iPhoneシリーズは顔認証センサーを搭載していることもあり、ディスプレイの上部には横に長い「ノッチ」と呼ばれる非表示エリアが存在します。そのためiPhone 12 Pro Maxは6.7インチのディスプレイを搭載しているものの、実際に表示できるエリアはそれよりも少なくなります。一方、Androidスマートフォンは顔認証にフロントカメラを使うものが増え、ノッチは無く画面に穴を開けたような「パンチホールカメラ」を搭載するものが一般的となりました。とはいえ画面上に非表示エリアがあることには変わりなく、全画面表示で動画を見るときなどは気になってしまいます。
ところが最近になりノッチどころかパンチホールもなくしたディスプレイを搭載するスマートフォンが立て続けに出てきました。全画面表示をさせても画面を遮るものは何もなく、動画を見ているときも高い没入感が得られるのです。
サムスンのフラッグシップモデルとして発表されたばかりの「Galaxy Z Fold3 5G」は折りたたみ式のディスプレイを搭載したスマートフォンとして大きな話題ですが、そのディスプレイにはフロントカメラが見えません。本体を開いたディスプレイの右上にはフロントカメラが内蔵されているのですが、ディスプレイの下にカメラが隠されているのです。これにより7.6インチのタブレットサイズの画面をフルに利用できます。
このディスプレイの下に埋め込まれたカメラを「アンダーディスプレイカメラ」(UDC)または「アンダースクリーンカメラ」(USC)と呼ぶこともあります。UDCの構造をよく見ると、カメラの上のディスプレイは密度を低くすることで写真撮影に必要な光を通せる構造になっていることがわかります。
UDCを搭載したスマートフォンの試作モデルを2019年6月に世界で初めて公開したのは中国のスマートフォンメーカー、OPPOでした。しかし製品化はZTEのほうが早く、実は日本で楽天モバイルから発売された「Rakuten Big」が世界初のUDC搭載スマートフォンだったのです。その後ZTEからも「AXON 20 5G」として登場しましたが、2020年はZTEが2機種を製品化しただけでした。
ところが2021年、夏になると各社から次々とUDC搭載スマートフォンが出てきます。まずは7月27日にZTEがAXON 20 5Gの後継モデルとして「AXON 30 5G」を発売しました。AXON 20 5Gとディスプレイサイズはほぼ同等ですが、フロントカメラの上を覆うディスプレイの密度を倍増し、カメラが埋め込まれた部分がより見えなくなっています。UDCはディスプレイの下にカメラを配置しているものの、カメラの上のディスプレイ部分は密度が粗くなっているのです。AXON 20 5Gではディスプレイを斜めから見るとうっすらと小さな正方形の影がディスプレイの上部中央に見えましたが、AXON 30 5Gではそれが見えにくくなったとのこと。
8月4日にはOPPOが新世代のUDC技術を発表。OPPOとしてはこれが第三世代目のUDCということで、ディスプレイを通過することで光量が落ちるUDCをAI処理により鮮明な画像を撮影できるように改良しているとのこと。またディスプレイ側にも改良を加え、UDC上部のディスプレイ部分でも細かい文字をくっきりと表示できる模様です。残念なことにOPPOの発表は技術のみで、UDC搭載のOPPOスマートフォンの発売時期は未定となっています。
そして8月10日にはシャオミが「MIX 4」を発表しました。MIXシリーズは大画面ディスプレイモデルとして2016年に最初のモデルが登場し、今年3月には折り畳み式ディスプレイを搭載した「Mi MIX Fold」も発売。また過去にはディスプレイが正面から裏側まで回り込むという、世界初のスマートフォン「Mi MIX Alpha」も発表されましたがこちらはコンセプトモデルどまりでした。とはいえシャオミは古くから「大画面」にこだわった製品を展開していたのです。
MIX 4はUDCを搭載し、6.67インチのディスプレイ全てを表示エリアとすることを実現しました。スマートフォン市場で一時的とはいえ世界シェア1位になったシャオミ(2021年6月、カウンターポイント調査)。そのシャオミがUDC搭載スマートフォンを出したということで、今後は他のメーカーにも採用の動きが広がるかもしれません。