宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月13日、小惑星探査機「はやぶさ2」に関する説明会を開催した。同探査機は現在、活動を休止している合運用中のため、あまり大きなトピックは無かったものの、リュウグウ上で活動していたローバー「MINERVA-II1」の名前が「イブー」と「アウル」に決まったことが明らかにされた。
想定外の長期間運用に成功
正確に言うと、「MINERVA-II1」という名前は、2機のローバーのほか、分離機構なども含めたシステムの総称である。これまで、ローバーは単に「1A」「1B」というコードネームで呼ばれていたが、ミッションに成功したこともあり、より分かりやすいようにと、それぞれ名前を付けることになった。以下、本記事でもそのように表記したい。
これらの名前は、ローマ神話の女神であるMINERVAにちなんで付けられたという。芸術作品などで、彼女の聖なる動物であるフクロウとともに描かれることが多いとのことで、ミミズクのフランス語からイブー(HIBOU)、フクロウの英語からアウル(OWL)となった。
2台のローバーは、9月21日に探査機本体より分離。リュウグウ表面に着陸後、2ソル目からテレメトリが届かない状況が続いたが(1ソルは小惑星上の1日で約7.6時間)、ローバーの通信機をローパワーからハイパワーに切り替えるようにしたところ、両機とも4ソル目にテレメトリを受信することに成功した。
その後、アウルは10ソル(=約3日)目を最後に再びテレメトリが受信できない状態になったものの、イブーは長く活動を続け、113ソル(=約36日)まで運用することができた。運用中、アウルは38枚、イブーは200枚以上の画像を地球に届けた。イブーについてはまだデータ処理が終わっておらず、最終的な枚数は確定していないそうだ。
コンデンサや太陽電池の劣化などから、ローバーのミッション寿命は7ソルと想定されていたが、これほど長く運用できたのは、思ったよりも温度が高くならなかったことが理由として考えられるという。また、リュウグウ表面に細かいレゴリスが無く、太陽電池が汚れて発電量が低下することも無かったようだ。
ただ、テレメトリは受信できないものの、電波が確認されることがあり、ローバー自身はまだ生きている模様。日陰に入るなどして、送信するための電力が不足しているものと推測されているが、リュウグウの季節が変わって日照条件が変化すれば、再び目覚める可能性がある。JAXAは今後も、定期的に状況をモニターしていく方針。
はやぶさ2の現在の状況
リュウグウは現在、地球から見てちょうど太陽の向こう側にある。間にある太陽が邪魔になり、この「合」期間中は探査機との通信が難しくなるのだが、通信できない間にリュウグウに落下する危険性を無くすため、探査機は現在、リュウグウから一旦離れ、再び戻ってくる軌道に入れられている。
12月13日現在、リュウグウとの距離は約108km。ちょうど折り返したあたりで、約1.3cm/sで再び接近中だ。今後、12月25日と同29日にエンジンを噴射して、高度20kmのホームポジションに復帰する計画だ。
合運用中はコマンドの送信もテレメトリの受信も難しい状況だが、探査機からの電波は届いているため、大体の速度や距離は分かっているという。また探査機が正常かどうかを「1」「0」による2進数で表して伝える「ビーコン運用」も行われ、最低限の状態を確認することができたようだ。
はやぶさ2は2019年1月から通常運用に復帰する。今後の注目は、延期されていた第1回目のタッチダウンがいつになるかだが、これについては従来説明があった「1月下旬以降」という以上の情報は無く、「現在検討中」とのことだ。次回の記者説明会は、1月8日に開催される予定。引き続き、最新情報に注目していきたい。