富士通と欧州富士通研究所は10月13日、データセンターでサーバや空調の運転状態を変更した際に消費電力がどのくらい変化するかを瞬時に検証できるシミュレーション技術を開発したと発表した。

負荷の変動に応じてサーバの負荷配分や台数を制御したり、サーバの稼働状態や温度に応じて空調を制御したりすることを、実際に稼働しているデータセンターでテストすることはできない。そのため、コンピュータ上でのシミュレーションによって制御の影響を確認することが期待されているが、従来のシミュレーション技術では、計算に時間がかかりすぎてリアルタイムに効果を検証することができなかった。

しかし今回、同社はデータセンター全体をまるごとモデル化し、サーバの負荷集中や空調制御によって消費電力がどのように変化するか瞬時にシミュレーションできる技術を開発した。

ICT機器、空調機器、電源系統などにおける電力と熱の流れをモデル化する「まるごとシミュレーション」では、データセンター全体の消費電力を5%以下の誤差で正確にシミュレーションすることが可能となった。

データセンター全体のモデル化

また、建屋内の熱の流れを解析する熱流体シミュレーションにおいて、事前に温度や熱の流れのパターンを自動抽出することにより計算量を減らし、従来と比較して1,000倍以上高速に計算することが可能になった。

データセンター内の熱流体シミュレーション

こうした技術により、データセンター全体に影響する省電力化技術を正確にシミュレーションすることが可能になり、計算負荷が低い場合は、一定個所のサーバに負荷を集中させ、その他のサーバの電源を切り空調の出力を下げるなどの対策をいくつか検証し、その中で最も効率のよい対策を実行することで、大幅な省電力化が期待できる。

データセンターが立地する地域の気候条件(気温、湿度)を考慮し、最適な空調方式の検討なども可能になる。寒冷地では外気を建屋に直接取り込む冷却方式が有効であり、サーバの動作を保証する温度・湿度範囲であれば、外気冷却により空調の消費電力を削減できる。昨今の電力供給不足により、稼働中のデータセンターに対して緊急の節電要請が生じた場合、さまざまな対応策を短期間にテストすることにも対応可能となる