華為技術によるリストラが労働者の期待に冷や水

「2008年1月1日まで我慢すれば、春が来るぞ」 - IT企業の従業員も、他の業界の従業員と同じく、全人代で承認された労働契約法に対し強い期待感を寄せていた。従業員のほとんどはモロ手を挙げて歓迎の体だったが、そうした中、冒頭に紹介した華為技術によるリストラが、中国IT企業の従業員達の期待に冷や水を浴びせることとなった。

その後も、同社に続きリストラに走る有名企業が続々と出てきた。ある著名ポータルサイトの運営企業は、1つのチャンネルの全従業員を解雇し、新たな社員を雇用した。北京では、あるテレビ局の「臨時工(アルバイト)」が大規模に解雇された。また、深センでは相当数の長期勤続の小中学校講師が契約を解除された。

専門知識や技能のない弱者が標的に

これらの解雇事案の主な動機は、新法の特定条項が施行される前に、駆け込みで雇用負担を減らそうとした動きにほかならない。上述の「固定期間のない労働契約」締結に関する第14条を始め、新法が定める企業の従業員解雇に対する厳しい制限、賠償規定などの条項が、企業による大規模なリストラの導火線となっていると、同法案作成のワーキンググループのメンバーの1人だった、華東政法学院教授の董保華氏は語る。

中国のIT企業は、毎年のように一部の従業員を解雇する。新法施行まではリストラをするのも比較的自由で、任意だった。しかし、すでに新法が施行されているため、第14条の規定が直接影響してくる。勤続年数10年近い古参の従業員は、法律の後ろ盾により、人事調整の対象外になる。人事の主導権をいったん失えば、固定費が増えることは火を見るより明らかとして、一部の企業が駆け込み的な人員削減策に走ったわけである。

突然巻き起こった従業員解雇の嵐だが、最初に被害に遭っているのは、専門知識や技能などの面で優位性がなく、権利保護の意識と権利保護の能力に欠ける弱者達である。例えば農村からの出稼ぎ者、臨時工、派遣労働者、年長の従業員達である。IT企業の中では、事務系や庶務系の仕事をする従業員が標的になっている。