HP OmniBook Ultra Laptop 14は、HPのプレミアムモバイルPC「OmniBook Ultra」シリーズの14型モデルです。QualcommのArm系プロセッサ「Snapdragon X2」を搭載したCopilot+ PCで、最大85 TOPSのNPUに加え、3K(2,880×1,800ドット)の有機ELディスプレイと最薄部7.3mmの薄型ボディを備えます。メモリはLPDDR5X、ストレージはPCIe 5.0対応SSD。持ち運びやすさと性能を高いレベルで両立させた一台です。
日本での発売は2026年4月中旬。Snapdragon X2 Plusを積む「アドバンス」モデルと、上位のSnapdragon X2 Eliteを積む「プログレッシブ」モデルの2構成が用意されています。今回はプログレッシブモデル(Snapdragon X2 Elite X2E-90-100、32GBメモリ、2TB SSD)をお借りしたので、その実力をじっくり見ていきます。
最薄部7.3mm、約1.27kgのアルミ筐体
まずは外観からチェックしていきましょう。
本体カラーは「ストーンブルー」の一色。青みを帯びた落ち着いたグレーで、光の当たり方によって表情が変わります。天面に据えた鏡面仕上げのHPロゴも、派手さを抑えつつ質感の高さを伝えるアクセントです。筐体は再生素材も使ったアルミニウム製。手にすると価格帯にふさわしい剛性感があり、天面を軽く押した程度ではたわみをほとんど感じませんでした。
薄さは本機の大きな見どころです。最薄部7.3mm、最も厚い部分でも10.7mm。閉じた状態を横から見るとエッジが鋭く、実物は写真で見る以上に薄く感じられます。
本体サイズは幅約311×奥行約215mmで、重量は実測1282.0g。公称の約1.27kgとほぼ一致し、14型で1.3kgを切る軽さです。この薄さと軽さなら、毎日持ち歩いても負担になりにくいでしょう。
ディスプレイは14.0型の有機ELパネルで、解像度は3K(2,880×1,800ドット)。アスペクト比16:10で縦方向に情報を広く表示でき、リフレッシュレートは最大120Hzに対応します。輝度は最大500cd/m²、色域はDCI-P3を100%カバーし、タッチ操作も可能です。有機ELらしく黒がしっかり締まり、発色も鮮やか。写真や動画を映すと強みがはっきり出て、画面の美しさは文句なしです。ただ光沢仕上げのため、明るい室内や屋外では映り込みが気になる場面もありました。
キーボードはバックライト付きのJIS配列で、Copilot+ PCらしくCopilotキーも備えます。打鍵音は静かで、周囲を気にせずタイプできます。キーストロークは浅めです。しっとりというより、少し前の薄型ノートを思わせるあっさりとした打ち心地でした。タッチパッドは面積が広く、クリック感を振動で返すハプティック方式。表面はガラス製とみられ、指すべりがよく操作しやすい印象です。ジェスチャーコントロールをオンにすれば、パッドの端をなぞって輝度や音量も調整できます。
生体認証は、上部ベゼルのIRカメラによるWindows Helloの顔認証に対応します。Webカメラは約500万画素で、AIを使った画作りも可能です。カメラには物理式のプライバシースイッチを備え、使わないときはレンズを物理的にふさげます。オンライン会議が多い人にも安心の仕様です。
インターフェースは、右側面にUSB Type-C×2、左側面にUSB Type-C×1とヘッドセット端子という構成です。3基のUSB Type-CはいずれもUSB4(40Gbps)対応で、映像出力やUSB PDでの給電にも使えます。一方で薄さを優先したぶん、USB Type-AやHDMIといった大型の端子は非搭載。有線機器や外部ディスプレイを日常的に使うなら、USB Type-Cハブや変換アダプターをあわせて用意しておくとよいでしょう。
ワイヤレスはWi-Fi 7とBluetooth 5.4に対応。底面には大きな吸気口と、Poly Studioブランドのクアッドスピーカーを備えます。
付属のACアダプターは、GaNを採用した65W出力のUSB Type-Cタイプ。出力のわりに小型にまとまっています。本体はUSB PDに対応するため、外出先では市販のUSB-C充電器やモバイルバッテリーからでも充電できます。
Snapdragon X2 EliteとAdreno X2-90の実力を検証
ここからはベンチマークで性能を見ていきます。
今回お借りしたプログレッシブモデルの構成は以下のとおりです。
- OS:Windows 11 Home
- CPU:Snapdragon X2 Elite X2E-90-100(Oryon Gen2、プライムコア12+コア6の18コア、最大5.0GHz)
- GPU:Qualcomm Adreno X2-90(CPU統合)
- NPU:Qualcomm Hexagon(最大85 TOPS)
- メモリ:32GB LPDDR5X(9,523 MT/s、オンボード)
- ストレージ:2TB PCIe 5.0 x4 NVMe SSD
本機の心臓部であるSnapdragon X2 Eliteは、QualcommがArmアーキテクチャで設計した新世代プロセッサです。X2E-90-100は、高クロックのプライムコア12基と電力効率に配慮したコア6基を組み合わせた18コア構成で、最大5.0GHzで動作します。AI処理を担うNPUは最大85 TOPS。Copilot+ PCの要件である40 TOPSを大きく上回る数字です。
Arm版Windowsというと、以前はアプリの対応が不安視されがちでしたが、状況はかなり変わってきています。ベンチマークソフトやOfficeアプリ、主要なWebブラウザはArmネイティブで動くものが増え、日常的な操作で不便を感じる場面は少なくなりました。Arm版が用意されないアプリはWindowsのエミュレーション機能を介して動くものの、本来の性能をそのまま引き出せない場合がある点は購入前に押さえておきたいところです。もっとも今回の検証で使った範囲では、動かせないアプリは見当たりませんでした。
なお、検証にあたってはmyHPの電源プロファイルを「パフォーマンス」に設定しています。
まずはCPUの性能を、CINEBENCH(R23/2024/2026)で確かめました。このうちR23はArm版がなくエミュレーションでの動作、2024と2026はArmネイティブで動きます。ネイティブ対応のテストでは、シングルスレッドのスコアが薄型モバイルとは思えないほど高く、デスクトップ向けの上位CPUに迫る場面もありました。マルチスレッドも18コアらしい伸びです。体感の軽さを左右する1コアあたりの速さに余裕があるため、Webブラウジングや資料づくりでもたつきを感じることはまずありませんでした。
実際のアプリで測るPCMark 10のApplicationsテストも走らせました。WordやExcel、PowerPoint、Edgeを対象にした指標です。いずれもArmネイティブで動くこともあってスコアは高い水準に届いており、文書や表計算が中心の仕事なら動作の重さで手が止まる心配はまずないでしょう。
GPUの実力も見ておきましょう。描画を担当するのは、SoCに統合されたAdreno X2-90です。定番の3DMarkに加えて、実際のゲームのベンチマークもいくつか動かしました。
3DMarkのスコアは、統合GPUとしてはしっかり健闘する水準でした。目を引いたのは、レイトレーシングを描くPort Royalを完走できたことです。フレームレートこそ伸びないものの、Arm系の統合グラフィックスがこの種の描画までこなせるようになった点に世代の進化を感じます。
ゲームの挙動は「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー」「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」のベンチマークで見ました。いずれもArm版のないタイトルで、エミュレーション経由での動作です。それでもフルHDで画質を上から少し下げていけば、実用的なスコアに届きます。x86のゲームがArm機でここまで動くこと自体、少し前には考えにくかったことです。もちろん本機はゲーミングノートPCではなく、重いタイトルを高画質で長時間遊ぶ用途ではありませんが、息抜きに軽いゲームを挟むくらいの使い方なら十分に楽しめます。
AI処理の実力も確かめました。最大85 TOPSのNPUを活かせるGeekbench AIでは、NPUを使ったテストのスコアがCPUを大きく上回っています。画像や音声の処理、生成AIのローカル実行といった負荷をCPUに集中させずにこなせるのは、Copilot+ PCならではの強みです。NPUを積極的に使うアプリはまだ限られるものの、余裕のあるNPUを備えておく安心感は大きいはずです。
ストレージは2TBのPCIe 5.0接続SSDです。CrystalDiskMarkの結果はPCIe 4.0世代のSSDを引き離す速さで、数GB級のデータをコピーしても待ち時間はごくわずか。写真や動画の素材を日々読み書きする人ほど、この速さが効いてくるでしょう。
ベンチマークのような高い負荷をかけても、本機は静かでした。通常の操作ではファンの音はほとんど聞こえず、負荷が高まると「サーッ」という風切り音が出てくるものの、静かな部屋でなければ気になりにくい程度です。発熱の処理も上手です。キーボードやパームレスト、タッチパッドのあたりは高負荷時でもほとんど熱を感じませんでした。画面との境目に近い奥側はしっかり熱くなりますが、通常は指が触れない場所なので使用中に困ることはありません。
myHPでオーディオや電源をまとめて管理
本機には、各種設定をまとめて扱える独自ソフト「myHP」がプリインストールされています。
オーディオの項目では、Poly Studioのスピーカーやマイクの設定に加えて、AIノイズ除去のオン・オフを切り替えられます。オンライン会議で周囲の雑音を抑えたいときに役立つはずです。スピーカー自体の鳴りも、ノートPCとしては良い部類でした。低音までしっかり出ていて、薄型ノートにありがちな軽い音とは違います。
システム制御では、「Smart sense」「バランス」「省電力」「パフォーマンス」といった電源プロファイルを選べます。静かに使いたいときと性能を出したいときとで、動作の傾向をワンタップで切り替えられる仕組みです。
このほか、カメラを使ったジェスチャー操作、複数アプリを一括で起動するタスクグループ、画面を見ている時間を管理するスクリーンタイムなど、AI PCらしい機能がまとまっています。
公称最大28時間、実測でも一日中使えるバッテリー
持ち歩いてこそのモバイルノートだけに、バッテリーの持ちも確かめておきましょう。今回のプログレッシブモデルは、公称で最大28時間の駆動をうたいます。
電源プロファイルと画面輝度を普段の使用に近い設定に合わせ、PCMark 10のバッテリーライフテスト(Applications)で計測したところ、結果は17時間30分でした。
有機ELを積みながらこの持ちなら、Snapdragon X2の電力効率の高さが効いていると言えます。朝に満充電で持ち出せば、会議や資料づくりを挟んでも一日は乗り切れる計算で、外出先でコンセントを探す場面はそう多くないはずです。身軽に動きたい人ほど恩恵は大きく感じられるでしょう。充電が必要なときも、USB PD対応なので手持ちのUSB-C充電器やモバイルバッテリーで間に合います。
薄型・有機EL・AIを一台に凝縮した新世代モバイル
HP OmniBook Ultra Laptop 14は、Snapdragon X2 Eliteを核にした薄型モバイルノートです。3Kの有機ELに最薄部7.3mmのアルミ筐体、PCIe 5.0対応の2TB SSDと、目を引く要素をひととおり詰め込みました。今回のプログレッシブモデルのHP希望販売価格は502,700円(税込)です。
今回の検証では、シングルスレッドの速さ、85 TOPSのNPU、そしてSSDの読み書きの速さが強く印象に残りました。ここに有機ELの美しさと、実測でも一日中持つバッテリーが重なります。持ち歩くことを前提に選ぶなら、完成度は高い一台です。
気に留めておきたいのは、Arm版Windowsであることと、拡張端子がUSB Type-Cに限られる点です。ふだん使うアプリがArmネイティブやWeb中心で、周辺機器もUSB Type-Cで揃うなら、薄さと軽さ、バッテリー、AI性能のバランスが素直に活きてきます。逆に、Arm版のないx86アプリや有線機器が手放せない使い方だと、エミュレーションやアダプターというひと手間が挟まります。
薄くて軽い一台を長く連れ歩きたい人、有機ELのきれいな画面で写真や映像を楽しみたい人、これからのAI活用に備えて余裕のあるNPUを確保しておきたい人。そんな人にこそ応えてくれるモバイルノートです。



























