アクチュアリー(保険数理士)は、確率論や統計学といった数学的手法を駆使し、生命保険・損害保険・企業年金等の金融分野で、保険料率・支払保険金額の算定をはじめとする数理業務を担当する専門職です。
近年では、保険・年金以外の共済事業、企業の資産運用など、多様な場で活躍しており、私たちの未来に欠かせない存在であることは間違いないでしょう。
今回はアクチュアリーを目指す方のために、アクチュアリーの年収や試験概要について詳しく解説します。
また、当サイト内に掲載されているアクチュアリーの通信講座について紹介している内容も併せて参考にしてください。
→アクチュアリーにおすすめの通信講座4選と失敗しない選び方の記事はこちら
アクチュアリーの給料は?年収はどのくらい?
企業の重要な役割となり、海外勤務だと年収3,000万円越えともいわれるアクチュアリーですが、実際の平均年収はどのくらいなのでしょうか?
アクチュアリーの平均年収・ボーナス
アクチュアリーの年収は、就職している会社や会員の種類、年齢によって異なりますが、一般的には900万~1,200万円が年収の相場です。
第1次試験に1科目合格したレベルの人は、約500万~600万円のスタートになります。
アクチュアリーとして経験を積むと、徐々に年収は上がっていき、実際には1,500万円以上の年収になっている方も多いでしょう。
アクチュアリーの平均年収(正会員・準会員・研究員)
アクチュアリーの段階別の平均年収・平均月収は以下のようになっています。
アクチュアリーには3つの段階が存在し、アクチュアリーと呼ばれるのは、日本アクチュアリー会の「正会員」です。
第1次試験に1科目でも合格すると「研究会員」、全科目合格すると「準会員」としてアクチュアリー会に入会できます。
平均年収 | 平均月収 | |
正会員 | 1,200万円 | 75万円 |
準会員 | 1,000万円 | 62.5万円 |
研究会員 | 600万円 | 37.5万円 |
正会員の平均年収は、1,200万円ですが、準会員では平均1,000万円程度、研究会員の年収は平均600万円と言われています。
アクチュアリーと一口にいっても、階級によって平均年収に大きな差が生じます。
正会員の平均年収は、研究会員の2倍であることから、正会員がいかに貴重な存在であるかが伺えるでしょう。
アクチュアリーの年収は外資企業が高い
アクチュアリーは国内企業でも年収の高い職業ですが、外資系ではそれを大きく上回る年収も珍しくありません。
外資系企業の年収が国内企業を上回る理由は、年功序列ではなく成果主義だからと言われています。
日本では、年齢を基準に年収が決まることが多い反面、外資系の場合は個人の能力が年収に反映されます。
そのため、アクチュアリーなど専門性が高く実力主義の職種は、非常に働き甲斐のある職務だと言えるでしょう。
外資企業では、年収1,000万円以上を稼ぐ20代の外資系アクチュアリーも多く、経験を積んだ30代、40代では年収2,000万円を超えることも珍しくないようです。
アクチュアリーの年収はなぜ高い?
アクチュアリーの平均年収は、日本の平均収入の2倍を超えています。
なぜアクチュアリーは給与面で優遇されるのでしょうか?
資格取得が難しいから
アクチュアリーは、日本アクチュアリー会が実施する資格試験に合格しなければなりません。
基礎科目は数学、生保数理、損保数理、年金数理、会計・経済投資理論の合計5科目。
専門科目は「生保1・生保2・損保1・損保2・年金1・年金2」の6科目から3科目を選択します。
基礎科目も専門科目も、合格率が10%~20%程度と非常に難易度が高く、基礎科目5科目全てに合格しなければ専門科目を受験できず、受験のチャンスは1年に1度しかありません。
基礎科目全てに合格し、準会員になれるのは平均で約5年、準会員から専門科目に合格し、基礎研修を受けて正会員になるのに、さらに3年かかると言われています。
長い道のりを経て、ようやく手にできるアクチュアリー資格は非常に価値が高いため、高年収を得られる大きな理由の一つと言えるでしょう。
どの分野でも需要が高い
アクチュアリーの行うリスク予測は、どの分野においても重宝されます。
さらに、その仕事は確率や統計に関する専門知識と、年金や保険に関する教養がなければ果たせない高度な専門業務であり、誰でも担える職務ではありません。
このようにアクチュアリーは、替えが効かない貴重な存在であることから、高い給料を与えられて当然と考えるべきでしょう。
アクチュアリーの試験概要
アクチュアリーの試験概要について見ていきましょう。
第1次試験(基礎科目) | 第2次試験(専門科目) | |
目的 | 第2次試験を受けるに相当な基礎的知識を有するか否かの判定 | アクチュアリーとしての実務を行う上で必要な専門知識および問題解決力を有するか否かの判定 |
受験資格 | (1)学校教育法による大学を卒業した者
(2)試験委員会が大学を卒業と同等の資格試験受験に必要な基礎学力を有すると判断した者 |
第1次試験全科目(5科目)合格した者 |
試験科目 | 次の基礎科目(5科目)から構成
|
次の3コースから1つを選択
※いずれのコースも専門科目2科目から構成されています。 |
試験方法 | 筆記 | |
施行地 | 東京・大阪 | |
試験期日 | 年1回・12月 |
第1次試験については「第2次試験を受けるに相当な基礎的知識を有するかどうかを判断する」という目的から、出題範囲は教科書に限定します。
第2次試験については「アクチュアリーとしての実務を行う上で必要な、専門的知識及び問題解決能力を有するかどうかを判定する」目的から、専門的知識の部分は教科書や参考書を中心とした出題範囲となります。
問題解決能力の部分は、アクチュアリーの役割、および時事問題についても出題範囲となり、論述式の回答を求めるなど、より広く専門職としての見識を問うことになるでしょう。
第2次試験に合格し、かつ、理事会の承認を得た者が日本アクチュアリー会の正会員となります。
なお、この理事会の承認を得るにあたって、プロフェッショナリズム研修(初期教育)および、特定分野研修(初期教育)受講が必要です。
プロフェッショナリズムは1日研修であり、次回は2025年3月7日の実施が予定されています。
また、特定分野研修(初期教育)は2日研修であり、2024年は9月6日と9月19日、2025年は3月13日と3月17日の実施が予定されています。
アクチュアリーになるには
アクチュアリーになるには、日本アクチュアリー会の資格試験に合格し、正会員として認定される必要があります。
正会員資格を取得するためには、資格試験の全科目合格と、プロフェッショナリズム研修(初期教育)の受講が必須要件です。
資格試験は、第1次試験(基礎科目)5科目、第2次試験(専門科目)2科目の合計7科目から構成されており、全科目合格までには最低でも2年を必要とします。
日本アクチュアリー会の個人会員には、正会員・準会員・研究会員の3段階があり、1次試験5科目のうち、1~4科目に合格すると研究会員、1次試験全てに合格すると準会員、そして2次試験にも合格すると正会員と認定され、アクチュアリーと呼ばれるようになります。
アクチュアリーのおすすめテキストや講座を紹介
アクチュアリーの受験におすすめのテキストや過去問、講座などを紹介します。
また、当サイト内に掲載されているアクチュアリーの通信講座について紹介している内容も併せて参考にしてください。
→アクチュアリーにおすすめの通信講座4選と失敗しない選び方の記事はこちら
アクチュアリー試験 合格へのストラテジー 数学
アクチュアリー試験対策には、1次試験の基礎5科目全てに対応している「合格へのストラテジー」シリーズがおすすめです。
著者は、アクチュアリー研究会代表のMAH氏が務めており、研究会での豊富な経験を基に、受験者のつまずきやすい点や、学習方法、試験問題の解決法など受験者に寄り添い、分かりやすく説明しています。
「数学」は、3分野である確率統計モデリングの公式が1冊にまとまっており、非常に使いやすく、受験に必要なコツや、勉強のノウハウも含めて、基礎から数学を勉強したい人には最適な書籍と言えるでしょう。
アクチュアリー試験 合格へのストラテジー 年金数理
年金実務に関与したことがない人の視点が盛り込まれた、数少ない「年金数理」の本です。
実務を知らない人が感じる素朴な質問について、随所に解説がなされており、素朴な疑問を年金実務の専門家が丁寧に解説しているため、初心者にも分かりやすい内容となっています。
アクチュアリー試験 合格へのストラテジー 会計・経済・投資理論
「会計・経済・投資理論」では、全体の7割を占めるといわれる、計算問題に必要な知識や公式を、コンパクトにまとめています。
計算問題の対策に割く時間を省略でき、余った時間で知識問題の対策に集中できるでしょう。
試験本番で役立つようなアドバイスや、テクニックが随所に盛り込まれており、非常に効率の良い1冊と言えるでしょう。
日本アクチュアリー会 資格試験過去問題集・講座情報
アクチュアリーの試験対策には、過去問のやり込みが欠かせないため、10年~20年分の過去問を解いておくと良いでしょう。
日本アクチュアリー会のホームページより、過去の試験問題解答集のダウンロードが可能です。
過去問と併せて、解答や解説、配点についても掲載されています。
教科書と過去問の併用でアクチュアリーの知識をしっかり身に付け、1科目ずつ確実に合格を目指しましょう。
日本アクチュアリー会では、会員の教育制度の一環として基礎講座と特論講座を開催しています。
講義カリキュラムは、ホームページに記載があるため、事前にチェックしておきましょう。
教科書だけでは理解が得にくい方や、初めてアクチュアリーを学習する方、苦手科目を強化したい方にもおすすめできます。
試験実施機関である日本アクチュアリー会が実施しているため、安心して受講できるでしょう。
アクチュアリー受験研究会
アクチュアリー受験研修会は、アクチュアリー試験に挑戦する仲間が集うオンラインサークルで、現在会員数2,000名を超えています。
アクチュアリー受験専門の情報共有ポータルサイトとして、受験生からの質問に答えたり、過去問解説、教科書解説、誤植情報、アクチュアリーの仕事情報を展開したり、有力な情報が豊富に掲載されています。
首都圏では、月に一度の過去問中心の勉強会、数学と損保数理については、初心者クラスの基礎会も開催しているため、受験者仲間が欲しい方や、独学での学習に自信がない方にもおすすめできるでしょう。
アクチュアリーの資格で活躍できる仕事は?
現在、日本アクチュアリー会には5,000人を超える会員が存在しており、会員の大多数は、生命保険会社、損害保険会社、信託銀行をはじめ、各省庁、さらにはコンサルティング会社、監査法人など多彩な分野で数理業務のプロフェッショナルとして活躍しています。
以下、具体的なアクチュアリーの活躍フィールドを見ていきましょう。
生命保険分野
生命保険分野のアクチュアリーは、会社全体の収支を分析し、適正な保険料の算定や将来の保険金や、給付金の支払いに備える準備金の評価などを行っています。
生命保険事業を取り巻く、さまざまな環境変化にも対応できる健全な会社経営が求められており、アクチュアリーへの期待は高まるばかりです。
近年は、金融の自由化や少子高齢化などによって、商品サービスの多様化が求められているだけでなく、会社の健全性が強く求められているため、従来の数理商品開発部門だけでなく、経営企画、リスク管理などのセクションにおいても重要な役割を担っています。
損害保険分野
多種多様なリスクに応じた保険商品を取り扱うのが損害保険の特徴です。
そのリスクの発生頻度規模は様々であり、そのため損害保険分野のアクチュアリーは、それぞれの保険事故に関して、発生頻度や損害率を統計的に分析しながら、商品開発や商品内容・保険料の設定などに携わります。
さらに近年、金融と保険の融合が一段と加速しており、保険リスクをカバーする金融商品の開発が進展している反面、クレジットデリバティブや天候デリバティブのような、保険リスク以外のリスクを積極的に引き受ける保険会社も急増加しています。
このように、高度な数理的手法を用いた商品の開発や、引受、リスク管理を行うために、アクチュアリーの存在がますます重要になってきているでしょう。
年金分野
年金分野のアクチュアリーは、企業年金制度を実施する際、企業のニーズを踏まえ制度を設計し、確率統計の手法を用いた年金数理計算により、掛け金を算出し、定期的に掛け金や積立水準を検証します。
また、退職給付に関する企業関係上の債務評価や、国際的な会計基準への対応もあり、重要な役割を担っています。
リスクマネジメント分野
アクチュアリーは保険・年金分野だけでなく、企業のリスクマネジメントも行っています。
企業を取り巻くリスクの増加・多様化、説明責任の増大といった環境変化から、近年リスクマネジメントの重要性が急速に認識されるようになりました。
アクチュアリーは保険や年金の分野で、健全な事業運営に中核的な役割を担っており、さまざまな定量的分析を行う数理モデル作成の技術や、行動規範に従う専門職能者としての倫理性など、リスクマネジメント分野で求められる多くの重要な特性を有しています。
これらの特性を活かし、企業業務のリスク管理や、企業全体の底上げ、収益化を図るなど、重要な役割を担っています。
その他分野
アクチュアリーの持つ数理的な分析力や判断力は、保険事業や年金制度だけでなく、社会のさまざまなシーンで必要とされています。
特に最近は、外部コンサルタントとして保険会社の経営管理や収益管理、商品開発に関するコンサルティングを行うアクチュアリーや、監査法人という中立的な立場から、保険会社の財務状況に関する外部監査を行うアクチュアリーが増加しています。
まとめ
アクチュアリーは、企業での役割や責任も重いため、精神的にも体力的にも厳しい仕事です。
しかし、アクチュアリーは現代社会において、あらゆる分野から強く求められる存在であるため、やりがいを持って働ける職業であり、そして何より給与面での待遇が非常に良い点も最大の魅力と言えるでしょう。
アクチュアリーになるためには、難易度の高い勉学と長い年月が必要ですが、活躍できるフィールドが広く将来性も高いため、非常に価値のある職業と言えるでしょう。
やりがいと年収の高さを兼ね備えた「アクチュアリー」を、あなたも目指してみませんか。
当サイト内に掲載されているアクチュアリーの通信講座について紹介している内容も、併せて参考にしてください。
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