--:くだらない話ばかりを聞いていると何ですので、JAMSTECの水中探査ロボットの「PICASSO(ピカソ)」(画像15)が撮影で活躍しています。水中ロボットは世界的に見るといくらでも所有している研究機関や企業などがあるかと思いますが、なぜJAMSTECと協力することにしたのかその理由を教えてもらえますか

画像15。PICASSO。(写真は国立科学博物館にて7月6日より開催中の特別展「深海」にて展示されているものを撮影)

ブリッケル氏:深海探査は、とても予算がかかります。技術力も必要ということで、例えば、テレビ局や映像制作会社単体ではなかなか行うことができないので、通常の習慣的なものとして、パートナーと組んで行うということが多いわけです。元々、BBCはJAMSTECのような研究機関とは、専門の知識や情報もたくさん得られるので一緒に仕事をする機会が多々あります。今回の場合はレベルの高い海洋研究機関と組む必要があったのですが、撮影チームの中にJAMSTECの関係者がいたということが縁になりました。

それから、JAMSTECとしてもグレート・バリア・リーフで水中ロボットを使って調査を行いたいという希望を当該機関に出していたのですが、簡単にはグレート・バリア・リーフの撮影許可はおりません。我々には撮影許可が下りているけど水中ロボットがなく、JAMSTECは水中ロボットは持っているけど撮影許可がおりていないということで、ちょうど両者の目的が合致して、パートナーを組むことになったというわけです。

先ほどもいいましたが、BBCはこれまでもこうした研究機関とパートナーをよく組んでいるのですが、しかし、科学的な調査というのはそれだけだとさすがに一般の方にはハードルが高いというかシリアスすぎますので、テレビ番組を通してそれを軟らかい科学という形で、これまでも最先端の科学を紹介してきましたので、そういう形でも協力してきています。

--:JAMSTECとのパートナーシップは、今回の映像にもいくつかの組み合わせが出てきますが、共生関係にある生き物同士のようなパートナーシップだったんですね(画像16)

ブリッケル氏:ええ、まさに生物同士の共生のようなパートナーでした。

画像16。サンゴ礁に隠れて大型の補食魚に襲われないようにしている魚も多い。これもまた共生関係。(c) 2012 BBC Worldwide Ltd.

--:ちなみにJAMSTECには、水中ロボットがPICASSOのほかにも「ハイパードルフィン」など複数種がありますし、有人探査のできる「しんかい6500」などもあります。PICASSOを選んだ理由は何でしょう。JAMSTECがPICASSOを提案してきたのか、グレート・バリア・リーフの深度を探査・撮影するにはPICASSOの性能やサイズなどが最適だったのか、どういう理由でしょうか

ブリッケル氏:PICASSOを使うことにした理由は、当時、最も性能のいいカメラを搭載していたからだったからです。撮影も深度600mを設定していましたので、その深度だとPICASSOが最も適していたということも理由の1つです。

水中での撮影する場合のツール選びは、目的に合わせてそのできることや性能を熟慮して行います。ただ、技術はどんどん進歩していて、1週間単位でも変わっていきますから、また同じ撮影をするとしたら、今度はPICASSOじゃない水中ロボットを選ぶかも知れません。