ルネサス エレクトロニクスは、筑波大学と共同でPCI Expressインタフェースを4伝送路(レーン)と8コアのプロセッサを搭載した高速ネットワーク通信向けコミュニケータチップを開発し、80Gbpsの転送能力を実現したことを発表した。2月20日より24日まで米国サンフランシスコで開かれている半導体の国際学会「ISSCC 2011(国際固体回路国際会議)」で22日(米国時間)に発表された。

コミュニケータチップは、データ量に応じた細かい電力制御や、ネットワークの障害回避を行うことが可能なSoCで、これを用いることで組み込み分野における低消費電力かつ高性能な高信頼ネットワーク通信が可能になる。

今回開発したコミュニケータチップは、科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(CREST)の中の「実用化を目指した組込みシステム用ディペンダブル・オペレーティングシステム」領域(DEOSプロジェクト)により実施されたもので、コミュニケータチップは、研究課題「省電力でディペンダブルな組込み並列システム向け計算プラットフォーム」のハードウェアプラットフォームに位置づけられており、通信容量要求に応じた通信リンク数の変更、通信速度制御など、きめ細やかな電力制御、性能制御を行うほか、リンク障害を検知した場合には他のリンクを使って通信を継続し、故障時におけるシステムのディペンダビリティを高めることなどが期待されている。

Rev.2.0準拠の認証を取得済みのIPを用いたPCI Expressインタフェースを4レーン×4ポート搭載しているほか、制御用として、同社のCPUコア「RX」を4個ならびに同CPUコア「M32R」4個からなるマルチコアプロセッサを搭載。 クロック周波数は、最大400MHzで動作し、転送処理性能は、最大80Gbpsを実現。消費電力は約3.2Wを実現している。

今回ルネサスと筑波大学が開発したコミュニケータチップの試作チップ写真

コミュニケータチップは、ネットワーク上で通信中継地点として動作する。自動転送機能を備えており、従来のCPUが転送処理を行う場合と較べて、約20%高速な転送処理が可能となるほか、マルチコアプロセッサによる低消費電力化が可能となっており、データ転送量を監視することで、ソフトウェアで動的にPCI Expressインタフェースの転送レート、レーン数を切り替えるなど、データ転送量にみあった構成をとるなどの細かな調整が可能である。

また、マルチコアプロセッサの処理能力を利用して、ソフトウェアによる高度な転送制御、障害回避を行うことが可能だ。ネットワークを監視し障害が発生すれば、適切に転送ルートの変更や、障害原因となったデバイスの切り離しを行うことが可能なため、これらの技術の組み合わせることで、組み込む分野に必要な高信頼性をネットワークに付与することが可能となるほか、PCI Expressインタフェースを装備した標準的なパソコン間の高速通信を、内蔵するCPUを用いて適用システムごとの種々の機能を柔軟かつ高信頼に実現することも可能となると研究チームでは説明している。