2026年7月1日(水)、アイオーデータのディスプレイ累計出荷台数が2,000万台に到達した。国内ディスプレイ市場には数多くのメーカーが参入しており、価格競争も激しい。そのなかで、同社はどのように2,000万台という数字を積み上げてきたのか? また、個人ユーザーだけでなく、大規模導入を行う法人からも支持される理由はどこにあるのだろうか?

 今回は、執行役員 第1事業部部長の寺前浩一氏と、2011年から液晶開発に携わる第1事業部 開発1課 主任技師の山下俊郎氏に、これまでの歩み、製品開発におけるこだわり、ユーザーの声を製品に反映する方法、そして今後のアイオーデータについて話を聞いた。

  • 左から寺前浩一氏、山下俊郎氏

    左から寺前浩一氏、山下俊郎氏

2,000万台達成で頭に浮かんだ「次の3,000万台」

--まず、ディスプレイ累計出荷台数2,000万台という大きな節目を迎えた率直なお気持ちを教えてください。

寺前氏:2,000万台という数字を強く意識しながら取り組んできたので、とてもうれしく思っています。達成したのが創業50周年の年であり、ちょうど当社の51期が終わるタイミングでもあったので、喜びもひとしおです。

 一方で、真っ先に頭に浮かんだのが「3,000万台はいつ達成できるんだ?」ということでした。「その時にはどのメンバーがいるのか?」「次の3,000万台達成の時、自分はまだ在籍しているのかな?」みたいなことも考えましたね(笑)。

--ディスプレイ事業の立ち上げ当初から、2,000万台という数字を目標にしていたのでしょうか?

寺前氏:2,000万台という数字を強く意識するようになったのは、達成が現実味を帯びてきてからです。それまでは、累計出荷台数よりも、毎年の数量目標を確実に達成することを重視していました。  そうしているうちに、実は1,500万台という節目を見逃してしまったんです(笑)。今振り返ると、そのタイミングでもう少ししっかりとお客様にお伝えできればよかったなと思います。

--約30年にわたるディスプレイ事業のなかで、特に大きな転機は何だったのでしょうか?

寺前氏:ひとつは、非常に技術力が高く、手堅いものづくりをする日本ブランドの皆さまと交流させていただいた時期ですね。勉強になることがたくさんありました。

 もうひとつは、ゲーミングモニター市場が急速に拡大してきたタイミングです。この分野でも新たに学ぶべきことが数多くあり、私たちにとって大きな転機となりましたね。

山下氏:私の中で一番印象に残っているのは、「初代GigaCrysta」の開発です。それまでは一般的なモニターがメインでしたが、ゲーミングを含め、当時「マルチメディア」と呼んでいた用途に初めて対応したのが初代GigaCrystaでした。

  • 「初代GigaCrysta」

    「初代GigaCrysta」

 「ギガクリア・エンジンII」というICを搭載していたのですが、チューニングがかなり大変でした。画質調整ではファームウェアを100個以上作って検証したぐらいです。大変な思いをしましたが、いま振り返ると面白かったですね。

--2014年ごろからアイオーデータのディスプレイ出荷台数が大きく伸びています。この時期にはどのような変化があったのでしょうか?

寺前氏:2014年は市場環境の変化に加えて、ゲーミングの初代モデルをリリースしたことも、台数を伸ばす要素になりました。初めて国内シェアナンバーワンになったタイミングでもあります。

 その後、2019年以降も出荷台数は伸び、特にコロナ禍では、パートナーとうまくやり取りできたことも大きかったです。他社では売る製品自体がない時期もありましたが、我々は製品を安定して確保し、出荷することができました。

 私たちは生産パートナーを頻繁に切り替えず、SKU(Stock Keeping Unit)ごとに決まった会社で作っています。品質を安定させるためには、同じところで作り続けながら、一緒に品質を維持、向上させていくことが重要だと考えています。

製品企画は「技術トレンド」と「ユーザーニーズ」を組み合わせるパズル

--製品づくりでは、ユーザーの要望とメーカー側からの新しい提案のどちらを重視しているのでしょうか?

寺前氏:ひとつの典型例として聞いていただきたいのですが、我々はディストリビューターさん(※)を間に挟んだビジネスをしているので、つねにエンドユーザーさんと直接お話しできるわけではありません。展示会やイベント、サポートセンターなどからお客様の要望をいただき、それをニーズとして捉えています。
※メーカー製品の流通・販売を担う販売代理店

 一方、ものづくりをする立場として、パネルや新しい仕様、色の規格といった技術トレンドもつねにキャッチしています。そうした技術トレンドと、ディストリビューターさんから聞いたニーズなどを組み合わせて、何が一番バランスのいい製品になるのかを考えています。パズルみたいな感じですね(笑)。

 「こんなものが欲しい」という要望をそのまま作れば商品になるかというと、そんなことはありません。世の中のトレンドに合わなかったり、ものすごく高くなったりしてしまうこともあります。「技術トレンドに乗せながら、日本のニーズをどう拾うか……」それをしっかり考えないと、コストパフォーマンスのいい商品にはなりません。

--山下さんのような開発側から「この技術を入れたい」と提案することもあるのでしょうか?

山下氏:ありますね。当然、技術者として、新しい技術には惹かれますが、新しいものをつねに真っ先に追い求めればいいわけではありません。コスト面など、いろいろな問題がありますから。

 その一方で、既存技術の中でも、開発の視点から「こういう機能を入れたら、お客様に便利に使ってもらえる」という提案を企画側にすることはあります。それが実際に製品の機能として入ることもあります。

「壊れない、映る」は当たり前。だからこそアピールするのが難しい

--私は30年以上アイオーデータの製品を見てきましたが、「真面目」「信頼できる」というイメージがあります。ものづくりで最も大切にしていることは何でしょうか?

寺前氏:会社として一番大事にしているのは、安全性、安心感、安定性だと思っています。モニターに限らず、我々には独自の品質基準があります。それが海外ベンダーさんの基準と合わないときは、いろいろ直してもらったり、どうするか議論を重ねます。

 また、日本の会社として、日本人ならではの気配りのようなものを製品に入れることも意識しています。

--品質の高さを実感できる具体的なエピソードはありますか?

寺前氏:オフィス向けでは1,000台、2,000台、場合によっては1万台規模の案件もあります。そういう大量導入では、不良率がはっきりとわかります。

 以前、とあるゲームメーカーさんのイベントで一気に600台ぐらいのディスプレイを納品したことがあるのですが、1台も不良が出なかったのは弊社だけで、とても感謝されました。予備部材も入れていましたが、全台ちゃんと電源が入り、不良品がひとつもなかったそうです。

 100台設置して、10台、20台が映らないとなれば大変です。そういうことが少ないので、一緒にお仕事をすると、その後も「来年もぜひ」と言っていただけることがありますね。

--出荷前のチェックは全台行っているのでしょうか?

寺前氏:工場ベースでの確認も含め、全台しっかりやり、エージングも全台実施してから出荷しています。もちろん輸送中のトラブルなどもあるので、不良を完全にゼロにはできませんが、基本的には全台確認しています。

 ただ、お客様にとって「壊れない」「映る」というのは当たり前のことなんですよね。だから、それをどうアピールしたらいいのかは、我々にとって非常に難しいところです。

--2,000万台まで支持され続けてきた最大の理由は、やはりその品質にあるのでしょうか?

寺前氏:やっぱり、壊れないという部分を支持されてきたと考えています。

 半年ほどで壊れるものは二度と買いたくないですよね。機能や価格、新しい製品を、スピード感を持って発売することももちろん重要ですが、とにかく壊れないこと。何年も使っていただけること。ディストリビューターさんやエンドユーザーさんに迷惑をかけないこと。それが積み重なって、信用につながるのだと思います。

リモコンやスピーカーにも表れる「日本人ならではの気配り」

--国内と海外では、ディスプレイに求められるものも違うのでしょうか?

寺前氏:ゲームをするという意味でのメインのニーズは似ています。ただ、日本のお客様は価格に敏感だと思いますし、使い勝手にもこだわりますね。

 たとえば、うちのゲーミングモニターにはリモコンが付いているモデルが多いです。人によっては必要ないかもしれませんが、日本人ならではの気配りを、そういった使い勝手のよさで表現できればと考えています。リモコンを付けるには金型も必要ですし、海外向けであればいらないという判断になるかもしれない。それでも我々がこだわっている部分です。

  • 代表的なゲーミングモニター「GigaCrysta S」

    代表的なゲーミングモニター「GigaCrysta S」

山下氏:スピーカーを搭載しているモデルが多いのも特徴ですね。他社のゲーミングモデルではスピーカーがない製品も多いですが、我々はまず音を鳴らせるようにしています。

寺前氏:ゲームによってはほぼ100%ヘッドホンを使うものもあるので、「本当にいるのか?」と悩むことはあります。ただ、まずは我々の製品ひとつで完結できるようにしたい、というのはこだわりかもしれません。

--実際にユーザーの要望から生まれた機能には、どんなものがありますか?

寺前氏:昔でいうと「ブルーリダクション」(ブルーライト低減機能)ですね。「入ったらうれしい」と言われたので搭載しました。

 最近ではスタンドの高さ調整幅です。ノートPCと組み合わせて使うお客様から「ノートPCのディスプレイより上まで上げられるようにしてほしい」という要望がありました。そこで、転倒安定性を確保しつつ、高さの調整幅を広げました。そのため、スタンドがだんだん大きくなってしまうんですけどね(笑)。

 一部モデルでは、調整できるスタンド自体にVESAマウントの穴を設け、小型PCを取り付けられるようにもしています。

山下氏:他のモデルでは、ファームウェア更新用のUSBポートに常時給電機能を持たせています。ファームウェアを更新しないときは使われないポートなので、ワイヤレスディスプレイアダプターなどへの給電にも使えるようにしたわけです。これもユーザーの要望を取り入れた例ですね。

法人では「大量に入れても、手間がかからない」が価値になる

--法人市場では、アイオーデータ製品のどんなところが評価されているのでしょうか?

寺前氏:先ほどの話にもつながりますが、大規模導入のときに手間がかからないことは高く評価いただいていると思います。不良があまり出ないということですね。

 また、ノートPCをディスプレイの下に置きたい、高さを調整して使いたい、といった要望も法人のお客様からいただいていました。

 法人向けには「BizCrysta」というシリーズも展開しています。USB Type-Cを中心に、LANコネクターなどを備え、ドック機能を持たせたディスプレイです。こうした製品は法人市場をメインに提案しています。

「期待を裏切らない」ものづくりを続ける

--2,000万台という節目を経て、これからユーザーにどんな製品を届けていきたいですか?

寺前氏:いまディスプレイ事業に携わっていると、お客様からの期待値が高いと感じています。そこを裏切らないものづくりをずっと続けていきたい。それが一番ですね。日本のお客様ならではの期待値を守っていけるようにする、ということがお客様への約束だと考えています。

山下氏:解像度やリフレッシュレートといった基本機能を追いかけるのは当然です。ただ、それだけにとらわれず、「他社にはないけど、アイオーだったらこういう機能が入っていて便利に使える」と感じてもらえるものづくりを、今後も実現していきたいと思っています。

--2,000万台の先に、目指しているものはありますか?

寺前氏:社内では「日本らしさ」であったり、「ジャパンクラフトマンシップ」みたいな言葉をよく使うんですが、そういったよさを海外の皆さんにも感じてもらえるように、どのように価値を高めていくか。それを今後のテーマにできればと思っています。

私たちは、これまで製品づくりを何より大切にしてきました。でも、本当にいいと思えることを突き詰めていけば、皆さんに期待を持って買っていただける製品を作り、その期待どおりに使っていただけるのではないかと思っています。

【エピソード募集キャンペーン開催!】2,000万台の先にある、あなたの物語を教えてください!

今回、累計出荷2,000万台達成を記念して、皆さまとアイオーデータのディスプレイにまつわるエピソードを募集。「仕事でずっと使ってきた」「初めて買ったディスプレイだった」など、皆さまの思い出をぜひお聞かせください。

ご応募いただいたエピソードの中から選ばれたものは、イラスト化してマイナビニュースで紹介予定です。さらに、イラスト化するエピソードに選ばれた方には、 モバイルディスプレイをプレゼントいたします!

賞品:フルHD対応 14型デュアル(2画面)モバイルディスプレイ LCD-YC1412DX
エピソード募集期間:10月31日(土)まで

皆さまのご応募をお待ちしております。

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