デンソーは6月26日、最大2500気圧の燃料噴射圧力を実現できるディーゼルエンジン用の電子制御燃料噴射システム「コモンレールシステム」を開発したことを発表した。

ディーゼルエンジンの環境性能を左右する燃焼過程において、燃料噴射システムは重要な技術の1つであり、各国での排ガス規制の強化などに対応するために、燃料の噴射量、噴射タイミング、噴射圧力を従来以上に高い精度で制御することが求められている。

同社が1995年に商品化したディーゼルエンジン用電子制御燃料噴射システムだえるコモンレールシステムは、燃料ポンプで高圧化された燃料が、コモンレールと呼ばれる蓄圧室に蓄えられ、電子制御によってインジェクタ(燃料噴射装置)から燃焼室に噴射される仕組みで、高圧燃料をコモンレールに蓄えることにより、燃料の超高圧化だけでなく、エンジンの回転速度に依存しないで、噴射圧力、噴射量、噴射タイミングの制御を可能にするというもの。

2008年から商用化されている2000気圧のコモンレールシステムなどでは、燃料ポンプからインジェクタまで送られる燃料のうち、一部がエンジンの燃焼室に噴射されずシステム構成部品の潤滑などに使用され、その後に燃料タンクに戻されていたが、今回の2500気圧対応システムでは、構成部品であるインジェクタ、燃料ポンプ、コモンレール(蓄圧室)の構造を改良することで、燃料タンクに戻されていた燃料を従来のシステムに比べて約9割削減することに成功し、燃料ポンプの負荷低減を実現。また、部品構造の見直しや材料の改良によるシステムの高圧化により、噴射される燃料のさらなる微粒化が実現され、これにより着火性と燃焼状態を改善につながり、結果として燃費性能の向上と排ガスの浄化を実現したとする。さらに、燃料ポンプの負荷低減により、噴射圧を高めながらもポンプ体格を従来レベルに維持することにも成功したとする。

これらの技術により、同システムは従来の2000気圧システムと比べ、車両の燃費を最大3%向上するとともに、排ガス中の有害物質であるPM(粒子状物質)の発生を最大50%、NOx(窒素酸化物)を最大8%削減することができるようになったという。

なお同社では、この2500気圧コモンレールシステムについて、年内から乗用車や商用車、農建機などあらゆる分野でグローバルに展開していく計画とするほか、3000気圧コモンレールシステムの製品化を目指した開発を行っていく計画としている。

今回、新たに開発されたコモンレールシステム(左からポンプ、インジェクタ、コモンレール)