タイガー魔法瓶が、大阪府門真市の本社工場の様子を公開した。同工場ではIH炊飯器の組み立てを行っており、年間約40万台を生産している。組み立てや品質検査は、1台ずつ手作業で行っており、同社独自の土鍋釜によるモノづくりを支えている。また、本社オフィス棟にあるショールーム「Company Exhibition」の様子もレポートする。
タイガー魔法瓶の本社工場は、京阪電車・古川橋駅から徒歩6分の距離にある。
生産しているのは炊飯器で、今回、公開したのは2階フロアにある上位モデルの組み立てラインだ。取材時には、「土鍋ご泡火(ほうび)炊き土鍋ご泡火炊き JPL-H10N」を組み立てていた。
土鍋ご泡火(ほうび)炊きの炊飯器の生産については、土鍋釜の製造拠点を、2025年12月にも、本誌でレポートした経緯がある。土鍋釜は、三重県四日市市のミヤオカンパニーリミテド本社工場で生産しており、完成した土鍋釜を、今回紹介する本社工場に運び、最終製品に組み立てることになる。
本社工場全体では、約240人が勤務しており、1階フロアでは普及モデルを生産。現在、4品番を、一日に1200台の生産体制として稼働。少品種大量生産としている。また、2階フロアでは上位モデルおよび海外向けモデルを生産。上蓋専用の生産ラインのほか、3つの最終組み立てラインで構成している。こちらでは、多品種少量生産としており、15品番を、日産250台体制で生産している。
タイガー魔法瓶では、2025年11月に、同社の技術の粋を集めた120台限定の究極の炊飯器「TIGERリミテッドモデル」(価格19万5000円)を発売したが、これも本社工場で生産した。
それでは、生産ラインの様子を写真で見てみよう。
本社オフィス棟にあるショールームの「Company Exhibition」は、タイガー魔法瓶の歴史に触れることができる。
オフィス棟は、2020年9月に完成。「Company Exhibition」も同時にオープンした。これらは、同社が2023年に迎えた創業100周年にあわせて完成したものだ。
1923年に創業したタイガー魔法瓶(創業時は虎印魔法瓶製造卸菊池製作所)は、TIGERの文字と、虎印を冠した独自の小判型魔法瓶を開発。「五倍力」をキャッチフレーズに、従来製品に比べて5倍の強度を持つことを訴求した。当時の魔法瓶はブリキが主流であったが、タイガーでは、胴体ケースに亜鉛板を採用したり、ケースと中瓶の間に緩衝材として、段ボールを詰めたりするといった工夫を施して、強度を高めることに成功したのだ。
1923年9月に発生した関東大震災で、倉庫に保管されていた他社の魔法瓶が衝撃で割れるなか、納品していた100本の虎印魔法瓶が一本も壊れずに残ったことで、創業直後の同社の評価を一気に高め、耐久性が高く、高品質の製品を作る魔法瓶メーカーでであることが市場に認知されたというエピソードがある。
創業者の菊池武範氏は、大阪での奉公時代に、冬場には冷めたお茶をご飯にかけて食べる生活を送っていた。常々、「熱いお湯やお茶が、いつも飲めたらなぁ」と思っていたという。そのときに出会ったのが、輸入されていたテルモスの魔法瓶だ。将来性がある商品として魅力を感じ、国内メーカーであったイーグルマホービンでの経験を経て独立。4人の社員で魔法瓶メーカーを設立した。タイガー魔法瓶の原点は、創業者が奉公生活のときに思い描いた「母親が淹れてくれた、あの一杯の温かなお茶が飲みたい」という団らんへの憧れがベースであり、当時は高級品でありながらも、壊れやすかった魔法瓶を、独自の技術によって改良し、信頼性の高い魔法瓶として、普及させることを目指した。
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1981年に発売した「V.I.P.ポット」。ハイグレードなインテリアとしての役割も果たした
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ダブルステンレスボトル「サハラ」。1981年に発売。魔法瓶の中身をガラスからステンレスにしたことで、割れないだけでなく、保温力の増強、軽量化などが図られた
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スーパークリーンプラス加工を施したボトル。光沢のある加工を施し、表面に凸凹がなく、汚れやニオイがつきにくいだけでなく、炭酸も利用できる
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独自の「Bubble Logic」機構により、炭酸ガスの噴き出しを防ぐことができる
タイガー魔法瓶が、保温潜熱技術を活用して1973年に発売した「魔法櫃(まほうひつ)」は、同社の炊飯器事業の原点となる製品だ。当時の総売上高の37%を占める主力製品に一気に成長した。また、1964年には東海道新幹線の開業にあわせて、ビュッフェに30台のステンレスジャーを納入したという。1970年には電気ジャーを発売。保温断熱技術と熱制御技術の組み合わせが評価され、1年後には100万台を突破する大ヒットを記録し、トップブランドとしての地位を確保した。さらに、かまど炊きを手本とし、調圧口によって圧力をコントロールする炊飯電子ジャーを投入。そのノウハウを生かして、マイコン炊飯ジャーへの進化も果たした。1986年には、開発部、品質管理部、製造部によるマイコン基板内製化プロジェクトを立ち上げ、基板工場を完成させた。その後、IH加熱方式の採用にあわせて、内釜を直接発熱させる仕組みができたことで、内釜の熱伝導や強度を追求。新素材や多層鋼の開発を経て、2006年には、業界で初めて土鍋を使った内釜を開発。緻密な熱制御技術との組み合わせにより、ご飯のさらなるおいしさを実現している。
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1972年に発売した電子ジャー「炊きたて」。ハイビスカス柄の斬新なデザインを採用。これが家電の定番となる歴史的ヒットを記録することになった
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電熱ヒーターによる抵抗加熱と金属釜の組み合わせによる熱制御を説明する展示もある
タイガー魔法瓶が培ってきた真空断熱技術は、最先端の産業分野にも活用されている。JAXAからの要望によって開発した「真空二重断熱容器」は、ISS(国際宇宙ステーション)から、実験試料物資を回収するという重大な任務を成功させたという。タイガー魔法瓶の真空断熱技術は、内筒と外筒の間に設けた真空層で、熱の伝導や対流を限りなくゼロにするとともに、容器の内面に施した鏡面加工と、真空層の金属箔により、輻射熱を反射し、内部の熱エネルギーを保持できるのが特徴だ。そのほか、同社が持つ様々な技術が、医療分野、自動車分野、住宅建材分野、学校給食分野、データセンター分野などでも利用されている。











































































