ヨーロッパを中心にノキアブランドのスマートフォンを販売しているHMD(HMD Global)は、自分で修理が簡単に行えるスマートフォン「HMD Skyline」を販売しています。ヨーロッパではスマートフォンの修理をユーザーが行う権利としており、2027年までにEU内で販売されるモデルはユーザーが容易にバッテリーを交換できるモデルの販売が義務付けられています。
その動きからか、ヨーロッパの家電量販店ではサムスンのタフボディースマートフォン「Galaxy Xcover7」が目立つ位置に置かれ販売されています。このモデルは現場や運送業など現場環境でも利用できるタフ仕様ですが、エンタープライズ用途ということもあり背面カバーを外してバッテリー交換が可能な設計になっています。カメラは5,000万画素を1つだけとシンプルな構成ですが、バッテリーが弱っても新品に交換することで数年使い続けることが可能です。
Appleやサムスンはすでに一部の国にユーザー向けに修理キットを提供し、この「修理する権利」に対応する姿勢を見せています。とはいえキットを申し込むのも面倒なもの。そこでHMDはドライバーと簡単な工具だけで分解できるモデルを提供し、ユーザーがいつでもバッテリーを入れ替えたり故障した本体パーツを交換できるモデルを販売しているのです。
SkylineはチップセットにSnapdragon 7s Gen 2を採用、画面サイズは6.55インチ、カメラは1億画素+5,000万画素+1,300万画素となかなかのもので、価格は499ユーロ(約8万円)。修理可能というやや特殊な機構にしたことと、数年使い続けることを考えると本体のスペックはある程度高くする必要があるのでしょう。
実はヨーロッパでは古くから自己修理可能なスマートフォン「Fairphone」が販売されています。Fairphoneも特殊工具無しで本体を完全に分解でき、捕集パーツもオンラインで容易に購入可能。なお背面の電池カバーは取り外し可能でバッテリー交換も簡単です。最新モデルの「Fairphone 5」は5,000万画素カメラ2を2つ搭載するなどこちらも悪くないスペック。ソフトウェアは8年間のサポートを提供するなど長期間使い続けることができます。価格はHMD Skylineと同じ499ユーロです。
HMDはシャープを買収した台湾のホンハイと元ノキアのスタッフによる合弁会社で、マイクロソフト時代以前のノキア時代からのフィーチャーフォンを今でも作り続けています。またノキアブランドはヨーロッパで今も強いことながら、ミドルレンジモデルを中心に多数の製品を販売しています。今後はSkyline以外にも自己修理可能なスマートフォンのラインナップを増やしていくでしょう。
Skylineを実際に分解してみました。最初に本体下部のネジをゆるめると背面カバーがすぐに外せ、あとはピックを画面の縁に挿入して回していくだけで取り外せます。バッテリー交換程度ならかなり簡単に行えます。
とはいえ初めての作業の時は、どのネジを外しどのコネクタを外すかなど、戸惑うことも多いでしょう。幸い現在は修理マニュアルも動画で提供されているので、それを見ながらゆっくり作業すれば誰でも分解が行えます。実際にやってみたところ20分程度かかりましたが、次回は半分以下の時間で完了できそうです。
なお分解を通してスマートフォン内部のちょっとした構造を知ることもできます。これは学生向けの教材としても使えるかもしれません。さすがにCPUの分解まではできないものの、スマートフォンの内部がどのような構造になっており、カメラやバッテリーがどのような大きさで、どう格納されているか、これを知ることで普段使っているスマートフォンをより大事に使うようになる効果もあるのではないでしょうか。
なお日本ではスマートフォンの自己修理は新品のパーツを交換するということで改造行為となり、現時点では電波法違反になる可能性があります。とはいえメーカーが正規で補修パーツを提供し、正規の分解方法を公開しているのであれば自分で修理したスマートフォンを使えるように法令で定める必要があるでしょう。昨今の円安を含め、日本の景気も先行きが読めず、最新のスマートフォンではなく中古モデルを買う日本人も増えています。「壊れたら自分で直せる」スマートフォンを、日本でも利用できるようにしてほしいものです。