なお、今回の会見では、国際宇宙探査計画など最新の国際協力の動向についても紹介された。

具体的には米国の動向や、日米月探査協力、そしてアルテミス計画について触れられた。これらはおさらいとなるが、この3点について触れていく。

まずは、米国の大きなトピックである、2025年12月18日(現地時間)に発表された「宇宙政策大統領令」について。大きく3点の発表があった。

1つ目は、有人月面着陸目標年の再設定として、当初は2026年後半だったが、遅れる見通しがこれまでも示されていたことは多くの人が知るところだろう。この時に、改めて2028年までの実現をめざす後ろ倒しの方針が掲げられた。

2つ目は、アルテミス計画が公的機関のNASA主導のプロジェクトから、民間企業への委託やそれによる宇宙産業の育成を重視した、民間主導へとシフトさせていくことも発表された。

3つ目は、中国との競争が重視されており、中国に先んじて月の南極域に到達し、その先の火星有人着陸をめざすことが明確な目標とされた。

またNASAに関するトピックとしては、アルテミス計画による月有人探査・月開発、さらにその先の火星有人探査を踏まえた発表が紹介された。

NASAは2022年末に、「Moon to Mars Objectives」(以下、「月・火星探査の目的」)という文章を発表。続けて、2023年4月にNASAから発表されたのが、「Moon to Mars Architecture Definition Document」(以下、「アーキテクチャ定義文書」)だ。その改訂が2025年12月18日に行われ、第3版が公開された。

  • (左)NASAが2022年末に発表した「Moon to Mars Objectives」の表紙。月・火星探査の目的を記した文書だ。(右)「Moon to Mars Architecture Definition Document」の表紙。「Moon to Mars Objectives」に記された目標を達成するためにどのような要素が必要かがまとめられている (出所:NASA)

    (左)NASAが2022年末に発表した「Moon to Mars Objectives」の表紙。月・火星探査の目的を記した文書だ。(右)「Moon to Mars Architecture Definition Document」の表紙。「Moon to Mars Objectives」に記された目標を達成するためにどのような要素が必要かがまとめられている (出所:NASA)

アーキテクチャ定義文書は、「月・火星探査の目的」に記載されている各目的を達成するために、どのような要素(ロケット、有人宇宙船、ローバー、宇宙服など)が必要となるかを定義したもので、総ページ数は約160ページとなる。これが第3版では全300ページとなった。

主要な変更点は、アーキテクチャ要素として「月面での原子力発電の利用」などの追加のほか、月面でのさまざまなデータをどのように取得すべきかが識別されたことも追加されている。

  • 2025年12月18日に発表された、「Moon to Mars Architecture Definition Document」第3版では、「月面での原子力発電の利用」などが追加された。画像は、その発電システムのイメージ。発電装置が原子力発電と太陽光発電を兼ねているものと思われる (出所:NASA)

    2025年12月18日に発表された、「Moon to Mars Architecture Definition Document」第3版では、「月面での原子力発電の利用」などが追加された。画像は、その発電システムのイメージ。発電装置が原子力発電と太陽光発電を兼ねているものと思われる (出所:NASA)

次に、日米月探査協力に関して。

その枠組みの協定として、2023年1月に米国を訪れた岸田文雄 元総理大臣の立ち会いの下、林芳正外務大臣(当時)とアントニー・ジョン・ブリンケン アメリカ合衆国国務長官が「日・米宇宙協力に関する枠組協定」に署名し、同年6月に発効された。

また2024年4月には、JAXAと共にトヨタが開発している有人与圧ローバーによる月面探査の開発・運用と、運用と、米国による日本人宇宙飛行士の2回の月面着陸の機会の提供などについて規定された「与圧ローバーによる月面探査の実施取決め」についての署名が、盛山正仁文部科学大臣(当時)と、クラレンス・ウィリアム・ネルソン前NASA長官によって行われた。なお、与圧ローバーの打ち上げは2031年が目標で、運用期間は月面到着後から10年間となっている。

また、アルテミス計画のように国際協力により進められる宇宙探査のための、各国の宇宙機関間でのシナリオ検討、技術検討を行う組織「ISECG」(International Space Exploration Coordination Group、読み:アイセックジー)の紹介も行われた。

2007年に結成され、2026年1月現在、28の宇宙機関が参加している。JAXAも初年度から加わっており、2018年4月〜2020年9月には議長機関を担当したことがある。ISECGは参加機関が互いの関心・情報・計画について意見の交換や議論を行い、自発的な共同作業を実施するためのもので、検討内容は法的に拘束されない。

活動体制としては、ISECG全体会合(議長:NASA/副議長:英国宇宙局)があり、その下にぶら下がる形で、ミッションシナリオ検討、全体システム構想検討、技術開発検討、科学探査検討、外部コミュニティ対応、商業化検討の6つのワーキンググループがある。このうち、JAXAは全体システム構想検討のチェアマンをNASAと共に務めている。

ISECGは2010年からは、グローバルな「宇宙探査ロードマップ」(GER:Global Exploration Roadmap)を作製しており、最新第4版(GER2024)は2024年に公表された。また、これに併せ、探査活動を通じて得られるベネフィットをまとめた「White Paper」の改訂版も公開されている。