五十嵐 光喜氏
マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 本部長

つづいて、ゼネラルセッションの前半にマイクロソフトのサーバープラットフォームビジネス本部 本部長の五十嵐光喜氏が「マイクロソフトのBI宣言」と題する講演を行った。同氏はマイクロソフトのBIへの取り組みの歴史を振り返り、1997年にSQLサーバにOLAP機能を標準搭載したところから始まり、昨年9月の「BI宣言」まで、10年にわたって取り組みが行われていることを紹介した。また同氏は"people ready business"との関連で、同社のBI戦略が「すべての従業員の意志決定を支援する真のBIシステムを提供する」ことを目指していることを改めて明確にした。このための取り組みとしてまず強調されたのが、BIツールとしてのExcelの強化だ。最新のExcel 2007では、「可視化機能の強化」「データ量制限の緩和」というBIに関連する2つの大きな機能強化が行われているという。

昨今ではExcelの多用によるデータの分散管理を問題視する論調が目立つようになってきているが、マイクロソフトは当然ながら異なる認識を持っており、同社のBIへの取り組みの特徴として「データドリブン」「ボトムアップ」といったキーワードが紹介された。

さらに同氏は、同社のBI宣言が多数のパートナーの支持を得ていることを紹介し、さらに同日付で発表された、TeradataとのBI分野での協業についても言及した。NCRのTeradataはエンタープライズデータウェアハウスの核となるデータベースシステムであり、Excelによるボトムアップとは正反対のトップダウン型のシステムだといえる。今回の提携によって相対する2つの方向性が共にサポートされたことで、ボトムアップアプローチに対する批判に対してオルタナティブを提示できる体制ができたと見ることができそうだ。

Ryan Buma氏
Director, Microsoft Corporation

ゼネラルセッションの後半は、「People_Ready Business Intelligence」と題して、米MicrosoftのDirectorのRyan Buma氏が講演を行った。同氏の講演の中心となったのは、新製品となる「Office PerformancePoint Server 2007」だ。これは現在CTP(Community Technology Preview)という、いわゆるパブリックβの段階にある製品だ。現在公開されているのは英語版だが、5月上旬にはCTP2の日本語版が公開される予定だという。

Office PerformancePoint Server 2007は、同社のBI関連のソフトウェアスタックの最上部に位置する製品となる。現在はそれぞれ単独製品として提供されている「Office Business Scorecard Manager 2005」によるスコアカード機能と、買収製品である「ProClarity Analytics 6」による分析機能を統合して単一製品でビジネスパフォーマンス管理を実現する。既存の同様のソフトウェアに比べるとユーザー1人当たりに要するコストが大幅に削減できるという。

マイクロソフトのBIへの取り組みは、まずExcelありきで、Excelで利用するデータやExcelによって生成された分析結果を共有するためにSharePoint ServerやOffice PerformancePoint Server 2007といったサーバソフトウェアを組み合わせていく、といった典型的なボトムアップ型のアプローチとなっている。もちろん分散管理に伴う種々の問題は考えられるのだが、これはソフトウェアの問題ではなく、組織内の運用管理の問題だと考えることもできるだろう。何より、実際にExcelを利用してデータ整理や分析を行うノウハウは個々の従業員にすでに広く蓄積されている。トップダウン型のDWH/BIに一気に移行するよりも、段階的な機能強化が可能になるという点でも、きわめて現実的なアプローチと考えることもできるだろう。