シャープは、KDDIおよびセコムとともに、経済産業省が実施する「LIFE UP プロモーション」に参画。家電などから発信される生活データを活用したサービスの利用契約を行った利用者に対して、インセンティブを提供すると発表した。また、KDDIおよびセコムは、生活データを活用して、留守宅の子どもや、離れて暮らす家族などの日常的な見守りサービスを10月1日から開始する。

シャープのIoT家電の利用で、ポイントが貰える

「LIFE UP プロモーション」は、経済産業省の平成30年度補正予算である「生活空間におけるサイバー/フィジカル融合促進事業費補助金」により実施されているもので、IoT家電やIoT機器から収集する生活データを活用したサービスの利用契約を行った利用者に対して、ポイント、ディスカウントなどの特典を与え、ユーザー体験の創出を促進することになる。

なお、シャープを幹事社としてグループのほか、大阪瓦斯、キーウェアソリューションズを幹事社とした3つのグループがあり、それぞれサービスを提供する。1カ月以上のサービス契約やデータ提供を行うと、インセンティブを受けられる。対象期間は、2019年10月1日から2020年1月26日まで。

今回のシャープコンソーシアムが実施するLIFE UP プロモーションには、KDDI、セコム(セコムトラストシステムズ)、Tsumug、静岡ガス、中部テレコミュニケーションの7社が参画し、生活データを活用したサービスを提供する。シャープとKDDIが生活データを取り扱うプラットフォーム事業者となり、シャープの家電機器とKDDIのデバイスが対応することになる。

  • 今回のコンソーシアムの概要

具体的には、クラウドに接続されたシャープのスマートライフ家電の生活データをKDDIおよびセコムに提供。KDDIおよびセコムはその生活データを活用し、留守宅の子どもや離れて暮らす家族などの日常的な見守りサービスを、10月1日から開始する。

シャープでは、AIoTに対応したスマートライフ家電から収集した生活データをもとにしたサービス「COCORO+」を提供している。「AIoT」とは、AIとIoTを組み合わせ、あらゆるものをクラウドのAIとつなぎ、人に寄り添う存在に変えていくという同社のビジョンのことだ。

  • 家電のデータを収集し適切なサービスを提供する

たとえば、ヘルシオの調理履歴から、家族の好みや習慣を踏まえた献立提案や調理提案などを行っており、薄型テレビ、冷蔵庫、空気清浄機、洗濯機、ロボホン、ペットケアモニターなど、11カテゴリーの製品をAIoT化している。今回は、スマートフォンとHEMSを除く、9カテゴリーの機器を対象にキャンペーンを実施する。

キャンペーン対象の製品を購入し、対象のCOCORO+サービスを1カ月間利用すると、キャンペーンに参加でき、インセンティブが受けられる。インセンティブの内容は後日明らかにされる。

  • 9カテゴリーの機器を対象にキャンペーンを実施

なお、シャープは、10月15日~18日(金)まで、千葉県千葉市の幕張メッセで開催される「CEATEC 2019」の同社ブースで、LIFE UP プロモーションについて展示する予定だ。

KDDIとセコムの見守りサービスと連携

一方、この取り組みのなかで、KDDIが提供している「au HOME / with HOME」と、シャープのスマートライフ家電を連携する。

「au HOME / with HOME」では、カメラやセンサーなどを搭載した対応デバイスを通じて、ペットや子供の様子を、外出先のスマートフォンから動作検知できるようにしているほか、外出先から家電を遠隔操作できるようにしている。今回の連携により、シャープのAIoTに対応したテレビ、エアコン、空気清浄機、冷蔵庫などの稼働状況が把握できるようになり、日常生活に沿ったきめ細やかな、家電連携見守り機能を新たに提供する。au HOME /with HOMEアプリで、シャープとKDDIの双方の機器の一元管理もできるようになる。

  • KDDI「au HOME / with HOME」のサービス

さらに、セコムの「みまもりホン」サービスとも連携する。同サービスは、高齢者や持病を持つ人を対象にした安否確認・救急時対応サービスで、専用端末の救急ブザー用ストラップを引っぱると、セコムが駆けつけたり、看護師と話ができたりするものだ。

そして、新たにシャープのスマートライフ家電の生活データを活用した「テレビみまもりオプション」を用意。セコムみまもりホンアプリを利用することで、テレビのON/OFF状況のデータをもとに、離れて暮らす家族の様子を見守ることができる。

  • セコム「みまもりホン」のサービス

シャープ IoT事業本部プラットフォーム事業部プラットフォーム事業推進部の六車智子課長はサービス開始にあたり、「テレビのON/OFFデータを、在宅情報や生活習慣の判定などに意味づけし、サービスに利用可能なデータとして高次化する。そして重要なのは、ヒトと機器とサービスが連携するという点。単にデータを活用するだけでなく、ヒトによるサービスも組み合わせることに意味がある。IoTを生活に応用することで、社会課題や生活課題が解決することができる。新たなサービス展開の先駆けになる」と意気込む。

COCORO関連のサービスを事業拡大するための起爆剤に

シャープは、COCORO+の提供するサービスが、生活を豊かにしたり、家事に関わる時間を短縮したりといったこれまでの取り組みに加え、他社との連携によって、サービスの幅を拡大できるというメリットに期待する。また、シャープのAIoTプラットフォームの活用範囲を他社に広げる取り組みにもつながる。

シャープでは、「COCORO LIFE サービス事業」を分社化する計画を掲げており、今回の取り組みは、COCORO LIFE サービス事業の拡大に向けた布石にもなるといえよう。

なお、インセンティブの内容は後日発表される予定だが、参考までに大阪瓦斯が幹事社となっているLIFE UP プロモーションでは、アプリの利用を開始したユーザーに対して、5,000円分のAmazonギフト券をプレゼントしており、シャープコンソーシアムでも、こうした形での提供が想定される。

「生活空間におけるサイバー/フィジカル融合促進事業費補助金」では、参画する企業がユーザーに対して付与するインセンティブのうち、補助上限額を1万円とし、これを補助率の3分の2以内としている。そのため、メーカー側では3分の1の補助率での付与が可能であり、5,000円の上限額を設定できる。つまり、最大で1万5,000円相当のインセンティブの設定が想定されるのだ。

10月1日からの10%への消費増税が実施されるが、インセンティブが1万5,000円となった場合、シャープの試算によると、「75万円の商品購入時の増税額に相当する」としており、「消費増税分の2%以上の効果があると考えている」とする。

今回の「LIFE UP プロモーション」は、IoT家電の導入促進や、生活データを活用した新たなサービスの創出、それを実現するための異業種連携、そして、利用者へのインセンティブの提供による生活データの収集と新サービスの利用促進といった側面を持つ。

IoTが生活課題をどう解決していくのか。その道標になることを期待したい。