既存アプリケーションの進化バージョンや、新たに注目を集めるアプリケーションが多数登場しているため、高性能イメージセンサに対する膨大な需要が生まれています。具体的な値として、イメージセンサ・デバイスの2020年までのCAGR(年平均成長率)はほぼ8%と見積もられています。小型機器、携帯用機器、あらゆるタイプの「移動」機器の成長など、多くの市場動向に対応して、動的シーンや非常に暗い状態から極めて明るい状態までの幅広い照明条件で、鮮明かつ明瞭に画像をキャプチャ可能なセンサの需要が一段と高まっています。

ローリングシャッタを使用した従来の設計では、動作の性質上、要求される画質を実現するのに困難な場合があります。一方、グローバルシャッタによる設計では、不鮮明さや歪み、ノイズのない高品質の画像キャプチャが可能です。

オン・セミコンダクターの「AR0144」といったデバイスは、撮像を行う上での実用性や多様性を高める機能および特性も備えています。注目されているいくつかの最終製品が牽引役となって、グローバルシャッタ・イメージセンサ市場が急速に拡大しています。設計者は高性能を要求し、センサに厳しい動作パラメータを押し付けて、あらゆる照明条件下において静的、動的いずれの状況でも動作可能な小型、高機能ソリューションを実現します。

IoTなど技術の進歩により、世界がよりスマートになり、ネット接続が増加するのに伴い、接続機器は周囲の状況を検知する必要に迫られています。そのような例として、温度、湿度、光をはじめ、あらゆる種類のパラメータを検出するネット接続された何十億個ものセンサがあり、人間に代わってインテリジェント機器が意思決定やモノの制御を行うことができます。

急速で飛躍的な進歩があった一方で、従来のセンシングでは厳密に定義された方法で1つのパラメータだけを計測することがよくあります。技術革新が次世代へと進化するのに伴い、イメージセンサにも一層の注目が集まっており、さらに高度なセンシングと記録が可能になります。

イメージセンサ市場はすでに重要な役割を果たしており、今後もさらに急速に成長すると予想されています。大手調査会社であるMordor Intelligenceの予測では、世界のイメージセンサ市場は2018年には126億7000万ドルに達し、2014年から2020年にかけて年平均7.69%の成長が見込まれています。

技術の進歩と向上に伴って、イメージセンサの新しいアプリケーションが増えており、従来の市場でさえもそれを必要としています。バーコードは普及していますが、不十分な照明条件下や高速、高精度での読み取りは、民生用、商用を問わず、イメージセンサにとっては容易なことではありません。ドローンや拡張現実(AR)、仮想現実(VR)などの新しいアプリケーションでは、衝突の防止、ジェスチャー入力画像の収集、ユーザー・エクスペリエンス向上のためのシーンの正確な3Dマッピングに画像データを利用しています。

ハイエンド監視および特殊監視向けカメラ技術は高機能化が進んでおり、最新のイメージセンサがもたらす視覚技術の進歩の恩恵を大いに受けています。監視カメラは低照度で撮影できるだけではありません。技術進歩の結果、車が高速走行していてもナンバープレートを読み取ることができる新しいアプリケーションも開発されています。

ローリングシャッタとグローバルシャッタの違い

CMOSイメージセンサには、ローリングシャッタとグローバルシャッタの2種類のシャッタ方式があります。ローリングシャッタは、上端から下端まで1ラインずつ順に露光して画像をスキャンします。

  • ローリングシャッタの構造イメージ

    図1:ローリングシャッタは上端から下端まで1ラインずつセンサを露光

この方式は大部分のカメラに付いている機械式シャッタに似ていますが、一定の制約(および利点)があります。センサを内蔵するカメラとキャプチャされるシーンの双方が静止していれば何も問題はありません。しかし、上端から下端までのスキャンに一定の時間を要する(この時間はセンサのピクセルが多いほど長くなる)ため、この時間内にカメラまたは被写体が動けば画像に歪みが生じます。飛行機の回転中のプロペラ画像が歪んで見えるのはこのためです。ローリングシャッタ・イメージセンサの利点は、解像度を高くピクセルを小さくでき、最新のピクセル技術によりコスト効率の高いソリューションにより全体的な画質をさらに改善できることです。

一方のグローバルシャッタは、画像全体を蓄積し格納領域にコピーすることによってキャプチャした光のレベルを記録するため、画像が不鮮明になったり歪みが生じることはありません。そのため、カメラの動きやシーン内の動きによる影響を回避できます。

  • ローリングシャッタとグローバルシャッタの比較

    図2:ローリングシャッタによる扇風機の歪んだ画像(左)とグローバルシャッタによる歪みのない画像(右)

例えば、ドローンやAR/VRアプリケーションなどで、動きのある被写体の画像を歪みなくキャプチャするニーズが高まっており、これに対してグローバルシャッタは完全な描写による明瞭なシーンのキャプチャを可能にします。

視覚センサ用アプリケーションには携帯向けでバッテリ駆動のものが多いため、小型、軽量、低消費電力動作が成功のための重要な要素になります。併せて、低照度のシーンでも同一フレーム内に極端な明暗が混在するシーンでも、不十分な光量で画像を正確にキャプチャする能力が必要となります。