--:3本とも観させていただきまして、まずグレート・バリア・リーフの生物の多様性ということがテーマとしてあるかと思いますが、環境問題ももう1つのテーマとして扱っているように思われました。作品を制作するに当たって、どちらのテーマを重視しているのでしょうか。またほかに何か届けたいテーマがあるとしたら、どのようなものでしょうか

ブリッケル氏:これまでに制作されたグレート・バリア・リーフのドキュメンタリー番組は、短期間の滞在で、あまり撮影総時間も長くないものが多かったかと思います。ですので、これだけのスケールでグレート・バリア・リーフ全体を撮影したのは、今回が初めてでした。私が伝えたかったのは、生態系だったり自然としてのシステムだったり、すべてのものがつながっているということです。それを上手に見せるために、それぞれの段階での一番わかりやすい例というものを選んで、ストーリーを作っていったわけです。

最初の頃に登場するサンゴのなり立ちや、そのポリプの中に褐虫藻(かっちゅうそう)が入っていって、さらにそうした藻を食べる魚たちが登場し、さらにそうした小魚を食べる捕食者の魚たちが登場し、さらに多くの方が興味のある食物連鎖のトップにあるサメなどまで、少しずつ見せていくというのがまずストーリーです。

1、2、3話と別れていますが、1話はまず今述べたようにサンゴがどういうなり立ちなのか、いかに恒常的に変化しているかということをテーマに作っています。2話目のテーマは、よりスケールを大きく視野を広げて、マングローブ(画像10)、熱帯雨林、水草といった周辺の環境とサンゴ礁がどういう風に密接につながっているかということを描いています。3話目は、さらにスケールを広げ、グレート・バリア・リーフが世界とどういう風につながっているかということを描いています。

画像10。マングローブ。(c) 2012 BBC Worldwide Ltd.

インタビュー中のブリッケル氏

--:生命同士のつながりということもあれば、サンゴ礁と周辺の環境のつながり、そしてグレート・バリア・リーフと世界とのつながりという、この「つながり」がテーマというわけですね。今回の作品を観て改めて思いましたが、BBCは数々の素晴らしいドキュメンタリーを作り続けていますが、どこにモチベーションがあるのでしょうか

ブリッケル氏:BBCの理念の1つとして、ドキュメンタリー番組には娯楽性もあると同時に、教育性もあるというものがあります。商業的な民間の放送局ではないので、世界中により最高のストーリーを求めて、視野を広げることができますし、ディテールに細かく作ることもできますし、ある意味、学術的なアプローチを取っての番組作りもできるということがあるのかも知れません。我々のスタイルは、今回発売される作品においても観て取れると思います。

ディスカバリーチャンネルやナショナルジオグラフィックチャンネルなど、ドキュメンタリー番組の放送局はありますが、どちらもどうしてもCMの時間が必要です。一方、BBCの番組の場合はそうしたブレークがありませんので、1つのストーリーを大きく綴ることができますし、そのテーマもより深く掘り下げることができるという点があるのかも知れません。ですので、今回のグレート・バリア・リーフも、より細かいディテールにまで掘り下げて語ることができています。今、あらゆるもののペースが速くなっている世の中ですが、そうではないテレビ番組を臨んでいる方も多いのではないかと思います。