転職率の高いIT産業にとって大きな衝撃
企業が従業員を解雇しにくく、従業員は離職しやすいという新法の規定は、知識集約型産業であるIT業界にとって、大きな衝撃である。IT業界の従業員の転職率はただでさえ他産業とは比べようもないほど高い。さらに、同業界における人材の重要性は言うまでもない。コアとなる優秀な人材がいなければ、プロジェクトは全く進まないからだ。
今後、労働契約法が施行された体制の下では、社員のやる気を引き出す仕事環境を長期的視点からはぐくむような企業文化を確立し、社員一人ひとりが、自分なりのキャリアパスを描けるようなロードマップまで提供していくことが求められるだろう。
内部管理を強化し、事業発展を図る上で促進効果も
以上のような事は、多くの中小IT企業にとって、確かに難しい事かもしれない。だが、マンパワーの土台がしっかりしている企業にとっては、企業の内部管理を強化し、企業の長期的な発展を図る上で、むしろ促進効果があるともいえる。
労働契約法の多くの規定は、いずれも企業の人件費コストを増やすものだ。これはIT業界の共通認識である。例えば、労働契約法の定めたところによれば、契約が満期になってから企業が当該労働契約を継続しないとするなら、従業員に対して経済的補償をしなければならない。
こうした事は、新法登場前には想像もできない事態である。しかも、似たような労働者保護を狙いとした賠償条項は、労働契約法の中に他にも数箇所ある。すでに見てきたとおり、企業が労働契約を解除したい場合は、検証責任を果たすため、当該従業員に関する調査と証拠集めに大量のマンパワー、時間を費やさなければならないし、補償金も支払わねばならない。