• 記憶屋Windows

Microsoftは、Windows 11の「品質向上」の一環として、メモリ8ギガバイトのマシンでの実行効率を改善する。昨今、メモリ不足に起因するPC価格の高騰を見るに、搭載メモリを8ギガバイト程度に抑えるというのが1つの対策といえる。こうしたマシンで、Windowsが快適に使えないと、そもそも、商品として成り立つのか? という問題になってしまう。

そもそもではあるが、8ギガバイトのPCでも現在のWindowsは「動く」。Windows 11のシステム要件は、「メモリ4ギガバイト以上で、快適に使うには、8ギガバイト以上を推奨」となっている。Windows 11登場当初は、このスペックで通常利用が可能だったはずである。しかし、その後のアップデートで、Windowsのメモリフットプリントが大きくなり、8ギガバイトでは快適な利用環境とは言えなくなってしまった。

さらには、Microsoftでは、Copilot+ PCでは最低16ギガバイトのメモリをシステム要求としていた。これにより、PC全体のスペック底上げを狙ったが、AI重視への反発だけでなく、メモリ不足という問題はさすがに予測できなかったのだろう。とにかく、8ギガバイトメモリでWindows 11を軽快に動作させる必用が出てきた。

Windowsブログでは、「8 GB以上のメモリ向けに最適化。Windowsのメモリ使用量を削減することで、お客様が日常的に使用するPC全体で、高速かつ応答性の高いWindowsエクスペリエンスを実現します」としている。

・Windows quality: an update on the commitment we made in March | Windows Insider Blog
https://blogs.windows.com/windows-insider/2026/07/31/windows-quality-an-update-on-the-commitment-we-made-in-march/

つまり、標準状態で、Windowsによるメモリの占有率を下げる必要がある。そのためには、大きく2つの方法がある。

  • システム・プログラムのメモリフットプリントを下げる、
  • メモリに読み込まれるシステム・プログラムの数を減らす

まず、前者だが、この方法で大きくメモリフットプリントを減らせる可能性がある。これまでのMicrosoftのWindows開発にかかわるドキュメントやブログを見ていると、最初のプログラムは、スケジュール優先で「雑」な作りをしていることが多く、アップデート時にこれを改良していきながら品質を向上させるという、経過を取ることが少なくない。たいていは、あとになってから、ブログなどで、高速化やコンパクト化が報告されるが、よく読んでみると、雑な作りを改良したことによる性能向上であることがほとんどだ。Windows 11も5年目に入り、モジュールの品質向上に手が付けられるようになったと思われる。標準の天気アプリがギガバイト単位のメモリを専有するという話もあるし、改良の余地、あるいは空きメモリの伸びしろは結構あるのではないかと思っている。

後者についてだが、Windowsでは高速な起動を行うため、プログラムを予めメモリにロードしておき、必要になったらすぐに起動するという手法(プリロード)が使われることがある。また、長年の互換性のため、多数のサービスが必要になっていることがある。このあたりを整理し、Windowsの起動時に読み込まれるモジュールやサービスの数を減らせば、メモリの空き領域を増やせる。現在では、起動ドライブにSSDが使われている場合が大半で、記憶装置の読み出し速度は、ハードディスクに比べると格段に高速化されており、必要になってからサービスを起動しても、使い勝手を落とさないで済む場合がある。また、最近導入されたLow Latency Profileにより、起動時にCPUクロックを上げ、処理を高速化し、起動時間を短縮することも可能だろう。

メモリ不足が、Windowsに思わぬ品質向上をもたらしたといえる。新機能という変化を望むユーザーも少なくないだろうが、成熟を望むユーザーも多いはずだ。2021年に登場したWindows 11も5年目で、6年が区切りの製品シリーズとしては、最終段階に入る。そろそろ成熟を目指してもいい時期だ。

今回のタイトルネタは、ギブスンの「記憶屋ジョニー」(William Ford Gibson, Johnny Mnemonic,1981)である。JMのタイトルで映画化(ただし、話はかなり違っている)された。ヒトを記憶装置といった機器のように扱う代表的な作品。もちろん、これ以前にも、先祖のDNAによる記憶を受け継いでいる的なネタはあったが、ヒトと機械の境界がほとんどない感じがサイバーパンク的。