ものづくり関連の最先端の技術・製品が一堂に会する、世界最大級の「第32回 日本国際工作機械見本市」(JIMTOF2024)が、東京ビッグサイトで11月5日に開幕した。会期は11月10日までの6日間で、Web上での事前入場登録が必要。ここでは最大級の広さで出展している、ヤマザキマザックブースの模様をレポートする。
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ヤマザキマザックの主な展示をチェック。左上から時計回りに、電気自動車(EV)のスケルトンモデルの展示、小径パイプ専用高速レーザ加工機「FT-150 NEO」のデモの様子、ミネラルキャストでつくった“鐘”の体感展示、クルマのサブフレームなど大型部品の加工に特化した最新横形マシニングセンタ「FF-1250H」
EVサブフレームを量産加工できる、最新横形マシニングセンタ
ヤマザキマザックは、「マザトロールで創るモノづくり革新」をテーマに、最新鋭の工作機械、レーザ加工機、自動化システムなど19台の機械を出展。1981年に世界初の対話式プログラミングを可能にする画期的なCNC装置として誕生したマザトロールは、さまざまな先進機能を導入しながら現在も進化し続けており、それらを含めてモノづくりに関わる複合的なソリューションを提案している。
ブース前面で注目を集めていたのが、電気自動車(EV)向けシャーシ(スケルトンモデル)の展示だ。自動車のサブフレームは、従来はプレス成形や溶接で造っていたのが、ダイキャスト製の一体成型へと製造の仕方が変わってきており、ワーク(加工物・部品)の加工の仕方もそれにあわせて変化。一体成型の大きなワークにさまざまな角度から穴を開けられるよう、テーブルに載せてあらゆる角度に回せる大型の機械が求められてきている。
そうした需要に応えてヤマザキマザックが新たに開発したのが、クルマのサブフレームをはじめとする大型、かつ複雑な形状のアルミダイキャスト部品を量産加工するのに特化した横形マシニングセンタ「FF-1250H」。JIMTOF2024で初出展し、販売を開始した。
ツールを横向きに取り付け、ワークを横から加工するタイプのマシニングセンタで、中央には最大で直径1600mm、高さ1100mmの大型ワークを積載できる、ゆりかご式のチルト・ロータリーテーブルを搭載。形状が複雑なワークでも、ワンチャッキングでの多面加工で工程集約を実現する。#50クラスの主軸を採用しており、大径・重量工具や特殊形状工具での効率的な加工も可能にした。
また、上下左右に広いドア開口部を備え、多様な自動化装置と連携可能。部材を削る過程でできた切粉の排出性も高めるなど、長時間無人運転を行う量産ラインにも対応できるように設計している。
ボルトやシール材なしでEV部品をつくる、FSW技術を提案
EVの製造においては、電動駆動ユニットの冷却性能向上に配慮した設計も求められる。ヤマザキマザックでは、バッテリーケースやインバーターケース、モーターケースなどの製造に活用できるFSW加工機「FSW-460V」など、摩擦熱で軟らかくした材料を攪拌してつなぎあわせる高速FSW(摩擦攪拌接合)の技術を提案していた。
FSWを活かした加工では、接合部の変形や歪みが少なく高強度な接合が行えるほか、アルミニウムと鉄など異なる材質の接合も可能とし、さらにガスや煙、スパッタ、プラズマやX線などの放出もないので安全な環境で使える、という3点をメリットに挙げている。
特にEVの電動化モジュール部品の製造においては、ボルト締結部が不要で小型軽量化に寄与。密封耐久性も向上し、従来工法のデメリットであるシール材の劣化や緩みによる水漏れなども発生しないとアピールしている。
熟練工でなくても扱える、最新の小径パイプ専用加工機
ブースの奥では、11月5日から販売を開始したばかりの、最新の小径パイプ専用高速レーザ加工機「FT-150 NEO」を配置。加工物の一例の展示も行っていた。
FT-150 NEOは、パイプ加工に特化したユーザーインタフェースと、大型タッチパネル式デュアルモニタを採用した、最新のCNC装置「SmoothTUBE」を標準搭載。直感的に分かりやすく操作性も高めたGUIによって、複雑な加工機の操作をサポートする。さらに生産工程に沿った画面デザインにより、スケジュール作成から加工まで、製造プロセス全体の生産性の向上を図れるとする。
ヤマザキマザックは2019年から、家具や物流設備、建築部材で主に使われている直径150mm以下の小径パイプの量産加工向けに「FT-150 FIBER」という加工機を販売している。
昨今では製造業における熟練技能者の減少など、人手不足や技能継承の問題が深刻になっていることから、同社では非熟練工でも操作しやすく、多品種少量生産においても生産立ち上げをスムーズに行える加工機として新型機となるFT-150 NEOを投入し、こうした課題に対応していく。
ミネラルキャストでつくった“鐘”の体感展示も
ヤマザキマザックでは環境に配慮した企業努力の一環として、工作機械に複合素材ミネラルキャストを採用していることもアピール。実際に、自社製のミネラルキャストを初めて採用した立形マシニングセンタ「VCN-460 HDCC」を披露していた。
工作機械の土台や構造物には鋳物が使われるのが一般的だが、鋳物を作れる企業や人材が不足してきていることから、その代替材料として新たに樹脂と鉱物を混ぜ合わせたミネラルキャストを内製。主にベースと呼ばれる土台や、コラムという柱などに使っているのだという。
現状では「コストが高い」、「(工作機械の)可動部には適していない」といった課題もあるものの、ミネラルキャストには「減衰性が高く振動が収まるのが早い」、「鉄と比べて温度の変化に対する熱安定性が高い」、「製造工程において鋳物よりもCO2排出量が大幅に減らせる」といった複数のメリットがある。
ブースでは実際にミネラルキャストと鋳物でできた鐘を鳴らして、音の響き方で振動減衰性の違いを体感したり、各素材でできた部材の熱安定性を数値で確認できる展示デモを展開していた。
専門知識なしで工程を自動化。おみやげは“ミニチュア工作機械”
このほか、自動化コーナーでは同時5軸制御 複合加工機「INTEGREX i-450H+ Ez LOADER 125i」の機械加工デモを実演。 チャックサイズ 12インチの複合加工機(INTEGREX i-450H)と、協働ロボットのオプション(Ez LOADER 125i)を組み合わせた展示で、大型のワークを協働ロボットのアームで掴んで、加工機内に自動で取り付ける様子が見られた。
工作機械とロボットをまとめて自動化すること自体は新しいことではなくなっている。同社製品の大きな特徴は、協働ロボットの動きをプログラミングする必要がなく、専門的な知識がなくても、工作機械と同じコントローラーでタッチパネルなどを使い、ロボットに動作を覚えさせられる(ティーチングできる)点にあるという。
ひとつのものを大量生産するのであれば、動作は一度教えるだけですむ。しかしものづくりの環境変化に伴って、より多品種の生産を行う必要が出てくると、ロボットに動きを教える回数も増えていくので、つくるものが変わったときの段取りを教えるのは簡単であればあるほどよいとのこと。従来は専門業者にティーチングを頼んでいたのが、工場の担当者だけでできるようになることもメリットだという。
JIMTOFでは工作機械をはじめとする産業機械の魅力を、学生など若年層に伝えるための取り組みを行っており、ヤマザキマザックでも“リクルートの主戦場”と位置づけて人事担当者を多数配置。ブースツアーを行ったり、若手社員とのつながりをつくれるよう工夫を凝らしているという。また、ヤマザキマザックの工作機械のミニチュアコレクション(1/64スケールのカプセルトイ)を用意し、同社ブースで入手できるキャンペーンを公式X(Twitter)アカウント経由で実施している。
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— ヤマザキマザック株式会社【公式】 (@Mazak_Japan) October 7, 2024
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