TikTok、使っていますか? 数十秒の短い動画なのに気づけばずっと見続けていた――そんな話もよく聞こえてきます。9月27日には月間アクティブユーザー数が10億を超えるなど、世界中で勢いが止まりません。

そのTikTokでは、数々のヒット曲が生まれています。2020年には瑛人の『香水』が大ヒット。その後も、もさを。の『きらきら』、ひらめの『ポケットからきゅんです!』、Tani Yuuki『Myra』といったヒット曲が誕生しています。

TikTokの動画でユーザーが踊っていた曲を気に入ったら、その曲を音楽配信サービスで検索、フル尺で聞いて購入まで進めます。TikTokでバズると、音楽配信サービスのヒットチャートでも上がります。アーティスト自身も、TikTokのプロフィールにリンクしているInstagramやYouTubeでフォロワーが増え、人気者へと上っていきます。

現在は80年代のシティーポップやアニメソング、K-POPの曲といった、かつて人気だった曲が注目を集めています。たとえば、2009年に発売された少女時代『Gee』は、2021年7月5日~2021年7月11日を集計期間とした「TikTok HOT SONG Weekly Ranking」で1位を獲得しています。もう12年も経ったんですね……。

  • 少女時代『Gee』を使ったTikTok動画

30年前の小説が大ヒット

TikTokで楽曲が売れるのは自然な流れとも言えますが、最近は意外なモノがTikTokから売れるようになっています。それは小説です。

2021年7月、作家の筒井康隆が1989年に発表した小説『残像に口紅を』(中央公論社)がAmazonの「日本文学」部門で1位に、さらに1カ月で85,000部の増刷となりました。約30年前に発売された小説が突然人気となったのは、TikTokで小説を紹介する動画クリエイター「けんご」が発端でした。

けんごさんは『残像に口紅を』の魅力を動画で紹介。この記事の執筆時点で、いいね数は661万を超えています。PRではなく、自分がおすすめする小説を紹介した結果、この小説を知らなかった若い人たちに売れたのです。

  • 動画クリエイター「けんご」さんによる「残像に口紅を」紹介動画

TikTokでは、過去にも小説が売れています。2020年6月には、その4年前に発売された汐見夏衛の『あの花が咲く丘で君とまた出会えたら』(スターツ出版)が3カ月で75,000部の増刷に。同年7月には宇山佳佑『桜のような僕の恋人』(集英社)が売れ始め、その3カ月後には発行部数43万部を超えるヒット。本作はNetflixで映画化が決まり、2022年に配信予定です。どちらもユーザーの投稿がきっかけだったので、出版社は急に売れ始めた原因がTikTokだと知って驚いたそうです。

こうした流れを受け、「若い世代が新しく本を読むきっかけになってほしい」との思いを持った日本出版販売とTikTokがコラボレーション。全国の約600の書店で「TikTok『#本の紹介』文庫フェア」が開催されることになりました。期間は10月11日までと残り少ないのですが、新たな小説との出会いがあるかもしれません。

若者は広告やメディアの記事よりも、SNSで誰かがおすすめしているモノに購入意欲を持ちます。TikTokはコメントが寄せられやすいので、「私も読みました」「面白かった」との声が集まる点も購入への後押しとなります。若い層をターゲットにしたい企業にとって見逃せないプラットフォームになりましたが、何がバズるか見当がつきにくいのが悩ましいところかもしれませんね。