シャープは、統合AIサービス「NIAH(ニア)」の提供を、2026年9月30日から開始すると発表した。
様々な家電やサービスと連携して、ユーザーの暮らしに合わせた提案やサポートを行う統合AIサービスと位置づけており、スマホアプリや連携する家電を通じて、利用者をサポート。家電の使い方に迷ったときや、家事の段取りを整理したいときに対話で相談できる。
NIAHが、ユーザーの暮らしを理解するとともに、家電が持つ必要な機能を届けることで、家電の効果的な利用促進にもつなげると見ている。
たとえば、「ダウンジャケットを洗濯したい」と思っても、所有している洗濯乾燥機に、その機能が搭載されているかどうかを知っている人は少ない。利用する際には、取扱説明書を見たり、ウェブで調べたりといったことを行う必要があるのが実態だ。また、その機能を利用するための設定作業も必要になり、利用者には、設定の間違いによって洗濯を失敗してしまうのではないかという不安も残る。
ユーザーは、NIAHに対して、「ダウンジャケットって、家で洗えるの?」と音声で聞くだけで、ユーザーが所有している洗濯乾燥機の機種と、そこに搭載されている機能を理解した上で、自然言語で回答。「お持ちの洗濯機では、ダウンジャケットコースを用意しているよ。上手くいくようにナビゲートするね」と答えて、適切なコースの設定までを支援する。
シャープ Smart Life事業統轄部 統轄部長の長沢忠郎氏は、「利用者にとっては、調理家電の設定を覚えることが目的ではなく、気軽においしい料理をつくりたいということが目的である。だが、家電が多機能化すると使いにくくなり、その機能を呼び出すための負担が増えている。この課題を解決するためにAI技術を活用し、多様なニーズへの対応と、わかりやすいUIの両立を図る。そのためには、AIがお客様の暮らしを深く理解すること、生成AIを活用して、話し言葉で簡単に高度な機能が利用できるようにすることが重要になる。この2つの要素を取り入れたのが、NIAHである。洗濯乾燥機というフィジカルと、家電や家事に関する困りごとを解決する生成AIが融合したものになる」とした。
ライフスタイルや働き方が多様化する一方、衣食住にも変化が生まれており、衣では機能性素材や多様なデザインの採用、食では冷凍食品やミールキットの広がり、健康志向や時短調理への関心の高まりがある。また、住では、スマートホームや省エネ志向、安心安全志向などへの広がりが見られている。
こうした多様化や、生活の変化に対応するため、家電も進化しており、調理家電には2000種類以上のレシピメニューを搭載。洗濯乾燥機には60種類以上のコースがあるという。だが、これらの機能や価値を、利用者にわかりやすく伝えることは大きな課題となっていると指摘する。
こうした多機能化する家電の操作に迷わず、使いこなすためのハードルを下げる役割を担うのがNIAHだという。
また、NIAHは、日々の予定や、家事の段取りを、タスクとして一元管理する機能も持っている。
「トーク」画面で、晩御飯の具材の購入やシーツの洗濯、翌日の子どもの弁当づくりの準備、エアコンのフィルター掃除、ゴミ出しの日など、家事にまつわる予定をNIAHに対話で伝えると、これらの作業項目を自動的に整理して記憶。必要なタイミングで知らせたり、家族とも情報を共有し、家事を分担したりといったことが可能になる。
「夕飯に、広島お好み焼きをつくりたい」とNIAHに話すと、必要な食材を考え、買い物リストを自動的に作成し、家族にも共有することから、仕事帰りの家族が購入することもできる。
NIAHの最大の特徴といえるのが、複数の家電を横断し、それらが連動した形で提案する点だ。
具体的には、空気清浄機を新たに購入した際に、「気になること」として、「赤ちゃんがいる」と登録すると、同じ家庭内にある洗濯乾燥機では「赤ちゃん衣類コース」を提案したり、調理家電では離乳食と同じ食材を使用した大人向けレシピを提案したりするほか、テレビで子育て中の家族に役立つ動画を紹介したりする。
「家電が1台ずつ賢くなるのではなく、家電やサービス全体が賢くなり、ユーザーの生活に寄り添う提案を行うことができる。これが、シャープが目指す次のスマートライフの姿である」とした。
NIAHは、人の近い距離にいる「NEARなAI」という意味を持ち、気軽に話しかけやすく、親しみのある見た目、大きな耳と温かみを感じるAIエージェントキャラクターとして提供。シャープが、「ポケとも」や「AQUOS AI」で活用している対話プラットフォームを利用することで、一人ひとりに寄り添った提案や対話ができるという。
ユーザーのことをたくさん気にかけて、たくさん話しかけてくる「寄り添いNIAH」、最も冷静で、言葉が少なめな「スマートNIAH」、ポジティブで、ユーザーに冗談を言ったりする「ユーモアNIAH」の3つのキャラクターを用意。ニックネームの変更も可能だという。
「人によって、心地よいコミュニケーションが異なる。会話の頻度や表現、キャラクターとの距離感などを選ぶことができ、人それぞれに合った体験を提供する。まずは、30代、40代の共働き世帯をターゲットにしたい」としている。
NIAHは、人に寄り添い、家電と仲介するAIエージェント
NIAHは、COCORO HOMEで対象家電を機器登録し、アプリ画面上のNIAHボタンを押下して、NIAHをインストールすれば、あとはNIAHを起動し、シングルサインオンするだけで、複数の家電を連携したサービスが利用できる。
現在、ヘルシオ、ホットクック、洗濯機、エアコン、空気清浄機、冷蔵庫の6カテゴリー、52機種に対応している。
ヘルシオと洗濯機では2025年発売モデルの一部にも対応。今後、過去機種を含み、対応カテゴリーおよび対応機種を増やしていくことになるという。2027年度にはテレビでも対応を図る。
月30回までのAIとの対話や基本機能を利用できる無料の「フリー」のほか、月300回までの対話が可能な「ノーマル」は月額495円、月600回までの「プレミアム」が月額990円、月1200回までの会話ができる「ゴールド」が月額1980円となっている。NIAHに対応した家電を持っているユーザーは、サービス利用開始日から6カ月間は、「ノーマル」プランを無料で利用できる。
NIAHに対応した空気清浄機の新製品「KI-WX100」、「KI-WX75」も発表した。
NIAHが、花粉やニオイ、ペットの飼育状況など、あらかじめ設定した暮らしの関心ごと、空気清浄機の運転状況、ユーザーとの対話内容などをもとに、ユーザーの暮らしを理解し、その内容に応じて、空気ケアのポイントや空気清浄機の働きを伝えるメッセージを生成して、朝昼夜の1日3回、本体から音声で知らせる。
シャープ Smart Appliances & Solutions事業本部プラズマクラスター・ヘルスケア事業部 国内PCI商品企画部 部長の花房浩章氏は、「住んでいる地域に対して、花粉や乾燥の予報が出ていることを知らせて、その日の行動提案を行ったり、雑談を通じて、空気の豆知識を伝えたり、1日の空気の変化と空気清浄機の働きの効果を伝えたりする。毎日新たな語りかけが届くため、使い続けることで愛着が深まる体験を提供できる」とした。
2027年度からは、ボイス生成により、子どもの声やお母さんの声などの声質を増やして、ユーザーの愛着をより高めるという。
「将来的には、空気清浄機本体との対話を実現し、ユーザーごとに理想の運転やフィードバックを生成していく」という。
シャープ 常務執行役員 Co-COO兼スマートライフビジネスグループ長の菅原靖文氏は、「現在、約4割の家電にIoTが搭載されている。なかでもテレビでは約80%にIoTを搭載している。この実績を振り返ると、シャープが10数年に渡って取り組んできたIoTが、いよいよ市民権を得ることができるためのスタートラインに立ったといえる。その上で、NIAHは、他社よりも一歩進める新たなサービス事業として提供ができるものだ。厳しい競争環境のなかで、シャープの勝ち筋はAIoTであると考えている。AIoT事業は、今後も発展させていく」と語った。
シャープでは、他社の機器やサービスとの連携を進めるために、AIoTプラットフォームを拡張し、オープン化も推進するという。
シャープの長沢統轄部長は、「シャープの家電だけが便利になる世界を目指しているわけではない。家電、住宅、ヘルスケア、エネルギー、地域情報など、様々な機器やサービスとの連携を通じて、多様なライフスタイルに対応し、様々な暮らしを支えるサービスを目指している。日本の企業には、日々の暮らしを細部まで考え、品質と使い勝手を磨いてきた実績がある。AIは、その蓄積を、お客様にわかりやすく届けるための技術だと捉えている。家電に備わっている高度な機能、メーカー各社が積み重ねてきた暮らしを支えるノウハウ、各社がそれぞれの分野で培ってきた専門性をAIでつなぎ、ユーザーの言葉から、ユーザーが望む結果へとつなぐことができる。日本のモノづくりが、生成AIによって、暮らしの主役になることを目指す。NIAHは、そのきっかけになる。パートナー各社とともに暮らしの共創へと進めたい」と述べた。
シャープは、2008年に、「家電にココロをプラスし、愛着をもたらす取り組み」として、ロボット掃除機に発話機能を搭載。これらの経験をベースに、2015年に、シャープ独自の造語でもある「AIoT」を提唱し、AIとIoTを組み合わせた取り組みを事業として推進。商品カテゴリーごとのネットワクサービス「COCORO+」をスタートした。2019年には、スマートホームアプリケーション「COCORO HOME」の提供を開始。家電の一括管理や制御、他社機器やサービスとの連携も開始している。
また、2024年には、AIoT家電の累計出荷台数が1000万台を突破するとともに、COCORO MEMBERS会員が1000万人を突破。社会実装を目指して自治体との連携なども開始している。「家電に搭載しているセンサーなどを活用し、お客様一人ひとりの利便性を高めるだけでなく、災害時対応、防犯対策、セキュリティ対策にも家電機器を活用することができる点に着目し、社会実装への実験を開始しているところだ」という。
また、2025年には、「スマートライフAIサービス」を展開。機器連携などをスタートするとともに、個々の機器に紐づいた生成AIを搭載した商品を投入。顧客の利用データを活用した分析の高度化を進めてきたという。
「生成AIの活用により、コールセンターにおいて、操作方法やお手入れ方法、機器仕様に関する問い合わせが約30%減少したほか、レシピ検索(献立相談)の利用が最も多く、クックトーク利用者のレシピダウンロード数は、非利用者の約2.5倍に達するという成果が出ている。わずらわしさを感じていたり、あきらめていたりという使い方が、生成AIによって解決できている」とした。
さらに、データ基盤を活用し、ヘルシオの過去の機種を対象にしたレシピサービスの提供を試験的に実施したところ、6000人以上が利用。空気清浄機において、使用履歴などをもとに、ターゲティングした消耗品販売を行ったところ、平均単価が約50%向上するといった成果が出たという。
「AIサービスは、雑談利用によって、継続利用する傾向が高く、キャラクターがある場合には、雑談利用割合が約6倍になることもわかった。AIの存在を可視化することで、親近感や愛着の醸成につながっている。これらの成果をもとに、今回の新たなAIサービス事業を本格的にスタートする意思決定をした」と説明した。
シャープでは、今回のNIAHの発表にあわせて、COCORO HOMEは継続的にサービスを提供するものの、そのなかで提供されてきたCOCORO HOME AIは、2026年9月30日で、NIAHに進化させることでサービスを終了。ヘルシオで提供してきたクックトークの機能も、2027年度にはNIAHに取り込むことになる(クックトークで提供しているAIアシスタント「しおりちゃん」の継続に関しては検討中)。
今回のNIAHによって、林立してきたAIサービスを再整理するという狙いもあるといえそうだ。
シャープのAIoT事業は、AIエージェントである「NIAH」によって、新たなフェーズに入ったといえる。多機能を追求していた家電は、その方向性を維持しながら、多様化するニーズに対応。その上で、多機能化とは、相反する要素となっていた利便性や使い勝手の改善も図ることができる。
さらに、シャープの家電事業のリカーリングビジネス化にも貢献する。
菅原常務執行役員 Co-COOは、「売って、買ってだけでは終わらず、購入後のサービスの強化や、購入した製品のアップデートにもつなげることができる。価格だけで戦うのではなく、使ってもらいながら、価値を噛みしめてもらえるサービスを、これからのシャープの強みにしたい」と語る。
シャープでは、ネット接続している家電を2026年度には約1300万台にまで拡大。2027年度には1500万台にまで広げる計画だ。これにあわせて、NIAHの活用率を高めていくことを目指しており、2028年度までに100万ユーザーの利用を計画。そのうち5%を有料会員とする予定だ。
2026年6月の事業説明会において、菅原常務執行役員 Co-COOは、「家電が連携しながら、能動的に、お客様の困りごとに最適な解決方法を、先回りして提案してくれるようになる。これによって、次もシャープ、次はシャープという環境を実現したい」と語る。
そうした世界の実現に向けた具体的な一歩が動き始めたといえる。


















