分野では、エッジ、つまり製造ラインの装置にインテリジェンスを持たせることで、リアルタイムで高い判断を実行しようとしている。「各装置がインテリジェンス性を持つようになれば、もしどれか1つが故障しても、自動的に自分たちで判断して、同じ機能を持つ別の装置に振り分けを行なう、といったことも可能になるほか、より生産性を向上させるために必要な情報もフィードバック、フィードフォワードして、その情報を反映させることが可能となる」(同)であり、同社が協力するIntelのウェハ工場では、Predixとエッジデータを連動させ、フィードバック、フィードフォワードを行なうことで、製品品質の向上を実現したという。

こうした動きに対し、同社はソフトウェア定義が可能な柔軟なIOの提供、先進的な診断機能の提供、そしてそれらを統合したソリューションとしての提供という目標を掲げてGo-IOの開発を行なってきたという。その結果、トランスを内蔵した絶縁型RS485 モジュール「MAXM22511」や、デジタル絶縁内蔵の8回路デジタルシリアライザ「MAX22192」の開発に成功したほか、2.6mm×3mmのパッケージで入力電圧範囲4~60Vに対応可能な産業用電源技術「μSLICパワーモジュール」の開発に成功。これらを含めた12の高集積ICを組み合わせることで、Go-IOは複数のデジタルIO構成に対応する17のIO、アナログとデジタルの双方のセンサに対応する汎用IOインタフェースを提供する4チャネルIO-Linkマスター、そして時間管理が重要な正常性および状態の情報をローカルデータレイクやクラウドにアップロードするための高信頼性マルチドロップデータネットワークを提供する25Mbps絶縁型RS485通信チャネルなどを数cm角程度の小型モジュールで実現した。

  • チップの統合
  • チップの統合
  • 小型電源IC
  • チップの統合
  • チップの統合
  • さまざまなチップやコンポーネントの統合を実現することでモジュールの小型化と低消費電力化を実現した

「Pocket IO比で10倍の小型化と50%の低電力化を実現した」とのことで、このモジュールを用いて実際に工場設備を稼動させることが可能になるとしており、「Go-IOの語源は、アプリケーション間に入り込むIOということでそう名付けた」とも説明するが、その一方で、あくまでリファレンスデザインであるということが前提となるともしており、実際に工場で使う装置にそのまま組み込むかどうかは顧客の使い方次第だという。

  • 小型化を実現した理由

    さまざまな最新デバイスを搭載することで小型化を実現

また、これまでのMicro PLC、Pocket IOではコントローラ用に別メーカーのプロセッサが活用されていたが、Go-IOでは自社の低電力かつFPU内蔵のArm Cortex-M4ベースマイコン「MAX32630」を搭載したベースボードを用意。リファレンスデザインプラットフォームとしては、これらがセットとなった形で提供されることとなる。同氏は、「別のプロセッサを使いたい、というニーズについては、ベースボードの図面を提供するので、それを見て、別プロセッサ用の基板を起こしてもらう。APIは固定なので、通信は可能」と、自社のプロセッサだけにこだわることはないことを強調。第3世代となる今回のこの試みについては、今後も継続して行なっていく予定としている。

  • Go-IOリファレンスプラットフォーム

    Go-IOリファレンスプラットフォームはベースボードとGo-IOモジュールで構成される

なお、同リファレンスデザインは「MAXREFDES212#」という型番にて、単価495ドルで提供されるという。

  • Go-IOモジュール

    左がPocket IO、中央がGo-IO、右が比較用の100円玉。こうして比べると大きさがよく分かってもらえるかと思う