ゴールデンウィークが明け、夏日を観測する地点も出始めている。今春入社の新入社員は研修の毎日を過ごしていることだろう。全体での研修が終わり、少しずつ各部門・部署での研修やOJT(On-The-Job Training)へと移行する時期だろうか。

今回、LINEヤフーにエンジニアとして入社し今春で3年目を迎える内藤綜志氏に、「新卒エンジニアとして学び役に立ったこと」や「これからエンジニアとして活躍したい新入社員へ伝えたいこと」などを取材した。

連休が終わり改めて気合を入れ直したい新入社員はもちろんだが、これから新入社員を受け入れる予定の先輩社員、若かりしころの気持ちを思い出したいベテラン社員にも、役に立ててもらえれば嬉しい。

  • LINEヤフー メディアカンパニー Yメディア統括本部 開発2本部 内藤綜志氏

    LINEヤフー メディアカンパニー Yメディア統括本部 開発2本部 内藤綜志氏

大学ではコンピューターサイエンス分野で複雑ネットワークの研究に従事。2022年4月にヤフー(現LINEヤフー)に新卒で入社。社内の技術刷新プロジェクトとして、JavaからNodeへのリプレースやPaaSからFaaSへのリプレース、SpringBootのメジャーバージョンを上げるための事前調査およびマイグレーションガイドの作成などに従事。現在はヤフートップページのバックエンド開発や未リリースの大型案件に挑戦中。

コロナ禍入社でも、積極的なコミュニケーションで課題を解決

新卒当時に取り組んだことで、現在も仕事の役に立っていることはありますか

内藤氏:私が入社した当時はコロナ禍が続いており、リモートワークが中心でした。ただでさえ1年目は何をしたらよいのか分からない状態となりがちですが、会社でのコミュニケーションはテキストだったので、上司とは定期的に1on1の機会を作り30分ほど話すようにしていました。

半年後や1年後になりたい姿を最初に目標として定め、その姿に向かって自分と上司の間に認識のずれが無いかを毎週話し合ったことで、大きな目標に対して短期に振り返る癖が付き、こまめに自分の状況を整理できるようになったのは今でも役に立っています。

「将来は○○の部署でこういう仕事がしたいが、それまでに何をしたらいいか?」といった悩みや、日々の業務の進捗度合いなどを1on1で話していました。

テクニック的な点ではいかがでしょうか

内藤氏:自分の業務を楽にするためのツールの導入やショートカットの設定は、新卒からやっておいてよかったです。ショートカットの設定などは慣れるまでに時間がかかりますが、長期的には大幅な業務効率化につながります。

新しいものが好きなので、自社が取り入れたChatGPTなども積極的に触るようにしています。定型的な繰り返し作業が面倒で苦手なので、業務で使うハードウェアなども仕事を楽にできるものをよく探しています。

入社時期はコロナ禍でしたが苦労はありましたか

内藤氏:学生時代からコロナ禍という制限の下でコミュニケーションをとっていたので、密集の回避やテキストでのコミュニケーションには慣れていました。「出社しなくていいのでむしろラッキー」と思ったこともあるくらいです。

しかしその一方で、周囲のチームメンバーや同期などと比べて自分の作業が早いのか遅いのかが見えない点が不安でした。毎週の上司との1on1もオンラインで、実際に会えたのは入社から2年が経ったころでした。

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どのように問題を解消したのでしょうか

内藤氏:新卒あるあるだと思いますが、問題を相談できずに抱え込んでしまう人は多いです。周囲のメンバーとのアウトプットの差が見えにくかったので、私は午前と午後の決まった時間にチームのチャットに「ここまで作業しました」と定期的に報告するようにしました。

上司やOJT担当の先輩に「毎回返事はしなくていいので、手が空いたタイミングなどで進捗報告に目を通してください」とお願いし、チャットにスレッドを立ててポンポンと作業の進捗を残していくやり方をとりました。

社内で隣の席に座っていれば手が止まっている場面や困っていそうな表情が見えますが、リモート環境ではそこまで様子が分かりません。今考えていることや悩んでいることをスレッドに残しておくことで、フォローが欲しいタイミングで声をかけてもらえるようになりました。

また、私の部署は1on1の文化が強く、直属の上司だけでなく2つ3つ役職の離れた上司や別部署の役職者などにも1on1をお願いしやすい雰囲気があります。普段の業務ではあまり関わる機会が少ない視座の高いポジションの方とも、積極的にコミュニケーションを取るようにしていました。

新卒エンジニアが成長するために必要なスキルは?

新卒エンジニアが新しい技術を吸収するために必要なことを教えてください

内藤氏:まずマインドセットの話になりますが、今自分が何をしているのかを客観視してみてほしいです。日々の業務の中で少しでも改善できることは無いか、無駄な作業は無いかを見直して効率化できる部分を工夫してください。

また、当事者意識を持つことも大切です。1年目はやらされている感のある業務も多いでしょう。そこでただ与えられたタスクをこなすだけでなく、「上司はなぜこれを自分に指示したのだろうか」「単にタスクをこなすだけでなく、より良いアウトプットを出す方法は無いか」「相手はどのようなアウトプットを期待しているのだろうか」と考えてみると、成長できると思います。

内藤さんの日々の勉強方法について教えてください

内藤氏:知りたいことが明確に定まっている場合は、公式のドキュメントを読みます。オープンソースであればソースコードも見られますので、まずは公式文書を探すことが多いです。

他にも、X(旧Twitter)などSNSで有名なエンジニアをフォローしたり、QiitaやZennといったエンジニア向け情報共有サイトを見たりして、普段から情報を得るようにしています。LINEヤフーは社内独自の技術も多いので、業務にしか使わない技術は業務時間で学び、業務に直接は関係のない技術をプライベートの時間に勉強しています。

副業などで、半強制的に自分で新しい技術に触るような機会も作っています。エンジニアリングの技術を勉強するのが好きなので、業務とプライベートの時間の境目はあまり意識的には分けていません。電車の中などで技術ブログを読んで勉強する日もあります。

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    趣味はバスケットボール、休日や終業後に友人とプレーすることもあるという

新卒のエンジニアが身に付けておくべきITスキルはありますか

内藤氏:プログラミング言語やコーディングのスキルももちろん大事なのですが、まずは情報を調べるスキルが必要だと思います。エンジニアの業界は新しいスキルや技術の流行が非常に早く、分からないことがあるときに効率的に正確な情報を調べるスキルが必要になります。困ったことがあったら分からないままにせずに、多少時間がかかったとしても調べる癖は付けた方がいいと思います。

また、エンジニアというよりも社会人としてですが、ロジカルシンキングも大切だと思います。物事を構造的に捉えて考え、相手に論理的に伝えることができるスキルはどのような職種でも役に立つのではないでしょうか。

これからエンジニアとして活躍したい新入社員へのメッセージ

新卒入社時代にやっておけばよかったことはありますか

内藤氏:やりたいことはなるべく挑戦してきたので、後悔していることはほとんどありません。強いて挙げるとすれば、外部の勉強会に参加する機会を作っておけば良かったと思います。学生時代はインターンシップなどでいろいろなテック企業とのつながりを作れましたが、入社後は他社と関わる機会が減ってしまいます。そうしたときに、外部の勉強会などで横のつながりをもう少し作っておければ良かったと思っています。

最後に、これからエンジニアとして活躍する新卒の皆様にメッセージをお願いします

内藤氏:先ほど伝えましたが、上司と1on1などで目標のすり合わせをしておくことは大切だと思います。自分の仕事ぶりや考えていること、悩んでいることは、他人からは見えにくいです。そのため、話す機会を作るのが重要です。

また、日ごろから伝えたいことは伝えておいた方が 例えば評価フィードバックのときなどに納得できない結果にはなりにくいでしょう。やりたいことを伝えておけば、もし機会があったら上司から仕事を振ってもらえるかもしれません。なので、ためこまずに周囲と積極的にコミュニケーションを取ってほしいです。