• 集英社ゲームズ vs 講談社ゲームラボ、何が違う?

こんにちは、ゲームライターの小川です。

今年の東京ゲームショウは、異業種からゲーム業界への参入が注目されました。

サンリオの「Sanrio Games」、東映の「東映ゲームズ」、どちらのゲームブランドも自社パブリッシングとして、ゲーム開発、販売を担っています。

特筆すべきは、2社ともハローキティや仮面ライダーなどの強力なIPを有していること。

これまでは、こういったIPホルダーがゲーム開発や販売に関わることは少なく、あくまで自社IPをライセンスとして貸し出すのが主流ではありましたが、昨今では「自社でリスクを取ってでも、面白いゲームをファンに届ける」という流れが生まれつつあります。

「面白いゲームを作る」の想いは共通しつつも、2社の方針は真逆です。

「Sanrio Games」は自社IPの表現を広げる機会として参入、現社長からの「エンタメ会社と言っているのに、ゲームがないなんてあり得ない」の言葉の下、サンリオキャラクターの魅力を引き出すための表現を追求するとのこと。

一方の「東映ゲームズ」は既存IPを使わず、新たなIPの創出と展開をしていく方針で、同社の中長期的なグローバル戦略を加速させる狙いがあります。

自社の既存IPの可能性を最大化するのか、ゲーム領域をIP創出の機会と捉えているのか、各社の展望と戦略の違いにも注目です。

そんな中、今回は、同じく異業種からの参入として、以前から注目されている、2つの出版社、集英社(集英社ゲームズ)と講談社(講談社ゲームラボ)に注目しました。

同社は2022年にもブースを出展していましたが、今年は大幅にパワーアップ、それぞれの特徴を活かした大規模ブースを展開していました。

まず、集英社ゲームズと講談社ゲームラボの違いは何でしょうか。

まず「集英社ゲームズ」は2022年創業の集英社100%出資の子会社、「集英社ゲームズ」という社名から「集英社のIPを次々とゲーム化していく会社」だと勘違いするかもしれませんが、実はそうではありません。

現状、集英社ゲームズが手掛けている10タイトルのうち、既存IPの作品は3タイトルのみ、他の7タイトルは完全新規です。

今回、東京ゲームショウ出展の2タイトルも、1本は既存IP(呪術廻戦)でしたが、もう1本は新規IPでした。

新規IPの『UN:Me』は不安をテーマにしたアドベンチャーゲーム。東京ゲームショウ2026では、日本初となる試遊と、体験型展示「不安回廊」が出展され、ビジネスデイにも関わらず60分待ちの大盛況でした。

このように「集英社ゲームズ」は漫画ではリーチできない客層を取り込み、漫画では生み出せない新規IPを創出することを目的としています。

一方「講談社ゲームラボ」は講談社内のプロジェクトです。

「集英社ゲームズ」が新規IPと作品にフォーカスした会社だとしたら「講談社ゲームラボ」はクリエイターにフォーカスした枠組みといえます。

出版社の方法論を、ゲーム作りに横展開、クリエイターのサポートを実現し、ゲーム業界での雇用創出を目的としています。

「講談社ゲームラボ」には、「ゲームクリエイターズラボ」と「ゲームクロスラボ」という2つの枠組みがあり、ゲームクリエイターズラボは、ゲーム開発を行うクリエイターの応募を受けて作品を審査、各クリエイターに最大1000万円の支援を行うというプロジェクトです。

2020年9月に発足し、2023年時点で、累計の応募総数は3,000件以上。東京ゲームショウ2026では、所属クリエイターたちが制作したゲーム、24タイトルが展示されていました。

単に開発資金を出してゲームを完成させるだけでなく、クリエイターに担当編集者が寄り添い、企画や制作を二人三脚で進めることで、クリエイターの「個性」を見つけ、それを作品として成立させ、ユーザーに届けるところまで並走するといいます。

まさに漫画家と担当編集者の関係性です。

このように集英社ゲームズと講談社の出展内容は、対極的でした。

集英社ゲームズは、明確に「新規IPの創出」を目的としており、これは「漫画→ゲーム化」といった従来のメディアミックスとは、逆の流れが生まれる可能性を持っています。近い将来、集英社ゲームズから誕生したゲームタイトルの、過去編やスピンオフが、週刊少年ジャンプで連載される日が来るかもしれません。

一方の講談社ゲームラボは、新規IPの創出よりも「クリエイターのスターを生み出すこと」を優先していますが、これはクリエイターのIP化が狙いであるとも解釈できます。真島ヒロ氏(『FAIRY TAIL』『EDENS ZERO』)、諫山創氏(『進撃の巨人』)、大今良時氏(『聲の形』『不滅のあなたへ』)、和久井健氏(『寄生獣』『ヒストリエ』)などの多くの漫画家を送り出してきた、講談社の強みとの連続性を感じるプロジェクトです。

  • 講談社IPの新作アクションゲーム『進撃の巨人3』の展示はコーエーテクモゲームスブースにあった

    講談社IPの新作アクションゲーム『進撃の巨人3』の展示はコーエーテクモゲームスブースにあった

最後に補足すると、今回、出展の無かった、集英社は「ゲームクリエイターズCAMP」というゲームクリエイター支援企画を擁しています。

クリエイター支援の点では、講談社ゲームラボとも近いのですが、やや異なります。

ゲームクリエイターズCAMPは、2021年4月20日にサービスを開始した、ゲームクリエイターのためのプラットフォームです。登録したクリエイター同士がコミュニケーションやコンテストの参加、開発スタッフ募集などができ、2025年6月時点で登録者数(会員数)は、9,000人を突破しています。

講談社ゲームラボ、ゲームクリエイターズCAMP、どちらも「漫画家と編集者のような関係を、ゲーム制作の現場にも適用できないか」という発想で立ち上がった枠組みでありながら、講談社は漫画の新人賞のような新人発掘のエッセンスを継承、集英社はクリエイター同士を繋げるコミュニティ作りに注力しており、それぞれ支援のアプローチが異なるのが興味深いところです。

インディーゲームが盛り上がり、生成AIのゲーム開発への活用が試される中、ますます個人クリエイターのゲーム開発は活発になるでしょう。

楽曲や漫画と同じように、ゲーム制作が自己表現の手段になった昨今、クリエイターのゲームづくりを支援する、各社の取り組みに注目が集まります。