今年の1月に50周年を迎え、7月1日に社名を変更したアイオーデータ(旧アイ・オー・データ機器)。Windowsよりも前のPC-98時代からさまざまな周辺機器を世に送り出しており、アイオー製品にお世話になった人も多いはず。そこで、PC&デジタル業界で長年活躍してきたライターさんに、思い出に残っているアイオー製品を挙げてもらい、選んだ理由や気に入っていたポイントなど、当時のエピソードを振り返ってもらいました。さらに、そのアイオー製品を開発した“中の人”にも開発の裏話を聞いてみました。今回は、ライターのジャイアン鈴木さんです。
アイオーデータ様、50周年おめでとうございます。実は30年ほど前、誌面で大きな誤植をやらかし、御社に多大なご迷惑をおかけしたことがございます(ライバルメーカー様と社名を逆に掲載してしまいました……)。その節のお詫びも込めて、今回は思い出話をお伝えしたいと思います。
正確に記録が残っているわけではありませんが、それこそ「PC-9801」(ホントは「PC-286」ですが……)を購入した当時から、主にメモリーやハードディスクなどでお世話になってきました。特に外付けハードディスクは、御社製品を購入することが非常に多かったです。とはいえ、それら定番のPCパーツは、空気のように私のPCライフを支えてくれた存在。トラブルが皆無だったために、正直あまり個々の記憶としては残っていません。
そこで今回は、近年で特に深くお世話になったビデオキャプチャーユニット「GV-HDREC」についてお話しいたします。
本製品は、私がライター活動と並行して映像レビューの仕事も始めた際、本当に愛用させていただいた1台です。まずPCレスで単体録画できる仕様が極めて魅力的でした。さらに、パソコンだけでなくゲーム機やHDMI出力のある各種ガジェットのスクリーンショットを撮影するのにも、大変重宝いたしました。1年ほど前にも小型ゲーム機の画面写真を撮影する際に利用しており、いまでも現役の機材として手元に残っています。
アイオーデータさんは、こうした少しユニークで尖った周辺機器を世に送り出してくれるメーカーとして、独自の存在感を放っていると個人的に感じております。
今回の寄稿にあたり、「製品の開発エピソードなどについてコメントをいただけるかもしれない」と編集部から伺っているのですが、実は当時からずっと気になっていることがございます。このGV-HDRECは、本当は本体にディスプレイが搭載される予定だったのでしょうか? 本体の左側にあるベゼルのようなスペースは、いかにも画面が配置されるためのデザインに見えます。もし搭載されていたら価格が高くなっていただろうと思いますし、最終的にディスプレイなしで発売された合理性は理解できます。ただ、本製品を見るたびにどうしても湧き上がってくる疑問ですので、差し支えなければご回答いただけますと幸いです。
GV-HDRECよりも前に出た「アナ録 GV-VCBOX」というアナログキャプチャ製品には、映像確認用のディスプレイが搭載されていました。GV-HDRECでは発熱などの問題もあり、ディスプレイ搭載は見送られました。ディスプレイが非搭載であることが分かるように、あのスペースにロゴを印刷することも検討したのですが、さまざまな事情で実現しませんでした。
ただ、当時も多くのユーザーから同様の意見を多くいただいたので、この部分にユーザー自身が好きなデザインのシールを貼って楽しめるようにしよう!というアイデアに至り、専用のステッカーを作成・印刷できるページ「お好みの画像でオリジナルのステッカー台紙をつくろう!」を用意しました。
GV-HDRECは、今後もなにかの折に活躍してくれると考えておりますので、これからも手元に置いて大切に使わせていただきます。御社の今後ますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。これからもよろしくお願いいたします。
【Q1】なぜゲーミングキャプチャー市場に参入したのでしょうか?
かつて、YouTubeでゲームのプレイ動画を投稿・配信する文化が広がり始めたころ、これからはゲーム映像を手軽に録画できる機器へのニーズが確実に高まると感じたそう。しかし、当時主流のPC用キャプチャー製品は、パソコンへの接続や専用ソフトの設定が必要で、初心者にはハードルが高いという課題がありました。そこで「誰でも簡単にゲームプレイを録画できる専用機」が必要だと考えたそうです。
当時、すでに製品化していた、アナログ映像を録画できるキャプチャーユニット「アナレコ GV-SDREC」のノウハウを活かし、HDMI入力に対応させたスタンドアローン型のキャプチャーユニット「GV-HDREC」を開発。パソコンを使わずに、HDMI映像をボタンひとつでUSBメモリーやSDカードへ録画できる録画できるシンプルさは、ゲームユーザーにとって大きな価値となりました。
【Q2】企画段階で特にこだわった点や、「これだけは実現したい」と考えていたことはありましたか?
一番こだわったのは「簡単に高画質で録画できること」にありましたが、ゲーム用途ならではの課題としては「遅延」は絶対に避けなければならないポイントでした。特に、シューティングゲームや格闘ゲームでは、わずかな表示遅延でもプレイに大きな影響が出ます。そのため、通常録画だけでなく、映像を遅延なくモニターへ出力できる「パススルー機能」を搭載しました。一方で、録画設定や再生には本体のUIも必要になるため、UI表示とパススルーをいかにストレスなく切り替えられるかにも力を入れました。
もう1つ、この製品ならではのこだわりが「再生機能」です。実は、デジタルカメラの技術がこの製品には取り入れられており、録画した映像を細かく確認できることが強みでした。スロー再生はもちろん、60fpsの映像を1フレームずつコマ送りできる機能も搭載しています。
格闘ゲームであれば、「どのタイミングで相手の攻撃を避ければよかったのか」「どの瞬間に反撃できたのか」といったプレイの研究にも活用できます。単なる録画機ではなく、自分のプレイを振り返り、上達するためのツールとしても使ってもらえる製品にしたいという思いがありました。
【Q3】発売後の反響で印象に残っていることはありますか?
「カズチャンネル」のカズさんや吉田製作所さんなど、多くのYouTuberの方にGV-HDRECをご紹介いただいたことで、多くの方に製品を知っていただくきっかけになりました。
忘れられないのが、当社の40周年記念イベントでのできごとです。会場では、プロゲーマーによる『ストリートファイター V』の対戦をGV-HDRECで録画し、その場で再生しながら解説する企画を実施しました。録画した映像をすぐに再生し、決定的なシーンでは一コマずつコマ送りで確認すると、「ここでこんな駆け引きがあったのか!」と会場全体が大いに盛り上がりました。
私自身も、企画担当として壇上で製品を紹介しましたが、単にキャプチャー機器として評価されたというよりも、「ゲームを録画して振り返ることの楽しさ」を多くの方に体験していただけたことが印象に残っています。「自分もこれで練習してみたい」「買って使ってみたい」と直接声をかけていただけたことは、企画担当者として本当にうれしいできごとでした。
ハードウェア・ソフトウェア開発においては、使いやすさと低遅延を実現するために、操作時と録画時に映像部分の内部接続構成を変更する機能を設けました。操作時はSoC経由でUI付きの映像出力とし、録画時はHDMIパススルーにする仕組みです。
開発で苦労したのは、録画時に色を正確に再現することですね。デジタル信号で色味が変わるとは思っていませんでしたから。
発売後に、サポートへの問い合わせやSNSなどで、映像の色味へのご意見が寄せられました。ピクセルごとにデータのRGB値を確認するなど、手探りで色味の状態を確認し、チューニングを繰り返し、納得できるまで改善を重ねました。問題を解決したファームウェアをリリースしたことで、ユーザーからは高い評価をいただきました。
当時は苦労しましたが、初めてのHDMIキャプチャー製品でこの課題を経験できたことで、以降のHDMIキャプチャー製品の開発時に同様の問題を未然に防ぐことができました。



