NECは、AIの部門長やマネージャー、社員が自律的に業務を遂行するAIだけの社内組織「コーポレートAI・Workforce部門」を、2026年8月1日付で新設し、その概要と狙いについて説明した。
コーポレートAI・Workforce 部門は、AIが経営分析やシミュレーション、リスク予兆検知をAIが行う組織で、AI部門長、AIボード(CxO機能)、AIマネージャー、AI社員の4階層で構成し、職務定義から実行、自己進化までをAIが自律的に実行する。業務はAIが遂行する一方で、最終的な評価および意思決定、品質やガバナンスの統制は人が担う仕組みとしている。
2026年7月から1カ月間の社内実証を経て正式に設置した。実証では、役員会議で示す経営分析やシミュレーション、リスク予兆検知を、AIが一貫して遂行することで、同業務にかかる時間を約7分の1に短縮。人は、より高度な業務に時間を割くことができるようになったという。また、AIが行う活動のすべては、デジタルツイン上に構築した「AI統合マネジメントコックピット」でリアルタイムに可視化しているという。
NEC 執行役Corporate EVP兼CAXO(Chief AI Transformation Office)の小玉浩氏は、「NECは、2030年に向けて、AIネイティブカンパニーになることを打ち出している。これまでの企業のOS(オペレーションシステム)は、人を中心に構築していたが、これからはAIを組み込むことを前提に再構築し、それによって企業が価値を発揮することが重要になる。AIによって、人の力を拡大し、組織の力を増幅し、課題解決をベースとした顧客エンゲージメントにまで高めていくことが求められている」とし、「NECは、社員とAIエージェントを同等に位置づけながら、AIと人が互いに能力を補完しあう企業を目指している。それを実現するために発足した組織が、コーポレートAI・Workforce 部門である。AIツールとして活用するだけでは、結果として人に知見が蓄積されることになる。組織のなかにAIを組み込むことで、AIに使われたり、人を置き換えたりする会社ではなく、AIを組織として使いこなし、価値を創出することを目指す」と述べた。
NECは、自らが実験場となって先行的に利用するクライアントゼロに取り組んでいるが、今回のコーポレートAI・Workforce 部門も、同様の狙いがあり、ここで蓄積した知見を、BluStellarに組み込んで、顧客に提供することになるという。AI社員によるサービスは、すでに提供が可能な状況にあるとした。
コーポレートAI・Workforce部門では、社内からの業務ニーズに応じて、AIマネージャーが、必要なAI社員をその都度生成し、役割を任命する。生成されたAI社員は、NECの行動基準である「Code of Values」や、NECグループのパーパス、社内規定などの業務遂行の前提となる知識および判断基準を組み込み、AI社員は、この枠組みのなかで業務を遂行する。また、AI社員は、それぞれに不足しているスキルを自ら学習し、継続的にアップデートする。
組織発足時には、17体だったAI社員は、約1カ月半で、36体にまで増加しているという。
また、AI社員を管理するAIマネージャーは、日報をもとに、AI社員の業務遂行を管理し、成果物の品質確認、週次サーベイによる状態把握、AIトークン使用量などのコスト管理を行い、品質、状態、コストを継続的に把握することで、AI社員が安定して成果を出せる運用環境を維持する。
たとえば、週次サーベイでは、すべてのAI社員から、業務上の課題や改善提案を収集して、サーベイスコアとフリーコメントをとりまとめる。これにより、AI社員の稼働状況だけでなく、業務プロセスや環境面の改善余地を継続的に把握。収集した提案のうち、AI組織内で対応可能なものは、AI自らが改善し、改善が必要なAI社員に対しては、指導を行う。
さらに、AI社員が働く上で、人間側が整備する必要があるデータや権限、ナレッジ、コンテキストなどは、AIが人間に対してリクエストを提示し、人間はAIが力を発揮しやすい環境整備を支援することになる。
「AI社員に対してもストレスチェックを行う。AI社員からは、人がなかなか意思決定ほしてくれないといった声や、人の管理者から疎外されているようだという意見などもあがってくる。そのコメントを見て、AIが働きやすいように、人が改善を図るといったこともある」という。
CxO機能となるAIボードは、審議および決議によって、組織改善を提案する。
AIマネージャーとともに、AI社員の生成、稼働、改善を一元的に管理する一方、週次のAIボードでは、各領域を代表するCxO AIが、それぞれの役割に基づき、意思表明や相互検討、決議のプロセスを通じて多面的に議論し、その結果をもとに、AI組織内で対応が可能な改善は自律的に実行する一方、人間側の判断や承認が必要なものは、必要に応じて、人へのサポートを依頼する。不足する知見に関しては、定められたルールのもとで外部情報を参照して、意思決定の質を高めているという。
NECの小玉Corporate EVP兼CAXOは、「会議では、それぞれのCxOが、プロジェクトにおいて、ROIの指標が設定されていなことを課題として指摘したり、各種課題に対して、解決策を提示したり、施策の成果を評価したりといったことを行うほか、AIボードメンバーは、AI社員に的確な指示を出すために、世界中の最新情報を自ら学習。刻々と変化する事業環境の変化に対応する」と説明した。
また、AI組織の活動そのものについても自己評価を行うだけでなく、AI社員から寄せられた課題を議論し、AI社員に対するエンゲージメントサーベイの結果に基づいて、AI社員の労働環境を改善したりする。
「他のAI社員の活動結果が見えない状況にあるため、それを改善して欲しいと要望したり、他のAI社員の発案に課題があることと指摘したりといったように、AI社自らが自律的に改善を進める」という。
AI社員やAIマネージャーなどは、それぞれに価値観を持っており、「仕事の速度を優先するより、確実に検証することを優先している」といったように、それぞれの価値観を確認することもできる。
コーポレートAI・Workforce部門のリーダーとなるAI部門長は、組織全体の稼働状況を「統合マネジメントコックピット」で把握し、日次の稼働状況、リードタイム、AIコスト、品質、リスクアラートなどを確認する。AIの活動をリアルタイムで可視化し、透明性のあるAIガバナンスを実現するほか、組織全体を管理し、必要に応じて人間側の経営層に報告する。
「経営コックピットでは、AIにより、人間では見落としやすい小さな変化や予兆もデータから検知し、経営判断に対して、示唆を提供することができる」という。
だが、「最終的な監督、評価は人間側の経営層が行う」という。
活動の透明性や品質を含む最終的な評価、統制は人が担うガバナンス体制を確立。実世界の経営層は、AI組織の状況をコックピットで確認しながら、成果、コスト、事業の状況にあわせて、人とAIのリソース配分を最適化する。また、業務を本部門へ集約および移管することで、個別部門や利用者ごとにAIエージェントが分散的に構築、運用されることを抑制し、安全で、統制がとれたAI活用を推進するという。
なお、コーポレートAI・Workforce部門のAI社員やAIマネージャー、CxOなどには、担当する業務にちなんだ氏名がついており、全体を統括する部門長は「全体 統」さんとなっているほか、CFOの「財前 資」さん、人事の「人見 育」さん、リスク管理の「守屋 律」さん、戦略担当の「戦略 司」さん、経営分析を担う「勘定 実」さん、知見を蓄積する「知泉 学」さん、コスト管理を行う「倹田 効」さん、コミュニケーションを担当する「橋渡 結」さんなどが在籍している。
NECが、AIだけの社内組織である「コーポレートAI・Workforce部門」を発足できることができた背景には、同社が取り組んできたAI基盤の整備や、AI活用の実績、それを推進する文化の醸成が重要な役割を果たしている。
NECでは、これまでの取り組みをおいて、経営コックピットを通じて、11領域96種類の経営情報を可視化。9万5000人の社員が社内生成AIサービスを利用している。また、社員が開発したAIエージェントは3583体に達し、利用回数は46万回。AIによる業務効率化では、全社累計での工数削減が50万時間を達成し、管理会計での業務工数は60%の削減が見込まれている。NECの森田隆之社長兼CEOをモデルにしたAIアバター「モリタス」が、社員の相談に乗るといった活用にも取り組んでいる。
「経営コックピットのなかに情報を蓄積してIQ化し、企業の知識として活用できるようにしている。AIの民主化を図ることで、現場課題を解決するためにAIが社員を支援し、工数削減の成果もあがっている。これらの実績を、企業のオペレーションシステムに組み込んで、さらにAIの活用を加速する」とし、「今後は、AIキャピタルが重要になる。これは、組織に深く組込まれた経営資産そのものである。あらゆる経営判断や実行の結果をナレッジとし、これらをもとにAIを自律的に進化させ、人の力を加味して、パワーアップしていくことになる。人は、方向性を提示、最終承認を行い、統治するという役割になっていく。現実を動かして、未来を創ることが、NECの役割になる」とした。








