台湾の市場動向調査企業TrendForceは2017年末、台北にて「2018 Forum on Key Trends in Electronic Components Industry(2018年の電子部品業界のカギをにぎる動向)と題するセミナーを開催し、同社のアナリストを総動員して2018年の半導体メモリ、サーバ、そして各種ディスプレイパネル動向の予測を発表した。本稿では、同セミナーの内容を中心に、年明け以降の動きも併せて、各市場の動向を読み解いていきたい。
モバイルDRAMの動向
モバイルDRAMの価格は2016年第3四半期以降、1年半にわたって上昇しており、その平均販売価格は2017年11月時点で4割上昇した。この結果、スマートフォン(スマホ)ベンダの利益が減少したばかりでなく、スマホに搭載するメモリ容量の増加を躊躇させる結果となってしまった。
2018年、DRAMサプライヤは大規模な設備拡張を実施する計画は、表立った動きでは存在しない。そのため、DRAMの供給量の増加は限定的であり、価格は引き続き高い水準に維持される見通しである。そのため、スマホベンダは、ローエンドの低価格モデルの生産計画を再検討し、新興市場での低価格モデルの販売戦略を慎重に策定する必要がでてくるという。また、スマホの平均メモリ搭載容量の増加も、モバイルDRAMの価格の上昇により鈍化しがちであるが、2018年秋に登場するであろう次世代iPhoneが、メモリ容量の増加に対する主なけん引役となることが期待されるとする。
ちなみにTrendForceは1月5日付けで、「中国国家発展改革委員会(National Development and Reform Commission:NDRC)」が、2017年末ごろにSamsungの幹部を呼び出し、事情聴取と行政指導を行ったとの発表をしている。半導体メモリ、とりわけモバイルDRAMの長期にわたる価格高騰の背景に、同社が出荷を抑えている疑いがあるため調査をするという警告を行った模様だ。中国のスマホベンダ各社が、モバイルDRAMの価格高騰が続いたことで経営が苦しくなりNDRCに訴え出たことがこの背景にあるという。TrendForceでは「NDRCの警告により、価格高騰が和らぐ可能性も出てきた。Samsungは、2018年後半に計画している平沢工場でのDRAM増産計画を前倒しする可能性が出てきた」との見方を示している。
サーバの動向
TrendForceの予測では、2018年における世界のサーバ出荷額は前年比5.3%増であり、Hewlett Packard Enterprise(HPE)、Dell、Lenovoの3社で 全体の約4割のシェアを占める市場となっている。ネットワークに接続される機器の増加で、データセンターのODMダイレクト(ユーザー企業ごとにカスタマイズしたサーバを開発、製造するメーカーが直接ユーザー企業に出荷する)市場が同分野の2018年最大の牽引役となり、出荷額は同14.4%増と2桁の伸びを示すことが予測されている。
現在、メモリ(サーバDRAM)の需要に対する出荷率は、供給不足のため、需要の約70%〜80%に過ぎない状態が続いている一方で、Purleyベースのサーバの出荷開始などによる大容量サーバDRAMモジュールの需要は高まり続けており、2019年末まで、その動きは続く見通してある。そのため、メインストリームのモジュール価格も高止まりが続く見通しとなっている。
事実、TrendForceは1月10日、北米のデータセンターからの需要の高まりで、サーバDRAMの価格が2018年に入っても継続して値上がりしていることを発表した。
DRAMメーカー各社が増産を始めるのは早くても2018年後半になることから、前半のサーバDRAM価格は高止まりが続くとみられる。現在、HPEなどのサーバメーカーは、DRAMメーカ―の最先端プロセスとなる高速18/17nm DRAMを評価中で、2018年後半には当該製品が供給されるサーバDRAMの4割程度を占めるまでに拡大するとの見通しをTrendForceでは示している。
NAND型フラッシュメモリの動向
NAND市場は、需要が2016年下半期以降、供給を上回っており、2017年第4四半期まで供給不足が解消されなかった。 毎年、上半期は伝統的にオフピークシーズンであるため、2018年は初頭から一時的にNANDの需要が低下し、需給バランスが若干改善されることが期待されるが、年後半には需要が戻ってくる一方、NANDサプライヤ各社は生産能力の拡大を積極的に行おうという姿勢を見せていないため、再び供給不足に陥り、価格が再び上昇に転じる可能性が高いとする。
ただし、2017年12月に東芝とWestern Digitalが和解を発表し、今後、東芝四日市工場および岩手工場に新設されるNAND製造棟への設備投資を共同で行い増産を図る見込みであるほか、Samsungが韓国の平沢工場と中国の西安工場、Intelが中国の大連工場の新規製造ラインをそれぞれ稼働させる計画であり、かつ中国のYangtze Memory TechnologiesのNAND工場の量産開始などの動きが重なり、2019年にはNANDの供給過剰が生じる可能性が高まったともしている。