サラヴィオ化粧品は、生体内でエネルギー生産を担う細胞小器官「ミトコンドリア」の機能解析を行った結果、毛包の形成および毛周期における成長期誘導因子「PDGF-AA」が毛乳頭細胞において、より多くのATPを産生する線維状ミトコンドリアを誘導することを見出したと発表した。

同成果はサラヴィオ化粧品サラヴィオ中央研究所の御筆千絵氏、同 加世田国与士氏らによるもの。詳細は 11月6~7日に開催された国際学会「International Symposium on Mitochondria 2013」にて発表された。

PDGF-AAが関与する毛包形成や毛周期の成長期では活発な細胞運動や細胞分裂が行われるため、多くのエネルギーが必要であり、そうした細胞機能ではミトコンドリアの機能制御が深く関わっていると考えられてきたが、これまでは良くわかっていなかった。そこで今回の研究では、毛乳頭細胞においてPDGF-AAがミトコンドリアの形態と機能にどのような影響を与え、それらが細胞機能にどのように関連するのかの検討を行ったという。

具体的には、毛乳頭細胞(初代培養)のミトコンドリアを蛍光色素で染色して、蛍光顕微鏡観察したところ、細長い線維状のミトコンドリアと小さく丸まった円形ミトコンドリアの2種類を観察することに成功。線維状ミトコンドリアのみを持つ毛乳頭細胞、および円形ミトコンドリアのみを持つ毛乳頭細胞はともに全体の約3割で、残りの細胞内では、両タイプが混在することが確認された。

さらに解析を進めたところ、細胞のライブイメージングにより、線維状ミトコンドリアは細胞内を活発に動きまわることが判明したほか、円形ミトコンドリアはほとんど運動活性を有していないことも確認したとのことで、これらの結果により、ミトコンドリアの形態変化が分子モーターによる運動活性のスイッチとして機能することが示唆されたという。

また、毛包の形成と毛周期の制御に関わるPDGF-AA(血小板由来成長因子)が線維状ミトコンドリアを持つ毛乳頭細胞の割合を濃度依存的に増加させることも見出したほか、PDGF-AAがミトコンドリアの酵素活性、および、ATP生産活性を促進する事を確認。この酵素活性とATP生産活性の線形的な関係から、PDGF-AAはミトコンドリアを活性化させることで、ATP生産を促すことが示された一方で、毛乳頭細胞の細胞増殖活性、およびミトコンドリアの膜電位には影響を与えないことが示されたこととなった。

加えて、スクラッチアッセイにおいて、PDGF-AAが毛乳頭細胞の運動活性を高めることが証明されたほか、スフェロイド(細胞塊)内の毛乳頭細胞では、円形ミトコンドリアが支配的であるのに対し、遊走中の毛乳頭細胞では線維状ミトコンドリアが支配的であることが判明し、毛乳頭細胞は遊走時には、ATPをより多く産生する線維状ミトコンドリアを利用することが示唆されたとする。

こうした成果を受けて同社では、天然化粧品原料である加水分解コラーゲンに同様の検討を実施、加水分解コラーゲンでも線維状ミトコンドリアの量を増やす事が可能であることを確認したほか、ミトコンドリアの酵素活性を促進し、より多くのATPを産生する事を確認した。さらに、細胞の運動活性を高め、スクラッチアッセイにおいて傷の修復率を高めることも証明したとのことで、同原料を用いたスキンケアラインアップの開発にも成功したとする。

なお、同社では今回の成果を受けて、今後もミトコンドリアの形態と機能、およびそれらを制御する因子を網羅的に特定し、各種疾患との関係を模索していく予定だとしているほか、化粧品原料である加水分解コラーゲンのような天然材料がミトコンドリアの機能制御を介して細胞を活性化することを受けて、これを用いたスキンケア、ヘアケア商品の開発を推進していく計画としている。

同社が学会で発表した資料の一部