2026年5月22日~24日に京都市勧業館「みやこめっせ」にて、インディーゲームイベント「BitSummit PUNCH」が開催された。
「BitSummit」は、“国内のおもしろいインディーゲームを海外に向けて発信していく”という趣旨のもと、2012年に発足したイベントだ。会場では、インディーゲーム開発者やパブリッシャーが趣向を凝らしたブースを展開し、試遊や展示を通じて来場者にゲームを楽しんでもらう。
初回200名ほどだった「BitSummit」の来場者数は年々増え、14回目を迎えた今年の「BitSummit PUNCH」では、3日間の累計来場者延べ人数は過去最大の68,208人を記録した。総出展数は496となり、80のスポンサーが協賛するなど、回を重ねるごとに勢いを増し、注目度を上げているゲームイベントだ。
「BitSummit」は例年7月に開催されていたが、2026年は5月開催。暑すぎず寒すぎず、ちょうどよい穏やかな気候かと思いきや、いざ会場に足を踏み入れるとインディーゲームを愛する人々の熱気が渦巻き、一気に気持ちが昂った。そんな現地会場の「熱」を、気になった出展作品などとあわせてご紹介したい。
東映ゲームズやPARCO GAMESが初出展! 非ゲーム企業も続々と参入
前述の通り、「BitSummit」は年々開催規模を拡大しており、その注目度の高さから近年ゲーム事業に乗り出した非ゲーム企業からの出展も増えている。
「BitSummit PUNCH」では、映画やテレビ番組などの映像制作を行う「東映」が設立した、新規ゲーム事業「東映ゲームズ」が初出展。パブリッシングタイトルとして発表された、『KILLA』『HINO』『DEBUG NEPHEMEE』の3作品の試遊を展開した。
数々の人気映像作品を手がけてきた東映がゲーム事業のスタートとして選んだのは、既存IPのゲーム化ではなく、全く新しいオリジナルタイトルだ。これまで個別にイベント出展していた3作品が、東映ゲームズのパブリッシングタイトルとして一堂に会するのは今回が初となる。
なお、3作品の選定は東映ゲームズのチームメンバー3名によるもので、各人の「推し作品」とのこと。『KILLA』を担当する新規事業開発部スーパーバイザーの松本拓也氏は、「世界観に一目惚れした」と教えてくれた。
『KILLA』は、韓国のインディーゲームサークル「ケンキツ団(Black Tangerine)」が手がける、ミステリーアドベンチャーゲームだ。主人公の見習い薬剤師「ヴァルハラ」は、何者かに殺害された師匠の「ラを殺せ」という遺言を手がかりに、復讐を果たそうと犯人を探す。
人の心の闇を描くダークミステリーではあるものの、飛び出す絵本のようなグラフィックや演出、個性豊かなキャラクターたちが彩りと軽やかさを添え、独創的な世界観を作り上げている。
筆者も、TGS2024で『KILLA』に出会い、その世界観に惚れ込んでからずっと発売を待ちわびている。ゲームそのものはもちろん、例えばアニメーションや映像作品での展開など、東映ゲームズとタッグを組んだからこそ生まれる新たなシナジーに大いに期待したい。
続いてご紹介するのは、こちらも「BitSummit」には初出展となった「PARCO GAMES」のブースだ。PARCO GAMESは2025年8月の設立以来、『The Berlin Apartment』『Constance』『南極計画』『Finding Polka』と、続々とパブリッシングタイトルを発表し、ゲーム事業領域を拡大してきている。
「BitSummit PUNCH」開催初日には、新たに『DEPERSON』のパブリッシングを発表。出展ブースでは同日に公開された体験版を試遊することができた。
『DEPERSON』は、トルコのクリエイティブ・スタジオ『Error Thing』が手がける、2Dサイケデリックホラーだ。病院の一室で目を覚ました記憶喪失の主人公「アーロン」は、自分が誰なのか、ここがどこなのか何も思い出せない。病院にはさまざまな心の病いを抱える患者がおり、プレイヤーはアーロンと共に夢か現実か曖昧な世界を歩き回って、物語の奥深くへと沈んでいく。
筆者も早速プレイしてみたところ、これまで発表された4作品とは全く異なる、無秩序でおどろおどろしい雰囲気に圧倒された。炎への美的執着から放火症を患う者、戦闘時の爆発により下肢を喪失し、PTSDを発症する者など、病院内では目を背けたくなるような出会いが続く。一方で、アーロンとの会話から紡がれる患者たちの記憶や、不穏な美しさが漂うビジュアルからは目が離せない。「怖いもの見たさ」をくすぐられる独特なゲーム体験に、気がつけばのめり込んでいた。
体験版でプレイできる範囲は、物語の序盤にあたる第1章相当とのこと。まだまだ謎多き本作と、「PARCO GAMES」が魅せる新たな一面に期待感が高まる。
東映ゲームズやPARCO GAMESのほかにも、『都市伝説解体センター』のヒットが記憶に新しい「集英社ゲームズ」は、2026年5月28日発売の『シュレディンガーズ・コール』をメインにブースを出展。作品の世界観にどっぷり浸れる大型展示はインパクト抜群で、会場内で一際目立っていた。
「BitSummit PUNCH」では、第3章の試遊が初披露となり、最新版をプレイしようと多くの来場者が集まった。一般公開日には、本作の試遊に40分待ちの列ができていた。
また、昨年に続き二度目の出展となった「松竹ゲームズ」のブースには、「松竹×競馬ゲーム『Rival Stars Horse Racing』発売×午年」を記念した「馬」が展示された。なんとこの馬、実際に歌舞伎の舞台で使われているそうで、Steamでゲームをウィッシュリストに登録すれば試乗することができた。歌舞伎や演劇を事業の要とする松竹ならではの粋な演出は、来場者からも人気を博していた。
こうした別ジャンルのノウハウを持った非ゲーム企業の参入は、インディーゲーム業界に新たな風を吹き込んでくれるだろう。
大手ゲーム企業にも注目! 京都といえばの任天堂ブース
2016年の初参加より「BitSummit」にてブース出展やスポンサーを続けている「任天堂」。本社やニンテンドーミュージアムを京都に構えていることもあり、任天堂の出展は「BitSummit」ならではの特色のひとつと言える。
「BitSummit PUNCH」では、「Indie World」の全17タイトルを出展。ブース内には、1人で遊べるシングルプレイの試遊スペースと、2人以上で遊べるマルチプレイの試遊スペースが設けられていた。シングルプレイでは、17タイトルが入ったNintendo Switch 2 が試遊機として設置され、時間内であれば複数のタイトルを自由にプレイできた。
全17タイトルのなかから、筆者はカメラを使った変顔レースゲーム『顔UFO』を試遊した。本作ではプレイヤー自身の顔が「コントローラー」となり、喜怒哀楽の表情の変化でUFOを操りながらゴールを目指す。操作方法は、真顔が「とまる」、笑顔は「あがる」、驚き顔は「さがる」などで、表情筋の柔軟性と瞬発力が求められる斬新な作品だ。
コース内の壁や障害物にぶつかるとUFOは爆発し、スタート地点もしくは中間セーブポイントからリスタートとなる。開始してしばらくは、頭で思い描く操作と実際の表情の変化が噛み合わず、また、自身の必死な表情に笑いが止まらなくなり、連続爆発してしまった。
しかし、慣れてくると喜怒哀楽それぞれの「キメ顔」が掴めてくる。コントローラーのボタンを押すように表情をスイッチできるようになり、難しいコースをスムーズにクリアできたときにはかなりの達成感があった。
「BitSummit」には友人や家族連れで遊びに来る方々も多く、任天堂ブースでもマルチプレイのゲームタイトルを一緒に楽しんでいる姿が見られた。ゲームプレイの楽しさが倍増するだけでなく、イベント参加のよい思い出にもなったことだろう。
イベント参加の思い出といえば、ノベルティも外せない。「BitSummit PUNCH」でも各出展ブースが趣向を凝らし、試遊やSteamのウィッシュリスト登録を促すため、さまざまなノベルティを用意していた。
SNSで特に反響が大きかったのが、ソニー・インタラクティブエンタテインメント「PlayStation」の出展ブースで配布された「限定シール」だ。
ブース内では、PlayStationのインディーズタイトルが試遊できるほか、フォトスポットが設置され、ブース内で撮影した写真にハッシュタグを付けてSNS投稿すると、限定シールがゲットできた。
ノベルティとしてステッカーを配布する出展ブースは多くあるが、PlayStationで配布された限定シールは、巷で大流行中の立体シール風! トロやコントローラーのマーク、懐かしのポケットステーションなど、ファンにはたまらないデザインが並び、この限定シールを求めてブースを訪れる人も多く見受けられた。
試遊やウィッシュリスト登録のきっかけを作り、ゲームの認知度を高めたりユーザーに愛着を持ってもらったりするためにも、ノベルティはイベント出展には欠かせない重要アイテムなのだ。
現地ならではの体験がゲームをもっと楽しくする!
「BitSummit PUNCH」が掲げる『High Impact(ハイ インパクト)』のテーマの通り、今年はゲームの試遊やノベルティのほかにも、現地会場ならではの印象的な「体験」が多くあった。
例えば、インディーゲームパブリッシャー「CRITICAL REFLEX」の出展ブースにあった、ホラーアドベンチャーゲーム『No, I'm not a Human』の展示だ。本作では、ドアの覗き穴から来訪者を確認し、その人物が「人」か「化物」かを見極める。
通常のゲームプレイにおいては画面上の話だが、展示ではなんと実物のドアが用意されており、来場者は自身の目で覗き穴から外を確認する。来訪者を「化物」と判断したら、自らの手でドアを開けて銃の引き金を引くのだ。まるでゲームのなかに入り込んだかのような体験は、現地会場の展示ならではだった。
ほかにも、人気キャラクターの着ぐるみを登場させたり、試遊スペースを特殊な空間に作り込んだりするなど、ゲームを知ってもらうため、興味を持ってもらうための「工夫」が会場内のあちこちで光っていた。
近年では、発売前にSteamなどのプラットフォームで体験版を公開するゲームタイトルも多く、試遊プレイで言えば自宅でも可能だ。しかし、こうした作品の世界観をより深く味わえる「特別な体験」は、現地会場ならでは。「BitSummit」をはじめ、リアル開催のゲームイベントに参加したことがないという人がいれば、ぜひ飛び込んでみてほしい。きっと、ゲームプレイを超えた感動と出会えるはずだ。
なお、来年で15回目となる「BitSummit」は、2027年5月21日~5月23日の3日間開催を予定している。来年はどんなインディーゲームに出会えるのか、今から非常に楽しみだ。

























