スズキがいよいよ日本国内で発売した同社初の電気自動車(EV)「eビターラ」に試乗した。初のEVとは思えないほどの完成度に加え、補助金を考慮すると同クラスのハイブリッド車を凌駕し、ガソリン車と並ぶほどの価格設定には、正直に言って驚いた。
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国の補助金で200万円台に!
スズキ「eビターラ」(e VITARA)が、いよいよ発売になった。スズキにとって初の電気自動車(EV)であり、海外でも販売する「世界戦略車」の位置づけだ。
日本ではなじみの薄い「ビターラ」という車名だが、スズキでは、日本国内向けに「エスクード」として販売していたSUVを海外では「ビターラ」の名で売ってきた経緯がある。
そうした経緯もあって、スズキがeビターラを初公開したのは欧州だった。2024年にミラノ(イタリア)で初公開した後、2025年にはインドで発表。日本では2025年9月に正式発表し、2026年1月16日に発売した。
eビターラの競合と見られるEVは、フランスのプジョー「e-2008」や韓国・ヒョンデの「コナ」(KONA)などであるという。いずれもeビターラに近い車体寸法だ。ちなみに、中国・BYDの「ATTO3」はやや車体全長が長いが、eビターラに近い存在ではありそうだ。
eビターラの価格は399.3万円~492.8万円。プジョーのe-2008は576.4万円から、ヒョンデのコナは399.3万円~506万円となっている。
EV購入時に取得できる補助金(CEV補助金)を確認すると、eビターラは127万円が適用になる。したがって、最も廉価な「X」グレードの場合は272.3万円で手に入れられることになる。
乗ってわかったスズキ製EVの「実直さ」
グレードは2種類あって廉価版が「X」、その上が「Z」(2WD/4WDあり)という区分だ。今回はZグレードの2WDと4WDに試乗した。
結論からいえば、eビターラはとてもよく仕上がったEVだった。その素性のよさから考えると、今回は試乗できなかったものの、廉価なXが「お買い得」なEVとなりそうだ。理由は、Zグレードと標準装備の内容がほぼ同等であり、所有して不足を感じることはあまりないと思うから。違うのはバッテリーの容量くらい、といってもよさそうだ。
eビターラは運転しやすく、手応えがしっかりしていて、市街地での小回りも効き、速度を上げても安定しており、運転したり同乗したりするのを不安に思わせないEVだった。全体に整った調和が、安心と信頼をもたらす。
「小・少・軽・短・美」はスズキの理念だ。軽自動車を軸として、人々のために最適なクルマを市場に導入してきたスズキの実直さが、eビターラからも伝わってきた。EVは初めてという人にも、親しみやすいクルマだと感じた。
EVなので当然だが、アクセルを踏むと素直に動き出し、わずかなペダル操作で速度を上げられるので、交通の流れにも乗せやすい。そうした手応えのひとつひとつが運転者の期待にそって的確に実行されるので、乗ればたちまち、自分のクルマであるという実感が得られるだろう。
しかもモーターならではの特性により、アクセルペダルをさらに踏み込めば、胸のすくような加速が味わえる。静かにスゥーッと速度を高めるEVならではの走りは、心地よい新たな移動感覚となるはずだ。
どのような場面でも走りが安定しているので、速度に対する不安も少ないに違いない。これがEVの快さだ。その時のあなたは、きっと微笑んでいるだろう。
ハンドル操作も的確で、切り込んだ通りに進路を定め、狙った先へクルマが向かう手の内感覚も実感できるはずだ。
そうした走行感覚のすべてが、違和感のない、自然な安心をもたらす。
駆動方式は、前輪駆動(2WD)と4輪駆動(4WD)である。2WDの駆動を前輪側とした理由をスズキは、これまでのエンジン車が前輪駆動中心だったので、それらと変わらない感覚を求めたと説明する。こうした点も、eビターラの運転にすぐなじむことができる理由かもしれない。
eビターラは3ナンバー車なので、当然ではあるが室内の快適性も高い。前の座席はやや硬めで、運転操作がしやすい姿勢を支える。後席は座面がややしなやかで、それによって乗り心地を保っている。それでも、十分な座席寸法があることにより、体の支えに不足はない。
座席の素材はZとXで異なる。しかし、見た目の色使いはほぼ同じで、Xの室内が見劣りすることはない。
航続距離は十分?
EVで気がかりなのは、一充電走行距離や充電ではないだろうか。
eビターラのバッテリー車載容量はXが49kWh、Zで61kWhだ。一充電走行距離はカタログ上のWLTCモード値でXは433km、Zの2WDは520km、4WDは472km。この性能をどう見るか。
プジョーe-2008は50kWhのバッテリー容量で380km。ヒョンデのコナは最も廉価な「Casual」(カジュアル)グレードが48.6kWhで456km、上の車格となる「Voyage」(ヴォヤージュ)は64.8kWhで616kmである。
e-ビターラはプジョーを上回るが、ヒョンデにはやや劣る走行距離だ。とはいえ、適正な水準にあると思う。
そのうえで、自宅で充電できる環境にあれば、Xで十分だし、お買い得感は高い。
将来へ向けての要望としては、アクセルペダルを戻した際に機能する回生の強度をもう少し強くして、応答性をさらに高めてほしい。そうすれば、EVに慣れた人の満足度がいっそう高まるだろう。また、画面のタッチ操作で回生の設定を変更する際の階層を工夫し、より簡便に調節できるようになることにも期待したい。
見た目の部分では、ボディカラーのほとんどが落ち着いた色なので、せっかくの独創的な外観が、やや目立ちにくくなっている。例えば明るいブルーや淡いベージュなどの選択肢があれば、さらに存在感を増すのではないか。室内についても、明るめの色合いが選べたらいい。
いま、あえてEVを選ぶ消費者に、新しいスズキの魅力を見た目で実感してもらうためにも、色の選択肢をもう少し増やしてほしいと思う。
補助金取得で価格はヤリスクロス並みに?
2025年9月の国内発表時点で、eビターラの補助金は87万円であった。年が明け、今年は補助金が127万円へ増額となった。なおかつ、東京都であれば自治体の補助金が45万円加わる。こうなると、Xの支払い額は227.3万円になる。
これは、例えばトヨタ自動車「ヤリスクロス」の最も安いガソリンエンジン車に近く、ハイブリッド車と比べれば確実に安い。
ガソリンの暫定税率が廃止になったとはいえ、それでも、ガソリン代に比べれば電気代の方が安いはずだ。EVの買い時が、いよいよ到来したといえるのではないか。
eビターラには、すでにスズキの想定を上回る数の注文が入っているという。






























































