「ディストピア飯」というジャンルがある。
「何らか文明崩壊により食文化が終焉した近未来で出て来そうな飯」という設定で、アルミプレートにゼリー飲料や固形栄養食、謎のペーストや錠剤などが盛られている飯のことである。
全く美味そうに見えないが、これらを「チッ今日も合成肉か…」「上の連中は米に卵をかけてるって噂だぜ?」と毒づきながら、ウイダーインのキャップを口で開けるのがクールなのだ。
言わばイメージプレイである。
これは自らやりたくてやっていることであり、イメクラに入店する客も「ディストピアで女性上官にウィダニーを強要される脱走兵という設定でお願いします」という希望を持ってきているのだ。
しかし、普通の電車と思って乗ったのに「あなた以外全員痴女の痴漢電車です、どうぞ」と言われてもそんなに嬉しくないだろうし、むしろ「いきなりこっちが望んでないプレイに巻き込むな」と思うだろう。
だが、牛丼屋のすき屋が「急に客をディストピアプレイに巻き込みだした」と話題になったそうだ。
しかし、牛丼をミキサーにかけたものや、牛丼味の固形ブロックを提供し始めたというわけではなく、ただ店内提供の商品を、持ち帰りのプラ容器に入れて提供しだしただけのようである。
これに対しディストピア飯愛好家中心に「こんな有機物丸出しでディストピア飯とは片腹痛い」という炎上が起こったかどうかは不明である。
しかし一部で「餌感が強すぎる」そして「温かみがない」「ディストピア」などの批判があがったらしいが、本当にそんなことで怒っている奴がいるのか不明という、未だかつてなくぼんやりしたトピックになっている。
ちなみに「ディストピア」とは「理想的な社会の対義語で、不幸や抑圧が支配する未来社会を描いた概念」という意味であり、ニュースの感想によく出てくる言葉なので「何でも『ディストピア』とコメントしてればいいと思っている勢」が一定数いそうな気もする。
スタバが紙ストローになった時に批判されたことがあったが、意味が感じられない環境保護活動にだけでなく、「スタバまで来て便所紙の芯とキッスしなきゃいけないのか」という、何故他のチェーンカフェより割高店に来てこんな目に感に怒っている人も多かった気がする。
ただ、すき屋のプラ容器に対し、Xで文句を言ったところで「ワンコインの飯に何を期待しているのやら」「最初から餌だろ」「すき屋に温かみww」など、逆に煽られる気しかしないので愚痴る気にもならない。
ただ、店舗で食べる場合、店舗でのサービス料込みの値段になるため、今まで食器で食べていたものが、プラ容器になったことで「サービス大幅ダウン」と感じる人もいるのかもしれない。
しかし、物価高でどの企業でも値上げや、値上げを抑えるために、「みんな実は5個入りは多いと思っていた!」などと無茶なことを言って5個入りラーメンを3個に減らすなど、量を減らしたり、サービスを簡易化したりしている。
すき屋のプラ容器も、お前ら貧乏人に出来るだけ安価でたくさん餌を食わせてやるためだ、と言われたら、自然環境のためと言われるよりは納得できるし、「みんな実は牛はいらないと思ってた!」と言われて汁をかけただけの飯を出されるよりはプラ容器で牛丼を出された方が良い。
お皿が欲しいなら魯山人に焼いてもらえばいいじゃない(ハプスブルク並感)
ところで「温かみがない」というコメントだが、本当に温もりを求めてすき屋にきていた人間はいるのだろうか。
確かにおふくろの味を謳っていた人情食堂風の店が急にプラ容器になったら、「子供に対する一切の期待を捨て自分の人生を歩むことを決めた母さんの味」になり、コンセプトが変わってしまう。
しかし、ファストフードは安くて速いのが売りである。むしろタッチパネル化やロボット導入など、温もりは廃す方向になっている。
やはり「温かみがない」というのは、「お客様に対する敬意が足りないんじゃないか」という嫌味を嫌味に聞こえないように言おうとして、これ以上なく嫌な感じになっただけだろう。
しかし、我々コミュ症が「WEB予約できない店には行かない」という不退転の決意で、人との接触を拒んでいる一方で、メールフォームやAIチャットを無視し、コールセンターに直電する人もいるし、むしろ人と話がしたいがために、意味もなくかける人もいるらしい。
よって、飲食店などの店に、人の温かみを求めている人もいるのかもしれない。
スーパーもセルフレジを導入したら客が減ったという話もある。
あれは歴戦のRL(レジレディ)に比べ、自分のレジ作業がトロすぎるためため、大量の買い物をするスーパーでセルフレジは時間がかかって面倒くさい上、労力がかかるわりに割引などの利点が何もないせい、と思っていたが、もしかしたらRLたちとの交流がなくなったせいなのかもしれない。
しかし、店に温かみを求める人間がいる一方で、コンビニ店員に「いつもありがとうございます、きょうはからあげクンいいんですか?」と、温かみを見せられた瞬間、二度とその店にはいかないも者もいる。
店は店だ、サービスを求めるのはいいが、温かみは別で探したほうがいい。