SEMIは5月14日(米国時間)、半導体市場調査会社である加TechInsightsと共同で発行した半導体製造産業に関する調査レポート「Semiconductor Manufacturing Monitor」の最新版において、世界の半導体製造産業が2024年第1四半期に、電子機器の売上高が増加していること、在庫の安定化が進んでいること、前工程ファブの生産能力拡大による改善の兆候が見られることなどを指摘、2024年下期には業界として力強い成長が予測されることを明らかにした。

同レポートでは、2024年第1四半期の電子機器売上高は前年同期比1%増で、2024年第2四半期も同5%増と予測しているほか、ICの売上高は、2024年第1四半期に同22%増と旺盛な成長を果たし、2024年第2四半期もHPC用チップの出荷増とメモリ価格の上昇に伴い同21%増となることを予想している。ICの在庫水準も2024年第1四半期に安定化し、第2四半期には改善する見込みだという。

  • IC販売額の推移

    IC販売額の推移 (出所:TechInsights)

  • ICの在庫額

    ICの在庫額(単位:10億ドル)とファブ稼働率の推移 (出所:TechInsights, SEMI)

前工程ファブの生産能力も2024年第1四半期に同1.2%増を記録。第2四半期も同1.4%増となり、四半期生産能力が4000万枚(300mmウェハ換算)を超えることが予測されている。国・地域別にみると、中国が引き続き全国・地域の中で最も高い生産能力の伸びを記録している。しかし、ファブの稼働率、特に成熟ノードの稼働率は依然として懸念材料であり、2024年前半に回復する兆しは見られないとSEMIでは指摘しているほか、2024年第1四半期のメモリファブの稼働率も供給に関する厳格な管理の結果、予想を下回るものとなったとしている。

半導体製造に関する設備投資についてもファブ稼働率の傾向を踏まえて慎重なものとなっており、2023年第4四半期の同17%減に続き、2024年第1四半期も同11%減と減少傾向が続いたが、2024年第2四半期は同0.7%増とわずかながら回復する見込みである。中でもメモリ関連の設備投資の伸びが非メモリ分野を上回り、同8%増となることが見込まれるという。

SEMIの市場情報担当シニア・ディレクタを務めるClark Tseng(クラーク・ツェン)氏は、「需要が回復している半導体分野はいくつかあるが、回復のペースにはバラつきがある。AIチップとHBMは、現在もっとも需要が高いデバイスであり、当該分野の設備投資と生産能力の増加につながっている。しかし、AIチップは少数のサプライヤに依存しているため、IC出荷増への影響は依然として限定的である」と述べている。

また、TechInsightsの市場分析担当ディレクタを務めるBoris Metodiev(ボリス・メトディーフ)氏は、「2024年上半期の半導体需要にはバラつきがあり、メモリとロジックは生成AI需要の急増により回復をしているが、アナログ、ディスクリート、オプトエレクトロニクスは、コンシューマ市場の回復の遅れと車載・産業市場の需要後退が相まって、若干の調整があった。本格的な回復は、AIのエッジへの拡大が消費者需要を押し上げる2024年下半期になる可能性が高いだろう。車載および産業市場は、金利引き下げにより消費者の購買力が高まり、在庫が減少する2024年後半から成長軌道に戻ることが予測される」と述べている。