パナソニック ホールディングス(HD)は5月17日、電気自動車(EV)向けの車載電池事業への投資を加速し、2027年度以降で投下資本利益率(ROIC)を2桁台で維持していくとの目標を発表した。同日の戦略発表会で代表取締役社長 CEO(最高経営責任者)の楠見雄規氏は「まずは10%以上を目指すが、それで十分だとは考えていない。グループ全体で覚悟をもって収益性改善を断行していく」と述べた。

  • パナソニックHD 代表取締役社長 CEO(最高経営責任者)楠見雄規氏(5月17日) 提供:パナソニックHD

    パナソニックHD 代表取締役社長 CEO(最高経営責任者)楠見雄規氏(5月17日) 提供:パナソニックHD

同社が5月9日に発表した24年3月期の連結決算は、純利益が前期比67%増の4439億円と、2018年度の2841億円を超えて過去最高だった。米国のインフレ抑制法(IRA)に関連する補助金が純利益を1118億円押し上げた。

パナソニックHDは米国ネバダ州でEVメーカーの米テスラとともに車載電池を生産している。カンザス州でも工場を建設し2024年度中に量産を開始する見込み。また新型の「4680」の開発も予定通り進捗しているといい、同年度第二四半期に和歌山工場で量産を開始するとのことだ。

  • カンザス工場(2024年4月時点)

    カンザス工場(2024年4月時点)

加えて、開発体制を強化するため、2024年度には大阪・住之江に生産技術開発拠点を、2025年度には大阪・門真に研究開発拠点を新設し、次世代電池とその材料の源流開発を加速する。

生産性の向上にも力を入れる。ネバダ工場では2030年度の生産能力を2023年度比で15%向上させ、また建設中のカンザス工場ではネバダ工場の1.3倍以上の人の生産性向上を目指す。

顧客基盤も積極的に強化している。2024年3月にスバル、マツダそれぞれとEV向けの電池の供給で協業基本契約を締結した。両社はパナソニックが手掛ける円筒形リチウムイオン電池を今後生産するEVに搭載することを視野に入れている。「スバルやマツダへの供給体制として、大阪工場を中心に日本国内の工場を事業転換し、生産量を拡大していく」(楠見氏)

  • 大阪工場を中心に車載電池の生産量を拡大していく

    大阪工場を中心に車載電池の生産量を拡大していく

一方で、北米市場におけるEVの成長は減速している。普及に見合うバッテリーコストが実現できていないことや、エネルギーの供給インフラ整備が不十分であることなどが要因として考えられる。「技術の進化とともにプラットフォーム転換が進む。円筒形はより航続距離の長いモデルに、角型はよりコスト優先のモデルに採用される」と楠見氏は見解を示した。

「2024年度末に量産を開始し、2026年度から収益化、そして2027度以降にIRA込みのROICの2桁維持を目指す。顧客の需要に基づいて、柔軟かつ慎重に投資戦略を決定していく」(楠見氏)

なお、同社は2025年3月期までの3年間に6000億円の投資枠を設け、車載電池に加え、ヒートポンプ暖房、供給網管理(サプライチェーンマネジメント)システムの3分野に重点的に投資する計画を公表している。「将来の市場拡大に向け事業基盤を徹底的に強化していく」(楠見氏)とのことだ。