CMOS技術をベースにしたイメージセンサが多くのアプリケーションで幅広く使用されている一方、要求の厳しい産業用イメージングアプリケーションでは、依然としてCCDイメージセンサしか達成できない性能が求められています。
一例を挙げれば、液晶を中心とするフラットパネルディスプレイ(FPD)に不可欠な最終ライン検査は、従来より主としてCCDを使用したカメラで実施されています。これは、高解像度と優れた画像均一性の両方が求められることが理由であり、現時点では、CMOSイメージセンサの技術でこの2つの性能を両立させることはできません。
現在、このような検査は、29Mピクセル、35mm光学フォーマットのON Semicondcutor(オン・セミコンダクター)製CCDイメージセンサ「KAI-29050」のようなデバイスをベースにしたカメラを用いて、日常的に実施されています。しかし、FPDの高解像度化に伴い、検査に使用するカメラの解像度も高くする必要があります。標準の35mm光学フォーマットを継続しながら、このニーズに応えるには、これらのアプリケーションに不可欠な性能と画像均一性のスペックを維持しつつ、ピクセルサイズを低減する新たなピクセル設計が必要となります。
高性能、高解像度イメージングに対するニーズ
今日、イメージング技術は、交通監視やナンバープレート認識、バーコードスキャン、ロボットガイダンス、マシンビジョンなど、産業用アプリケーションにおいて生産性向上に貢献しています。各アプリケーションにはそれぞれに固有のニーズがあります。高フレームレートを必要とするものもあれば、広ダイナミックレンジ、低光量での感度、あるいは他の重要なパラメータを必要とするものもあります。また、最高レベルの画像ディテールが最優先で要求されるアプリケーションに対しては、高解像度のイメージセンサの開発が必要となります。
その良い例がFPDの最終ライン検査で、ディスプレイの各ピクセル内にある赤、緑、青のサブエレメントが適切に動作していることを確認する工程です。モバイル機器、タブレット、テレビ、車両、モニタなどでディスプレイの利用が拡大し続けていることから、ディスプレイの解像度も増加し、1080pから4k/ウルトラHD以上に移行しています。このため、ディスプレイの製造工程では検査用カメラに対し、独自の要求が出されています。つまり、このアプリケーションに必要な画質や画像均一性を損なわずに、ディスプレイの増加ピクセルやサブ構造を解像できるディテールを実現する必要があります。
その他の高解像度イメージングの例としては、ハイエンド監視(任意の部分を拡大するのに十分な解像度での広視野ビューのキャプチャ)および航空写真(高解像度化により画像ディテールを向上、または飛行高度を上げて飛行時間を短縮)があります。しかし、これらのケースではすべてアプリケーションには高解像度だけでなく非常に高い画質も必要であり、画質は画像均一性、ノイズ、ダイナミックレンジなどのスペックで評価されます。
この複合的なニーズのために、これらの一連のアプリケーションは、従来からインターライン転送型CCD(ITCCD)技術をベースにしたイメージセンサに依存してきており、光学フォーマットを大きくしても重要な画像性能パラメータは維持されます。この技術により超高画質での画像キャプチャが可能であり、また真のグローバルシャッター設計によって、動画場面を画像の歪みなくキャプチャできます。さらに、この技術で実現できる広い露光範囲と低い暗電流により、数マイクロ秒から1秒、またはそれ以上の長さの露光が可能になります。
インターライン転送型CCD技術は、15年以上にわたり高解像度大判イメージセンサの開発に使用されており、市場の要望に合わせてこの間にも解像度が向上しています。たとえば、2003年に発売されたKAI-11000イメージセンサは、35mm光学フォーマットで11Mピクセルの解像度でしたが、その後2011年までに同じ光学フォーマットで、ほぼ3倍の解像度を実現しました。
光学フォーマットを維持しながら解像度向上が可能になるため、高解像度カメラを設置する際にカメラの配置やレンズを再利用できるので、アプリケーションで使用されるカメラを現場で容易にアップグレードできます。
厳しい要件を満足するための重要な設計課題
35mm光学フォーマットを維持したまま、KAI-29050のようなデバイスで対応可能な29Mピクセルから解像度を上げるには、より多くのピクセルを一定の面積に配置可能な、より小型のピクセルフォーマットが必要です。しかし、同時にこの小さなピクセルで画像均一性、ダイナミックレンジ、ノイズフロアなどの主要な撮像パラメータを維持するには、単純な小型化を超えたピクセル設計の進化が必要です。
デバイスのピクセル数が増加すると、デバイスの出力バンド幅を拡大できなければ、全体のフレームレートは低下します。出力バンド幅の拡大は、一部のアプリケーションで必要となる可能性があります。既存のセンサとカメラに対する下位互換性の維持は、カメラメーカーとエンドカスタマがともに新しいデバイスに対応し、それを採用する上で必要となるアップグレードの簡略化にとって極めて重要です。
35mm光学フォーマット高性能ITCCDセンサ
オン・セミコンダクターのKAI-43140イメージセンサでは、どのようにして前述の設計課題を解決し、要求が厳しいこれらのアプリケーションに対して35mmフォーマットで解像度の向上を実現できたかを以下に示します。
同製品は、新規の4.5μmピクセルITCCDを活用し、35mm光学フォーマットで43Mピクセルを実現しており、既存の29Mピクセル品であるKAI-29050に比べて50%の解像度向上を達成しています。小型のピクセルサイズであっても、主要な撮像性能のレベルは維持されており(高スミア除去、60dB以上のリニアダイナミックレンジなど)、クラス全体の均一性不良を排除する先進のプロセス設計を駆使しているため、画像均一性は実際に向上しています。
出力アンプの設計も更新されており、4出力のデバイスから得られるバンド幅は50%増加し、解像度が向上しているにもかかわらず、29Mピクセルのセンサと同じ最終フレームレートが得られます。また、ITCCD技術をベースにしているため、その特徴である電子シャッターや広い露光範囲などの特性も維持しています。
さらに重要な点は、従来品と同一パッケージを使用しているため、既存のカメラ設計にわずかな電気的変更を加えるだけで、対応できることです。これにより、カメラメーカーは設計上のリスクを軽減できるだけでなく、解像度と性能が向上したカメラを、より早くより低コストで市場に投入することができます。
まとめ
イメージセンサの開発には、先進的な産業用アプリケーションのニーズに対応するためには、より小型のパッケージにより多くの画素を「詰め込む」以上のことが要求されます。先進のピクセル設計を使用することにより、必要な性能を損なわずに、既定の光学フォーマットサイズで解像度の向上を実現できます。
しかし、この進歩によってさえも、すべてのアプリケーションに対して、あるいは超高解像度が要求されるアプリケーションに限定した場合でも、「最新」の撮像デバイスが必ずしも「最良」とはいえないことを認識することが重要です。
解像度だけでなく光感度、ダイナミックレンジ、フレームレート、あるいは価格も含めて、さまざまな選択肢を提供することが、特定のアプリケーションに対する最適なイメージセンサ(および撮像技術)を選定する上で重要です。したがって、幅広いデバイスのラインアップが利用できることの重要性(超高解像度を必要とする特定のアプリケーションの場合でも)が明らかで、インターライン転送型CCDなどの技術を駆使した新製品の継続的な開発の必要性が再認識されるようになってきています。
著者プロフィール
Michael DeLucaON Semiconductor
Product Marketing Manager, Industrial Solutions Division, Image Sensor Group,