国内でも単体発売がスタートしたIntelの「Core Ultra 200S Plus」シリーズ。Core Ultra 7 270K Plusは24コアで実売価格6万円前後、Core Ultra 5 250K Plusは18コアで実売価格4万円前後と良好なコストパフォーマンスで、売り上げランキングの上位に顔を出している。
今回は「最上級コスパCPUの誕生か!? Core Ultra 7 270K Plus/5 250K Plusを試す」の続編として、DDR5-8000メモリと200S Boostの組み合わせでさらに性能が伸びるかを確かめていきたい。比較対象としてCore Ultra 9 285Kでの200S Boostによる効果に加え、AMD勢としてRyzen 7 9800X3DとRyzen 7 9700Xも用意した。
「Arrow Lake Refresh」はEコア増量とメモリ強化がポイント
まずは簡単なおさらいから。Core Ultra 200S Plusシリーズ(開発コードネーム:Arrow Lake Refresh)は、従来の強化版という位置付けだ。製造プロセスは従来のCore Ultra 200Sと同じくコンピュートタイルがTSMC N3B、ソケットもLGA1851のまま。大きくプラットフォームを変えずに、CPU構成や内部クロック、メモリ対応を見直している。
スペック上で分かりやすい違いはEコアの増加だ。Core Ultra 7 270K PlusはPコア8基+Eコア16基の24コア24スレッド構成で、従来のCore Ultra 7 265KのPコア8基+Eコア12基からEコアが4基増えている。Core Ultra 5 250K PlusもPコア6基+Eコア12基の18コア18スレッドで、Core Ultra 5 245KのPコア6基+Eコア8基からEコアが4基増加した。
メモリ対応も強化されている。Core Ultra 7 265KやCore Ultra 5 245Kの対応メモリはDDR5-6400だが、Core Ultra 7 270K PlusとCore Ultra 5 250K PlusではDDR5-7200対応となった。もう一つ重要なのが、タイル間通信に関わる内部クロックの改善だ。Arrow LakeではコンピュートタイルとSoCタイルをまたぐD2D(Die to Die)クロックが2.1GHzだったが、Arrow Lake Refreshではこれが3.0GHzへ引き上げられている。Arrow Lakeでゲーム性能が伸びにくい要因の一つとして内部接続まわりが指摘されることもあっただけに、このD2Dクロックの引き上げは見逃せない変更点だ。そのほかスペックは以下にまとめている。
| CPU | Core Ultra 9 285K | Core Ultra 7 270K Plus | Core Ultra 7 265K | Core Ultra 5 250K Plus | Core Ultra 5 245K |
|---|---|---|---|---|---|
| 価格(発表時) | 589ドル | 299ドル | 394ドル | 199ドル | 309ドル |
| 製造プロセス | TSMC N3B | TSMC N3B | TSMC N3B | TSMC N3B | TSMC N3B |
| Pコア数 | 8 | 8 | 8 | 6 | 6 |
| Eコア数 | 16 | 16 | 12 | 12 | 8 |
| スレッド数 | 24 | 24 | 20 | 18 | 14 |
| 定格クロック | 3.7GHz(Pコア)、3.2GHz(Eコア) | 3.7GHz(Pコア)、3.2GHz(Eコア) | 3.9GHz(Pコア)、3.3GHz(Eコア) | 4.2GHz(Pコア)、3.3GHz(Eコア) | 4.2GHz(Pコア)、3.6GHz(Eコア) |
| 最大クロック | 5.7GHz(Pコア)、4.6GHz(Eコア) | 5.5GHz(Pコア)、4.7GHz(Eコア) | 5.5GHz(Pコア)、4.6GHz(Eコア) | 5.3GHz(Pコア)、4.6GHz(Eコア) | 5.2GHz(Pコア)、4.6GHz(Eコア) |
| 3次キャッシュ | 36MB | 36MB | 30MB | 30MB | 24MB |
| 対応メモリ | DDR5-6400 | DDR5-7200 | DDR5-6400 | DDR5-7200 | DDR5-6400 |
| PBP | 125W | 125W | 125W | 125W | 125W |
| MTP | 250W | 250W | 253W | 159W | 159W |
| NPU | 13TOPS | 13TOPS | 13TOPS | 13TOPS | 13TOPS |
| 内蔵GPU | Intel Graphics | Intel Graphics | Intel Graphics | Intel Graphics | Intel Graphics |
「200S Boost」はDDR5-8000対応だけでなく内部クロックも引き上げるOCプロファイル
ここで、今回の主役である「200S Boost」を紹介しておこう。200S Boostは、IntelがCore Ultra 200Sシリーズ向けに用意したオーバークロックプロファイルだ。対応CPUと対応するIntel Z890マザーボード、Intel XMP対応メモリを組み合わせることで、UEFIメニューから簡単に有効化できる。
ポイントは、単なるメモリOC用の設定ではないことだ。200S Boostはメモリクロックに加えて、Fabric、D2D(Die to Die)、NGUといった内部接続まわりのクロックも引き上げる。これにより、ゲームのように低レイテンシが効きやすい処理で性能向上を狙う仕組みだ。
また、一般的な手動OCと違い、200S BoostプロファイルによるオーバークロックはIntelの保証を維持したまま利用できるのも特徴。ただし、すべての環境で動作や性能向上が約束されているわけではない。利用には最新のUEFIを備えた対応マザーボードと、条件を満たすメモリが必要となる点は注意したい。
対応CPUにはCore Ultra 9 285K、Core Ultra 7 270K Plus、Core Ultra 7 265K/265KF、Core Ultra 5 250K Plus/250KF Plus、Core Ultra 5 245K/245KFなど。
ちなみに、試した環境でも、200S Boostは単にDDR5-8000メモリを動かすだけの設定ではなかった。CINEBENCH 2026実行時の内部クロックを「HWiNFO Pro」で確認した結果をまとめた。
| ■CINEBENCH 2026動作時のクロック/MHz | |||
| CPU | Ring/LLC Clock | D2D Clock | NGU Clock |
|---|---|---|---|
| Core Ultra 7 270K Plus/DDR5-7200 | 4,000 | 3,000 | 3,000 |
| Core Ultra 7 270K Plus/DDR5-8000(200S Boost) | 4,000 | 3,200 | 3,200 |
| Core Ultra 5 250K Plus/DDR5-7200 | 3,900 | 3,000 | 3,000 |
| Core Ultra 5 250K Plus/DDR5-8000(200S Boost) | 3,900 | 3,200 | 3,200 |
| Core Ultra 9 285K/DDR5-6400 | 3,800 | 2,100 | 2,600 |
| Core Ultra 9 285K/DDR5-8000(200S Boost) | 3,800 | 3,200 | 3,200 |
200S Boostを有効化することでD2D ClockとNGU Clockが引き上げられているのが分かる。この内部クロック向上によって期待できるのは、CPUコア、メモリコントローラ、I/Oまわりなどをまたぐ通信の効率改善だ。特にゲームのように、CPUの処理、メモリアクセス、GPUへの描画命令発行が細かく行き来する処理では、タイル間通信のレイテンシ低下がフレームレートに効く可能性がある。また、アプリ系でもメモリ帯域や内部接続の影響を受けやすい処理なら、一定の上積みが期待できるというわけだ。
ただし、Core Ultra 7 270K PlusとCore Ultra 5 250K Plusの場合、すでにD2D/NGUクロックは3GHzと高い。200S Boostで3.2GHzへ上がるとはいえ、上昇幅は約6~7%にとどまる。この点を踏まえた上で実際のテスト結果を見ていきたい。
アプリ系ベンチでは270K Plus/250K Plusの伸びは限定的
ここからは、ベンチマークを実行していこう。CPUの設定や検証環境は以下の通り。200S Boostを有効にしたDDR5-8000環境のみメモリにTRIDENT Z5 RGB F5-8000J3848G16GX2-TZ5RKを使用している。
| Core Ultra 7 270K Plus(24C/24T) | PL1=250W/PL2=250W/ICCMAX=347A/Tj105℃ |
|---|---|
| Core Ultra 5 250K Plus(18C/18T) | PL1=159W/PL2=159W/ICCMAX=242A/Tj105℃ |
| Core Ultra 9 285K(24C/24T) | PL1=250W/PL2=250W/ICCMAX=347A/Tj105℃ |
| Ryzen 7 9800X3D(8C/16T) | TDP120W/PPT162W/TDC120A/EDC180A/Tj95℃ |
| Ryzen 7 9700X(8C/16T) | TDP65W/PPT88W/TDC75A/EDC150A/Tj95℃ |
| 【検証環境】 | |
|---|---|
| [Intel] | |
| CPU | Core Ultra 7 270K Plus、Core Ultra 5 250K Plus、Core Ultra 9 285K |
| マザーボード | MSI MAG Z890 TOMAHAWK WIFI(Intel Z890) |
| [AMD] | |
| CPU | Ryzen 7 9800X3D、Ryzen 7 9700X |
| マザーボード | ASUS ROG CROSSHAIR X870E HERO(AMD X870E) |
| [共通] | |
| メモリ | G.SKILL TRIDENT Z5 RGB F5-6000J3445G16GX2-TZ5R(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2)、G.SKILL TRIDENT Z5 RGB F5-8000J3848G16GX2-TZ5RK(PC5-64000 DDR5 SDRAM 16GB×2) |
| システムSSD | Micron Crucial T500 CT2000T500SSD8(PCI Express 4.0 x4、2TB) |
| ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 5080 Founders Edition |
| CPUクーラー | Corsair NAUTILUS 360 RS(簡易水冷、36cmクラス) |
| 電源 | Super Flower LEADEX III GOLD 1000W ATX 3.1(1,000W、80PLUS Gold) |
| OS | Windows 11 Pro(25H2) |
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DDR5-8000メモリはG.SKILL TRIDENT Z5 RGB F5-8000J3848G16GX2-TZ5RKを使用した。見た目はそのほか環境で使用しているTRIDENT Z5 RGB F5-6000J3445G16GX2-TZ5Rと変わらない
まずはPCMark 10、CINEBENCH 2024、CINEBENCH 2026を試そう。
PCMark 10は、270K Plus/250K Plus/285Kともわずかに向上しているが、項目ごとに上下が見られ、DDR5-8000+200S Boostによる明確な上積みは確認しにくい。
CINEBENCH 2024とCINEBENCH 2026も同様だ。270K Plus/250K Plusはほぼ横ばいとなっており、200S Boostの効果は見えない。一方で285Kはスコアが伸びた。285Kは定格がDDR5-6400で、DDR5-8000+200S BoostによってD2D Clockも2,100MHzから3,200MHzへ大きく上がっている。メモリクロックと内部クロックの両方の差が大きいため、効果が出ているのだろう。
続いて、エンコードアプリの「HandBrake」を使って、約3分の4K動画ファイルをH.264とH.265のフルHDにエンコードするのにかかった時間を計測した。
CINEBENCHと同じくCPUの全コアをフルに使用するエンコード処理では、ほぼ横ばいだ。200S Boostによるメリットはほとんど見られなかった。
実際にAdobeのPhotoshopとLightroom Classicでさまざまな画像処理を行う「Procyon Photo Editing Benchmark」も試す。
こちらは270K Plus/250K Plusとも若干スコアを落としており、200S Boostによるメリットは見られなかった。285Kは200S Boostによってスコアを伸ばしているが、それでも250K Plusに総合スコアではわずかに及んでいないのがちょっと悲しいところである。
ゲーム性能はほぼ横並び。DDR5-7200時点で十分速い
続いて実ゲームを試そう。ここでは、DLSS 4に対応するタイトルとして「マーベル・ライバルズ」、「モンスターハンターワイルズ」、「サイバーパンク2077」、「バイオハザード レクイエム」を用意した。マーベル・ライバルズはゲーム内のベンチマーク機能を利用、モンスターハンターワイルズはベースキャンプの一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで計測、サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を利用、レクイエムは療養所の一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXを計測している。
なお、ゲームに関してはすべてGPU負荷が低くCPUの性能差が出やすい低画質設定と、GPU負荷が高くCPUの差が比較的出にくい最高画質設定の2種類でテストしている。解像度はフルHDに統一した。
どのゲームも誤差範囲としか言えない結果だ。内部クロックの面だけを見れば、200S BoostではD2D/NGU Clockが3.2GHzまで上がっているため、ゲーム性能にも好影響がありそうに見える。しかし、 270K Plus/250K Plusでは、DDR5-7200時点でD2D/NGU Clockがすでに3GHzと高い。Arrow Lake Refreshで施された内部接続の強化が、定格設定の段階でかなり効いていると考えられる。
そのため、DDR5-8000+200S Boostでさらにメモリのデータ転送速度や内部クロックを高めても、今回のゲーム条件では差が出にくかったのだろう。270K Plus/250K PlusはDDR5-7200時点で、ゲーム性能をかなり引き出せていると見るべきだ。
270K Plus/250K PlusではDDR5-7200で十分
今回の検証結果は、Arrow Lake Refreshの完成度の高さを示すものだ。270K Plus/250K Plusを使うなら、DDR5-7200クラスのメモリで十分にバランスがよい。DDR5-8000+200S Boostは、285Kでは一部のアプリでスコアの向上が見られたことから、内部クロックがArrow Lake Refreshよりも低いArrow Lakeのほうが効果が期待できる。Arrow Lake Refreshにおいて、設定を限界まで詰めたいという人以外はDDR5-8000をあえて選択する必要はなさそうだ。












