日産自動車のコンパクトSUV「キックス」がカッコよくなった。新型キックスの開発にあたっては、デザインを「ゼロから考える」ことを決め、デザイナー陣は「本当に欲しいSUVとは?」という命題に取り組んだという。プログラムデザインダイレクターの楠鉄平さんに話を聞いた。
新型「キックス」の写真を一気に見る
塊で見せるデザイン手法を選択
エクステリアデザインのコンセプトは「タフ&アジャイル」。アメリカンフットボールの選手のような力強さを持たせつつ、ダイナミックでありながら軽快で俊敏なデザインを目指したそうだ。
「エクステリアでいうと、塊(カタマリ)の強さ、形の美しさを出したかった」というのが楠さんの考え。キャラクターラインを使って(ボディに工夫した線を引いて)グラフィカルに見せる表現ではなく、塊としての動きや抑揚のあるシルエットで勝負したのが新型キックスだ。ボディパネルの表面に浮かぶ「楕円形のリフレクション」はデザイン上のこだわりポイント。パーツの継ぎ目が少しでもずれるとリフレクションの連続性が崩壊してしまうため、生産現場と細かい調整を行ったという。
キャラクターラインを使った表面的なカッコよさではなく、本質的な塊の強さを追求した新型キックス。「パッと見ると新しいんだけど、長く乗っても飽きない」クルマを目指したと楠さんは語る。
フロントフェイスはアメフトのヘルメットからインスパイアを受けたとのこと。最近の日産車では定番となっている「Vモーション」の斜めの線は控えめで、縦に並んだシグネチャーランプが印象的だ。このあたりの造形は、アメフトのヘルメットの頬をプロテクトする部分をイメージしているという。こうしたグラフィックを取り入れることにより、実際よりもオーバーハングは短く、車幅は広く見せられるという効果もあるそうだ。
新型キックスがカッコよく見える理由のひとつは、サイドウィンドウの下端(ベルトライン)より下が張り出しているのに対し、キャビンの部分が絞られていて、台形のような、下半身でしっかりと踏ん張った形になっていることだ。
キックスはコンパクトSUVなので、車内が狭いと思われないよう、デザイン面でも気を使う必要があったはず。その観点でいけば、キャビンの部分を広く見せるため、縦の線はなるべく垂直にして、クルマのカタチをなるべく箱形に近づけた方がいいような気がする。ただ、それだとずんぐりしてしまって、新型キックスのようなダイナミックなスタイリングは実現不可能。そのあたりに「せめぎ合い」は……「ありました」というのが楠さんの答えだ。
新型キックスは先代に比べて全幅が40mm広くなっている。その40mmをどう使うかが問題だ。もちろん、サイズアップした分、車内は広くなっているし、前席のカップルディスタンス(ドライバーと助手席に座る人の間の距離)も拡大している。ただ、スタンスのよさを表現したい、マッシブなフェンダーを作りたいという思いもあり、絶妙なバランスを探ったそうだ。
力強さとリラックス感の二兎を追ったインテリア
インテリアはSUVらしく、「しっかりと守ってくれそうな形」を作るべく、「1本の大黒柱」を通すように、水平で安定したインストゥルメントパネルを設置した。ただ、あまりに力強過ぎると圧迫感を感じてしまい、乗っていて疲れてしまうので、自宅で過ごしているかのようなリラックス感を求めてソフトな素材を各所に配した。場所によってはジャージーのようであったり、フェルトのようであったりするソフトマテリアルは、100以上の素材を試して選定したという。
プラスチックむき出しな部分が少なくて、質感の高さを感じる車内だ。














