QuarkXPressが誕生して30年。さまざまな紆余曲折を経て、最新バージョンとなる「QuarkXPress 9」が発表された。

それに先だった2011年1月20日には、iPad向けパブリッシングをサポートする「Quark Publishing System」のモジュール「App Studio for Quark Publishing System」を発表。QuarkXPressとQuark Publishing Systemを軸に、紙や電子といったさまざまなメディアに対応するパブリッシング環境が整えられつつある。

新たな展開を見せるQuark社の取り組みと気になるQuarkXPress 9の新機能について、2011年2月2日にPAGE2011会場で行われた無料スポンサーズセミナーとQuark社の製品開発担当副社長であるPGバートレット氏へのインタビューから紹介していこう。

XMLの活用がポイントになる自動レイアウト処理

QuarkXPressは従来より外部のエクステンションやAppleScriptなどを使用した自動レイアウト機能に強いと言われてきた。現在でもその思想は引き継がれており、さらに構造化文書のひとつである「XML」を自動レイアウト機能の軸に据えた開発が進められている。

PGバートレット氏によれば、自動化による印刷物制作に対して、大きく分けて3つのユーザーニーズがあるという。ひとつめは「ワークフローの一元化とコンテンツの利用」、2つめは「正確な情報発信」、そして3つめが「バリエーションによる情報発信」だ。「ひとつのコンテンツを多様な用途で使い、その情報を正確に重複せずに発信していきたい」─3つのニーズをまとめると、こんな言葉に集約されるだろう。

一般ユーザーはより価値の高い情報を求めている一方、制作側は最終成果物の品質とコンテンツを扱う上での柔軟性、全体に掛かるコストの圧縮を必要としているが、その両者の解決方法としてQuark社が考えるのがXMLの活用である。

XMLに対応したシステムを使うことで一貫性を保ったレイアウトが行え、メディアの種類に応じたスタイルやレイアウトの変更も容易に行える。また、プロセスの自動化も他の方法に比べて簡素に行え、誰でも自動化のシステムにアクセスできる。これまでパブリッシングの分野はコンテンツを作る側が主役となってアプリケーション環境が整えられてきたが、XMLではプログラマーもその役を担う可能性がある。PGバートレット氏は、「現在のパブリッシング業界は、こうした大きな転換期に来ている」と説明してくれた。

Quark社のパブリッシングソリューション。Quark Publishing Systemを軸に、さまざまなアプリケーションで作られたドキュメントを多様な媒体特性に合わせた形でパブリッシュし、配信できる

Quark社がリリースする「Quark XML Author for Microsoft Word」は、Microsoft Wordのアドインとして動作するソフトウェアで、一般に複雑なXML文書を初心者でも簡単にMicrosoft Word上で作成できる。

そして作成されたXML文書はQuark Publishing Systemでさまざまな媒体のフォーマットに適用する形で自動処理され、配信される。

Quark Publishing Systemを使うメリットは、コンテンツ作成に決められたアプリケーションを使う必要がないことだ。前述のようにMicrosoft Officeはもちろん、QuarkXPress、Adobe InDesignなどあらゆるレイアウトソフトで作成したものを取り込み、自動レイアウトが行える。そのため、制作者側の環境が問われることなく複数ユーザーがもつツールを活用できるため、作業に負担が掛からない。

作業の自動化のためには、強力な機能を持つパブリッシングエンジン、簡単にXMLのオーサリングができること、誰でもコンテンツ制作に取り組めることが重要となる。この3つのポイントをQuark社ではQuark Publishing SystemやQuark XML Author for Microsoft Wordといったソリューションで解決する。