「Mooreの法則」にしたがって極限まで微細化をめざす半導体デバイスとは一線を画すMoore than Moooreデバイス(MEMSセンサ、CMOSイメージセンサ、パワーデバイス、RFアナログデバイスなど)向けのウェハ需要に関するレポートを、仏Yole Développementが発行した。それによると、2017年のMoore than Mooreデバイス向けウェハ需要は200mm(8インチ換算)で4500万枚に達し、今後2023年までの期間、年平均10%で成長を続け、最終的には6600万枚に達する見込みであるという。

  • More than Mooreデバイス向けウェハ需要の予測

    図1 More than Mooreデバイス向けウェハ需要の予測(2017~2023年)。縦軸の単位は8インチ換算で百万枚、横軸は西暦年。RFデバイスが緑色、CMOSイメージセンサが黄色、センサが橙色、パワーデバイスが茶色 (出所:Yole Développement)

「数多くのメガトレンド(大きな流れ)があるがその波に乗った市場けん引役がMore than Mooreデバイスの成長に貢献するだろう」とYoleの半導体技術&市場アナリストであるAmandine Pizzagalli氏は述べている。同氏によれば、メガトレンドとは、無線インフラとモバイルを含む5G、多機能モバイル、音声処理、スマートモビリティ、AR/VR、そしてAI(人工知能)などを指す。

安定した成長が続くパワーデバイス

再生可能エネルギー、産業用モータードライブ、さらにはEV/HEV(電気自動車/ハイブリッド電気自動車)産業の拡大に伴い、パワーデバイスのウェハ市場は2017年から2023年の年平均成長率(CAGR)が約13%で増加するとYoleでは予測している。同分野は2017年時点で、More than Moore用ウェハの6割を占めており、今後も高い比率を占めると見られる。

FRコンポーネントが伸びる5G

いよいよ商用活用が見えてきた5Gは、More than Mooreの進化の大きな部分を占める。あらゆるサービスをどのユーザーに提供するにしろ、かならず新しいアンテナとフィルタ機能を必要とする。このため、未来の無線ネットワークへのアクセスを確実にするために、RFフィルタ、パワーアンプ、および低雑音アンプのようなRFコンポーネントの需要が増加すると見られる。

さまざまなタイプの車載センサの需要が拡大

一方、より多くの機能を統合した先進的なモバイルアプリケーションの需要にこたえるには、指紋センサ、環境光センサ、3Dセンサ、マイク、慣性MEMSデバイスなど、ますます多くのデバイスを搭載する必要がある。これは、近い将来のMEMS&センサウェハ市場の成長に寄与することになることが予測される。さらに、自動運転車のようなスマートモビリティは、新たなセンサの開発と統合を必要とする段階に達している。自動運転車には、レーダー、イメージセンサ、LiDARなどの高価なセンサモジュールの搭載がされることから、今後5年間にCMOSイメージセンサやその他のセンサウェハの生産が増加していくとYoleでは見ている。これからの自動車では主にこれらのセンサの成長が期待される一方で、MEMS圧力センサや慣性MEMSなどの古典的なMEMSセンサも、引き続き成長し続け、従来の自動車業界を支えていくことも期待されている。

More than Mooreデバイスの主流は6~8インチ

Yoleの市場調査は、世界中の主要な半導体プレーヤーとの議論に基づいたもので、その中にはApplied Materials(AMAT)のような半導体製造装置メーカーも含まれている。Pizzagalli氏と意見交換を行った1人であるAMATの200mm装置製品グループのマーケティング担当責任者であるMike Rosa氏は、「現在More than Mooreデバイスの多くは200mmもしくは150mmウェハを用いて製造されている。例外は、パワーBipolar-CMOS-DMOS(BCD)、2.5Dインターポーザ、CMOSイメージセンサ、およびいくつかのフォトニクスデバイスとディスクリートデバイス。ただし今後は、一部のデバイスが300mmへとシフトするため、AMATでもMEMSやディスクリートパワーデバイスに関して200mm装置グループが得た情報を300mm装置グループと共有することで、より大きなウェハサイズを用いた技術開発へとつながるようにつとめている」と述べており、More than Mooreの主流が6ないし8インチであることを強調する。

  • More than Mooreデバイスにおけるサイズ別ウェハシェア予測

    図2 More than Mooreデバイスにおけるサイズ別ウェハシェア予測(2017~2023年) (出所:Yole Développement)

More than Mooreデバイスで用いられるウェハサイズは、現在、6インチが支配的であり、次いで8インチとなるが、その多くがパワーデバイス向けである。今後もしばらくは6インチも消費量が増加するものの、8インチが高い伸びを見せる結果、2023年には、完全に比率が逆転している状態になるとYoleでは見ている。今後の5年間で、パワーとMEMS&センサの大部分が、6インチによる量産から8インチに移行することが見込まれるためである。また、12インチ(300mm)も全体の比率としては低いものの、確実に成長が続き、2017年から2023年までのCAGRは15%と予測され、枚数としてはCMOSイメージセンサの需要が増加することから、2017年の330万枚から2023年には750万枚へと拡大することが見込まれている。

一方で、RF SAWフィルタは現在、4インチ(100mm)ウェハ直径が主流になっている。しかし、今後は4インチから6インチへの移行が進むとされるが、それでもYoleでは、依然として4インチ未満(3インチないし2インチ)のウェハを用いて製造されるいくつかのデバイスが存在するとしている。ただし、それらは少量品で、最終的にはそうした小径サイズは消滅するともしている。

シリコンだけではなくウェハ基板材料

More than Mooreデバイスの種類ごとにどのようなサイズのどのような材料の基板が使われているかを調べると、MEMS&センサでは、3~8インチのシリコン基板と6~8インチのガラス基板が用いられている。また、CMOSイメージセンサでは、8~12インチのシリコン基板や8インチのSOI基板が主に使われているし、RFデバイスには、8~12インチのSOI基板、8インチSiGe/SOIおよびガラス基板、6~8インチのシリコン基板、6インチのGaAs基板、6~4インチのセラミックス基板、6~3インチのGaN-on-SiC基板と、きわめて多様な材料の基板が使われている。そしてパワーデバイスには、シリコン基板が主流だが、3インチから12インチにわたるまでさまざまなサイズのウェハが使用されているほか、4~6インチのSiCやGaN-on-SiCも存在感を高めてつつあるし、将来的にはGaN-on-GaNの登場も予想されており、今後、さらに小型、多機能、高機能が求められることになれば、そうしたさまざまな材料が開発され、活用されることが予想される。

  • More than Mooreデバイスタイプ別に使用されるウェハのサイズと材料のタイプ

    図3 More than Mooreデバイスタイプ別に使用されるウェハのサイズと材料のタイプ (出所:Yole Développement)