Google Pixel Watchが発売された。2019年に買収したFitbit社のテクノロジーを取り入れ、Googleのハードウェアとしては初のスマートウォッチ製品となる。

発売は2022年10月13日だったが、この記事を書いている時点ではページを開いてもウェイトリストに登録することしかできず、入手するにはしばらく時間がかかりそうだ(編注:2022年10月18日現在はウェイトリストが解除され、購入できるようになっている)。

  • Googleの「Pixel Watch」(左)と、Mobvoi社の「TicWatch Pro 3 Ultra GPS」(右)。バージョンは違うが、どちらもWear OSを搭載している

    Google初のスマートウォッチ「Pixel Watch」(左)と、Mobvoi社のスマートウォッチ「TicWatch Pro 3 Ultra GPS」(右)。バージョンは違うが、どちらもWear OSを搭載している

ともあれ丸型ドーム状のデザインはとてもオーソドックスだ。黒基調のウォッチフェイスだとベゼルも意識しなくてすむので、なんだか未来的なイメージもある。

当たり前の話だがGoogle Pixel Watchはスマートウォッチだ。携帯電話がインテリジェントでスマートになったものがスマートフォンであるのと同様に、時計がインテリジェントでスマートになったものがスマートウォッチだ。バッテリが24時間しかもたないとか、何かしたいと思うたびに時計にアプリをインストールしなければならないとか、いろいろめんどうくさいことも多いが、これはスマホでも同じだ。

Pixel Watchは汎用的なコンピューターである

世の中にはスマートウォッチとかスマートバンドという似たようなカテゴリの製品が数多く流通している。これらのデバイスは「スマート」を冠してはいるが、Google Pixel Watchがこれらの製品と大きくちがうのは、汎用的なコンピューターであるという点だ。ハードウェアがあってOSが走り、アプリを稼働する。まさにコンピューターだ。

既存のスマートウォッチ/バンドはコンピューターであることを半分くらいあきらめている。どちらかといえば、スマートウォッチの通知専用ディスプレイ的な存在で、各種のセンサーが集約されているペリフェラル的存在だ。だからこそ何十日もバッテリで駆動できたりするわけだ。

Google Pixel WatchのOSはWear OS by Google 3.5だ。このOS用のGoogle Playが提供され、スマートフォンのGoogle Playと連動しながら、必要に応じてWear OS用のアプリを時計にインストールしていく。多くの既存スマートウォッチ/バンドがスマホで稼働するアプリの通知を表示するディスプレイとして機能しているのと、この点が大きく異なる。

これまでの構造と変わるWear OS

ちなみに、既存のWear OSデバイスは、数多くのベンダーから発売されているが、現時点でのGoogle Pixel WatchがWear OS by Google 3.5を搭載した最新デバイスだ。Fossilが今後アップデートを提供するようだし、Galaxy WatchのようにTizen OSがWearOSに統合されているパターンもあったりしてややこしいが、基本的には他社も順次、Google Pixel Watchを追うことになるだろう。

たとえば手元にはWear OSデバイスのカテゴリで評価の高いMobvoi社のTicWatchブランドの製品「TicWatch Pro 3 Ultra GPS」があるが、OSのバージョンを確認すると最新製品であるにも関わらずOSのバージョンは2.26だ。このバージョンのWearOSはスマホにインストールしたWearOSアプリからベンダーごとの専用アプリを呼び出して時計をコントロールする。

ところがGoogle Pixel Watchでは、いきなり「Google Pixel Watchアプリ」をスマホにインストールする。そして、時計のセンサーから得た活動データ等はスマホと時計双方のFitbitアプリとクラウドサービスが連携してまとめあげるようになっている。

つまり、Wear OS by Google 3.5は、2.xとは異なる構造になっていて、Wear OS by Google 2.xが稼働する既存の製品は、今後、順次3.5相当のバージョンに移行していくことになるのだろう。Google Pixel Watchはその先駆けだともいえる。ソフトウェアの構造としては2.xよりもシンプルだ。そもそもスマホ側にWear OSを名乗るアプリがあることが話をややこしくさせている。

時計に汎用コンピューターとしての使命を委ねたGoogle

独立したOSが稼働し、そこにアプリを入れて望み通りの処理をさせるコンピューターとしての時計と、スマホに接続したアプリの手足となって表示や活動量等のセンシングを行う周辺機器としての時計。両者の構造は大きく異なり、最終製品のコンセプトも違ったものになる。もちろんバッテリでの駆動時間の違いも大きなインパクトだ。

でも、エンドユーザーにとっては似たような時計に見える。認識の中にあるのは、その時計が自分にとって役にたつか役にたたないかの違いであり、おしゃれかおしゃれでないか、かわいいかどうかといったことと、長い時間バッテリがもつかどうかといった実利的なことだ。だからコンピューターとしての時計が同じ土俵で勝負するのはたいへんだ。

それでもGoogleは、時計に汎用コンピューターとしての使命を委ね、クラウドを介したサービス連携が当たり前の未来を目指す。未来としてはそちらのほうがおもしろそうではある。だからこそ目が離せない。