--:なるほど。それでは、もう少し軟らかめの質問とさせていただきまして、そのものズバリ、グレート・バリア・リーフのどこを気に入っていますか
ブリッケル氏:Oh! どこからはじめればいいですかね(笑)。まず、私は英国人ですので、オーストラリアは天気がいいのが素晴らしいですね(笑)。暖かいですし。それは冗談としまして、1話目でも描いている、常に変わっていくというところですね。グレート・バリア・リーフでは、1カ所ここと決めて、1週間毎日のように潜っても、見られるものが毎回違います。本当に視覚的にスペクタクルともいうべき光景にもたくさん巡り合えます。
例えば、今回の映像の中にも収めていますが、エサの小魚が集まって大きな球体のようになっている場所に、捕食者の大きめの魚がすごい勢いで襲いかかる様子はすごいものがあります。クジラなども見ることができますし(画像11)。そういったものすごく動きの激しいもの以外にも、ただシャコが目の前にいて、何か小さな行動をしているのを見ているのも大好きですね。本当にすべてがつながっていることを感じられるちょっとした仕草や行動を見るのがとても好きです。
--:自分は行ったことないのですが、グレート・バリア・リーフには一度行ってみたいという方はとても多いと思います。どこかオススメのスポットを教えてもらえますか。どこもかしこも魅力的で、どこに潜ってもいいのかな、とも思いますが、あえてここ、というスポットを教えてもらえますか
ブリッケル氏:まず、ダイビングをしない人でも行けるのが、ポートダグラス(オーストラリア東海岸の都市ケアンズから北へクルマで1時間ほど(約70km)ほどのビーチ)の近くのロング島ですね。ここはレモンザメの撮影をした場所でして、マングローブの林もありますし、ウミガメもいます。もちろんサンゴ礁もありますので、オススメですね。
ダイバーの方でしたら、2話に登場するヨンガラ号という100年ほど前に沈んだ船があるのですが、ここはオススメですね。25mぐらいの深さ(グレート・バリア・リーフ自体は15m位)なのですが、この海域の100m圏内は、まさに大小さまざまな魚をはじめとして、あらゆる海の生き物たちが密集して食べて食べられてをしています。まるで世界の終末のような様相を呈していましたね(笑)。これまでの撮影の仕事でも、ここほどすごい場所は見たことがありません。
ヨンガラ号の海域は、どこを見ても、例えそれば1mm3の中であっても生物が生きていて、自然を観察するには世界でも最高のスポットだと思います。それこそすべての海の生き物が見られるといってもいいぐらいすごい場所です。ヨンガラ号に行くなら、タウンズビルという町がいいですね。どちらにしろ、グレート・バリア・リーフに行くなら、まずケアンズへ行くと良いと思います。
ヨンガラ号の海域での注意すべき点は、潮の流れが激しいことですね。体力が必要になります。たまたま1人で撮影のためにダイブした時に、カメラが結構重たいところに、潮の流れがとても激しくて、ロープにつかまっていたのですが、本当に流されそうになりました(画像12)。しかも、サメが私の周りをグルグル泳いでいて、1人だとそういう目に遭います(笑)。
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画像12。撮影に使われたソニー製「900」カメラ。非常に重たく、水面との上げ下ろしは2、3人がかりで行われた。ちなみに撮影スタッフらによるあだ名は「子豚ちゃん」 (c) 2012 BBC Worldwide Ltd. |
--:ちなみに、くだらない質問で申し訳ないのですが、ヨンガラ号では幽霊とかは出ませんでしたか(笑)
ブリッケル氏:魚など生き物がすごすぎるので、そういうスーパーナチュラルなものは見たことがないですね(笑)。
--:では、見落としている可能性はあると(笑)
ブリッケル氏:かも知れないですけど、どのみち、私は見えない体質ですから(笑)。
--:変な質問の連続ですが、潜っていて、説明のつかない不思議なものを見たことはありますか
ブリッケル氏:普通に生命現象などですが、科学的に説明できないものはよく目にしますね。スーパーナチュラルなものはこれまでもないです。
--:科学的に説明できないとはどういうものなんでしょう?
ブリッケル氏:グレート・バリア・リーフでは非常に多くの生物がありとあらゆるさまざまな行動をしているので、どんな生物学者でもすべての行動を把握できている人はいないという意味ですね(画像13・14)。
--:ヨンガラ号に行っても、怖いものを見ずに済むわけですね
ブリッケル氏:大丈夫です。
--:あとは、事故を起こして自分がスーパーナチュラルな存在になってしまわなければいいわけですね
ブリッケル氏:そうですね(笑)。