モバイル通信の体感品質を調査する米Opensignalは2026年10月28日、「日本モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート(2026年10月)」を発表し、オンラインで記者会見を開いた。NTTドコモ/au/ソフトバンク/楽天モバイルの4社をさまざまな観点から比較したこのレポートでは、auが18部門中10部門で単独首位となった。会見では、楽天モバイルの契約1,100万回線突破を受けた分析や5Gスタンドアローン(5G SA)の性能についてのレポート、衛星との直接通信(D2D)の動向も紹介された。

  • モバイル・エクスペリエンス・アワード 18部門の評価

    モバイル・エクスペリエンス・アワード 18部門の評価 ©Opensignal Limited

Opensignalは日本市場のレポートを毎年4月と10月の年2回公表しており、今回のレポートは、2026年7月1日から9月28日の調査期間に収集された実ユーザーの測定データに基づくもの。通信品質/ネットワーク性能/アプリ・エクスペリエンス/カバレッジの4分野にわたる18の指標で各社を評価した。評価にあたっては主に各社のメインブランドを対象としており、原則としてサブブランドは含まない。ただし、NTTドコモについてはeximo/ahamo/irumoの各料金プランも集計対象となっている。

auが10部門で首位。各社の得意分野が鮮明に

auは通信品質の2部門と、アプリ・エクスペリエンスの8部門すべてで首位の評価を受けた。通信品質の「信頼性」は964点(100~1,000点)で、同部門の首位は5回連続となる。また「一貫した品質」はテスト完了率86.9%だった。

  • 「信頼性」の評価

    「信頼性」の評価 ©Opensignal Limited

NTTドコモは「カバレッジ」「5Gカバレッジ」「ネットワーク利用率」の3部門と「5Gダウンロード・スピード」で首位となった。「カバレッジ」「5Gカバレッジ」は、人々が生活し、働き、移動する場所におけるネットワークのカバー範囲を評価する指標、「ネットワーク利用率」はユーザーが4G/5Gのいずれかのネットワークに接続していた時間の割合を示す。「5Gダウンロード・スピード」も158.8Mbpsで首位を守ったが、Opensignalは「auとソフトバンクが追い上げている」と指摘している。

  • 5Gカバレッジの評価

    5Gカバレッジの評価 ©Opensignal Limited

ソフトバンクは「ダウンロード・スピード」と「5G利用率」で首位だった。ダウンロード・スピードは71.5Mbpsで、前回から約10%速くなった。5G対応端末と5G契約を持つユーザーが実際に5Gに接続していた時間の割合を示す5G利用率は36.1%で、全国8地域のすべてで単独首位となっている。なおこの指標については、全国評価では4社とも前回調査よりも利用率が上昇している。

  • 5G利用率の評価

    5G利用率の評価 ©Opensignal Limited

楽天モバイルは「アップロード・スピード」と「5Gアップロード・スピード」の2部門を、他社を大きく引き離して獲得した。地域別でも、全国8地域すべてでこの両部門の単独首位となっている。

  • アップロード・スピードの評価

    アップロード・スピードの評価 ©Opensignal Limited

地域別の首位獲得数でもauが最多で、全国8地域で単独首位39件、同率首位49件を獲得した。「信頼性」やアプリ・エクスペリエンスの大半の指標では、同率首位を含め全8地域で首位となっている。

  • 通信品質の地域別分析

    通信品質の地域別分析 ©Opensignal Limited

  • アプリ・エクスペリエンスの地域別分析

    アプリ・エクスペリエンスの地域別分析 ©Opensignal Limited

ソフトバンクは「僅差の2位」が多く、周波数戦略の違いが差に

会見では、以前はauと競り合っていたソフトバンクが今回首位獲得数で差を付けられた理由を問う質問が出た。OpensignalのRob Lerner氏は、個別の指標の詳細を見ると、ソフトバンクは首位にはなっていないもののデータ通信に関わる多くの指標においてauと僅差の2位につけており、首位獲得数ほどの差はないという。

そして差が生じた背景として挙げたのが、周波数の使い方の違いだ。ソフトバンクは5G SAに加え、ローバンドの周波数帯を5G SA/NSAの両方で積極的に使い、5G利用率では明確に首位に立っている。一方のauは、ローバンドの比率がソフトバンクほど高くなく、Cバンドを5Gでより多く使っている。Lerner氏は、「そのバランスと戦略が、現時点ではauに優位をもたらしているようだ」と述べた。

プリンシパルアナリストのRobert Wyrzykowski氏は、同社が最近発表した「5G Global Mobile Network Experience Awards 2026」にも触れた。このレポートにおける多くの指標でauとソフトバンクはどちらも世界の上位に入っており、「国内では激しく競っているが、世界的に見れば2社ともワールドクラスの性能を出している」と評価した。

5G SAは速く低遅延、だが接続時間はわずか3.8%

会見では、日本の5G SAの性能を分析した別のレポート「5G Standalone Performance in Japan 2026」についても紹介された。このレポートが対象としている2026年4月1日から6月29日の間、5G SA接続時の測定結果は、5G NSA接続時と比較して、速度/品質/遅延のいずれでも優れていたという。

  • ダウンロード・スピードと一貫した品質における5G NSAと5G SAの比較

    ダウンロード・スピードと一貫した品質における5G NSAと5G SAの比較 ©Opensignal Limited

Opensignalは、5G専用のコアネットワークを使う5G SAは4Gのコアネットワークを使う5G NSAよりも低遅延を実現しやすく、ビデオ通話やモバイルゲームなどにメリットがあると説明する。屋内での優位性については、低い周波数帯の活用も要因として挙げた。5G SAではネットワークスライシングなどの機能にも対応できる。

ただし、5G SAの利用はまだ広がっていない。前述の調査期間において、Opensignalのユーザーが5G SAに接続していた時間の割合は3.8%にすぎず、5G NSAの52.3%、非5Gの43.8%とは大きな開きがある。

5G SAの提供エリアが全国各地に広がっているにもかかわらず接続時間が伸びていない理由については、Wyrzykowski氏は端末の普及を、Lerner氏は周波数の使い方を、それぞれ要因として挙げた。5G SAにつなぐには対応する端末が必要だが、それがまだ十分に普及しておらず、未対応の端末を使い続ける利用者はまだ多い。また周波数についてLerner氏は、「一部のオペレーターはCバンドなどの高い周波数帯に力を入れている。この周波数帯は容量こそ大きいが、カバレッジがそれほど広くなく、5G SAの電波が届く範囲を限定してしまうことがある」と説明した。

楽天モバイル、乗り換えの13%を獲得し品質も維持

またOpensignalは、楽天モバイルの契約回線数が2026年9月に1,100万回線を超えたのを受け、同社の加入者獲得とネットワーク品質を分析したレポートも公表している。NTTドコモ/au/ソフトバンクの3キャリアは2025年にいずれも料金を引き上げ、契約者数のシェアを落としている一方、楽天モバイルは料金を据え置いてシェアを伸ばしている。

Opensignalによる加入者分析「Subscriber Analytics」によると、キャリアを乗り換えたユーザーのうち13%が楽天モバイルを選んでいるという。約6~7%という契約回線数シェアを考えると、乗り換え市場における存在感は相対的に大きい。大手3社のメインブランドとの間の乗り換えでは、転出1件に対して転入1.83件を獲得している。ただしKDDIのpovoとの間では転出/転入がほぼ拮抗しており、楽天モバイルからの転出1件に対して楽天モバイルへの転入が0.98件と、わずかながら楽天モバイル側の転出超過になっている。

  • 楽天モバイルの加入者獲得とネットワーク品質を分析したレポートのハイライト

    楽天モバイルの加入者獲得に関する分析結果のハイライト。市場シェアの「+21.7」が21.7ポイントのシェア上昇を意味しているわけではない点に注意。この数字は、Opensignalが加入者の獲得・流出状況を分析するために用いている指数の上昇を示している ©Opensignal Limited

楽天モバイルの加入者獲得を後押ししている要因の一つが料金の安さだ。「Rakuten最強プラン」はデータ利用量が月間20GBを超えても月額3,278円(税込み)で、他キャリアのデータ無制限プランの平均料金(月額7,800円超)とは月約4,500~5,000円の開きがある。ただし、同じ価格帯のブランドに対しても転出1件当たり転入1.31件を獲得しており、Opensignalは「料金以外の要因も加入者獲得に寄与している」とみる。

新規参入のキャリアにとっては、契約数の増加に伴うネットワーク負荷への対応が試金石になる。楽天モバイルの「一貫した品質」評価は、2024年第3四半期の80.9%に対し、2026年第2四半期は81.1%と、契約数が大きく増加する中でもほぼ同水準を維持した。5Gの通信遅延や圏外率も改善しており、アップロード速度では他社を大きく上回っている。

通信遅延の改善は、楽天モバイルが2026年2月にRANインテリジェントコントローラー(RIC)の全国展開を完了した時期と重なる。Opensignalは、ソフトウェアを活用したネットワークの高度化と、実際のユーザー体感の改善が同時期に進んでいると指摘している。

KDDIローミング縮小の影響は「測定してから報告する」

現在楽天モバイルは、自社ネットワークを広げながらKDDIの国内ローミングへの依存度を徐々に下げている。質疑では9月末にローミングが大幅に縮小された影響についての質問があった。

Opensignalの調査は端末から見たエンドツーエンドの体感全体を測ろうとしているため、ローミング中の通信も分析の対象に含めている。ただし、今回のモバイル体感レポートの集計期間は9月28日までのため、10月からのローミング縮小の影響は含まれていない。10月のデータでは、楽天モバイルユーザーのローミング中の測定量がわずかに減ったというが、品質への影響についてLerner氏はは「憶測はしたくない。実際の体感を測定し、今後数カ月で変化があれば報告する」と述べるにとどめた。

衛星直接通信では日本が「フロントランナー」

今回はもうひとつ、スマートフォンが衛星に直接接続した場所を示す「D2D Satellite Map」も紹介された。このマップにおける地図上の点は、2026年1月以降に検出したD2Dの接続を表す。会見ではこのマップを実際に操作しながら、日本はD2Dが最も長く利用できる市場のひとつで「かなりのフロントランナー」だとWyrzykowski氏は説明した。

  • D2D Satellite Map

    D2Dの接続状況を示す「D2D Satellite Map」 ©Opensignal Limited

他に先行するのはアメリカ/チリ/オーストラリア/ニュージーランドで、カナダやフィリピンでも接続が確認できる。ヨーロッパはまだ少なく、スペインと英国でわずかに接続が見られる程度だという。

日本のキャリアのうち、ソフトバンクは衛星だけでなく成層圏通信プラットフォーム(HAPS)の実証を実施しており、2027年の商用化を目指しているが、記者からの「ソフトバンクのHAPSのような取り組みが海外にあるか」という質問に、Wyrzykowski氏は「世界のD2D関連の動きのほとんどは、StarlinkかAST SpaceMobile(いずれも衛星通信)との提携だ」と回答。そういった状況の中でHAPSに取り組む事業者としては、ドイツテレコムと英国の通信大手BTグループ(旧ブリティッシュ・テレコム)を挙げた。HAPSの導入を推進する団体「HAPS Alliance」には、フランスの通信大手オレンジ、スペインのテレフォニカ、イタリアのTIM(旧テレコム・イタリア)などのほか、中国やインドの事業者も加わっているという。